完全に頭から追い出していたハズのPhenomが気になって仕方がない。
…要するにIntelが完全に市場を独占するのを何だかんだイイながら嫌っているという事なんだろうが、Phenomそのもののポテンシャルもそれなりに良いという事を理解しているという事なのかもしれない。
Phenomはその性能に対して初出荷された9500のクロックが2.2GHzと低いのが問題だと私は思っている。
次に登場するであろう9600も2.4GHzと、IntelのQuad Core Q6600と同じクロック止まりである。
中のテクノロジーそのものはPhenomの方が断然上を行っているハズなのにこの低いクロックのおかげで性能が思っていた以上に伸びていないのが、私的な問題点として大きく影を落としている結果だ。
だが、相当なポテンシャルはある。
それは分かってはいるものの、そのポテンシャルを引き出すために限定的なパッケージングにしなければならないのはやはり問題だ。
今のところ、AMDはトータルバランスとしてSpiderプラットフォームでPhenomを使用する事を提案している。
これはPhenomとチップセットAMD 7シリーズ、RADEON HD 3000シリーズを合わせたプラットフォームの名称で、IntelでいうところのCentrinoに近い。
Centrinoは無線LANまでパッケージに入れてしまっているが、それがない代わりにビデオカードがくっついた…というところか。
とにかく、このSpiderというプラットフォームがPhenomの性能をもっとも引き出せる組み合わせとしている。
だが、世間の人はそんなSpiderというプラットフォームを望んでいるとは思えない。
私からすれば、PhenomとチップセットであるAMD 7シリーズでIntelと真っ向勝負して欲しいと思っている。そしてほとんどの人はそう思っているハズだ。なぜなら、ビデオカードはGeForce系とRADEON系で天秤にかけたとき、GeForce系をセレクトする人が多いからだ。
別にRADEON系を非難するつもりはない。発色だけを見れば昔からRADEONの方が綺麗だという事も当然知っている。
しかし、ゲームを主体とした場合はほとんどがGeForce系にチューニングされている。それはプログラミングにまで手を伸ばしてきたNVIDIAの功績であり、現実の話だ。
だからこそ、PCの性能を比較する時、CPUとチップセットでの性能比を気にするのである。
PhenomのCPUとしてのスペックはかなり高い。
が、同時に弱点も見えている。
AMD系は昔からL1キャッシュがIntel製の2倍搭載されているが、L2キャッシュ以下がIntel製より少ない。
だから小さなデータを扱うアプリケーションではAMD系はかなり高い性能を持つ。いわゆるビジネス系アプリの代表であるOffice系では、AMD製の方が有利なのはそのためだ。
しかし、マルチメディア関連となるとその性能は逆転する。
ビデオエンコードなど特定の処理になると一概にキャッシュ性能のみでは計れない所はあるが、扱うデータが4MB単位以上のものになるとIntel製CPUがそのキャッシュ性能の高さを発揮する。
どちらが高性能か?なんて事はこの事例から比較する事はできない。
得手不得手があるという事しか言えないからだ。
それにメモリコントローラーの性能の違いもある。
ネイティブクァッドコアとなっているPhenomは、このメモリコントロールという部分においてはかなり有利だ。4コアの連動もかなり上手い具合に働いている。
しかし、2+2コアのQ6600はメモリコントローラーが外部にあるというだけでパフォーマンスを落とす。
しかし、Phenom9500とQ6600ではクロックに200MHzという差がある。
この差が本来ある性能差をスポイルしてしまっていたりする。
つまり、どう考えても今のIntelとAMDでは、その性能は拮抗していると言わざるを得ない。
なんだ、差がないのか、と言われるだろうが、実際こんなもんである。
だが、性能比というのは時に使用例を考えていない事が多い。
実際、自分がPCを使う場合の用途で比較したとき、差が出てくる事はもちろんあるだろうし、本来はそここそ知りたいところじゃないだろうか?
私の使い方だと、どうもIntel製の方が有利になってくると考えられる。
というのは、自宅でOffice関連はたまにしか使わないし、そんな大規模なデータ処理はしない。むしろゲーム系やビデオ系をはじめとしたマルチメディア関連の方が圧倒的に使用頻度が高い。
AMD製CPUで唯一私にとって有利に働くのは、3Dゲームなどの演算がIntel製よりも若干高いという所だけであり、その他の用途ではIntel製CPUが得意としている分野が多い。
だから私の使い方ではIntel製CPUの方が向いている…と私は見ている。
もちろんPhenomも嫌いではないが、残念ながらAMDが訴えているトータルでの性能の高さというのが、私に限って言えば当てはまりにくいのである。
もちろん、Phenomに搭載された各演算ユニットで私の用途に向いているものも沢山あるかもしれない。
しかしそれらが必ずしも最適なパフォーマンスで結果を反映させているとは言い切れない。前述したキャッシュメモリの問題もあるからだ。
性能とは、搭載したユニット性能で決まるのではなく、それらユニットが出した処理データをどこまで表現できるか?で決まる。
使う人が体感できない性能は、残念ながら功を奏しているとは言えないのである。
そんなワケで、Phenomはまだ未知数な部分が多い。
おそらく最終的な性能比較言えばIntel製Core 2 Quadとは大差ない。
もし、魅力があるとするならば、価格の安さという事になるが、Intelも最近はかなり安いところに価格を落としてきている。
性能の高いPhenomを、IntelのCore2 Extremeのような価格にしなければ、AMDはシェアを伸ばせるかもしれない。
Intelは高性能コアとミドルレンジコアの価格に差をつけすぎている。
ここにAMDのつけいる隙がある…と私は見ている。
結局、コストパフォーマンスが最後にモノを言うのかもしれないが、それだけの高性能をより多くの人に使ってもらう方が性能をアピールしやすいハズだ。
そういう部分に期待したい。