任天堂がニンテンドーDSi(以下NDSiと略)のファームウェアを1.4へとバージョンアップした。
このファームウェアのアップデートの本来の目的は、ニンテンドーDSiカメラの機能アップで、ソーシャルユーティリティサイト“Facebook”への画像アップロードに対応した事である。
だが、それはどうも表向きの事のようで、実際にはマジコン対策だと思われる。今回のファームウェア1.4にて殆どのマジコンが動作しないという話がネット上を駆け巡っている。
もともとNDSからNDSiにバリエーションが増えたときもNDSiでは従来のマジコンは一切動作しなかった。ハードウェアが新しい(中身的には一部のみ新しいと思われる)ため、動作しないとしてもそれは当たり前の事だったのだが、数ヶ月後にはNDSiに対応したマジコンが登場していた。元々NDSとNDSiは似たようなハードであるため、ハックするのはそんなに難しい話ではなかったのだろう。
今までのNDSでは、ハード的な部分で任天堂が発売後に対策する事が困難であったのだが、NDSiは本体内にメモリを持ち、Wi-Fiを利用してファームウェアを更新できるようにしたため、任天堂はファームウェアでマジコン対策してきたと思われる。要するに、ソフトウェア的にマジコンを認知した時に起動させないようにした…という事である。
ファームウェア1.4を導入したNDSiでマジコンを起動しようとすると以下のようなメッセージが出てくる。
「エラーが発生しました。本体の電源ボタンを長押しして電源をOFFにし、本体の取扱説明書の指示に従ってください」
マジコンをslot1から抜いて起動すればいつも通り起動する。
要するにslot1に差し込まれたマジコンを認知して起動をストップさせている。
このシークエンスから考えると、マジコン側の問題解決策がいとも簡単に見えてくる。
要するに“NDSiがマジコンだと思わなくなればよい”のである。
ファームウェアというソフトでの対策は、おそらくソフトによって再び破られるのではないかと思われる。
こういうのを世間では「いたちごっこ」と言うが、デジタルな不正対策はまさにこの「いたちごっこ」を延々と続ける覚悟で臨まねばならない。
先に言っておくと、マジコンは本来違法なものではない。
マジコンは個人的用途においてソフトウェアのバックアップを目的としている時には全くの合法であり、自作プログラムの起動などをさせる目的で使用する場合においても合法である。
しかし、残念ながら不正にダウンロードしたソフトも起動可能である事が問題であり、それは今までも問題視されてきた。
そしてさらに問題だったのは、そのマジコンを主として小中学生に対し広く広めたメディアがあったという事である。
そのメディアの一つは一部出版社でもあるのだが、実はソコだけが問題だったワケではない。もっと大きなメディアが存在するのだ。そう、インターネットというメディアである。
ネットに詳細に書かれる情報の中に、そのマジコンの存在と入手方法と使用方法が書かれていれば、広まらないワケがないのである。
そしてその広まり方は爆発的だった。
小学生の子供にせがまれ、親がマジコンを子供に与えようと秋葉原の街を練り歩くなんて姿が珍しくなくなったのである。
別にマジコンの存在を知ってしまう事は問題ではない。だが、一番の問題は親がマジコンに対してどう考えているのか? という所にある。
マジコンの使用法によっての違法性を知っていて与えているのか?
それとも知らずにせがまれるまま買い与えようとしているのか?
私はこの両者はどちらも有罪だと思っている。
この親は知らずに(いや、知っていての場合もある)子供を有罪にしているのである。
子供は知らずとも、その親には違法コピー問題がどの程度の問題なのか、せめて知っていて欲しいというのが私の考えである。
そして違法である事とそれに対しての罪をちゃんと子供に説明してもらいたい。その上で犯罪者となるのであれば、私は文句は言わないし言えない。
世間的に、それらに対しあまりにも無知なまま広まっている事の問題を私は指摘したいのである。
話を戻すが、このNDSiのマジコン対策は、おそらくそう遠くないウチに対応ファームウェア(マジコン側の)が登場して再び使用可能になるのではないかと思われる。
たが、逆を言えば任天堂も同じようにファームウェアアップデートすれば再び使用不能にできるため、任天堂とマジコン業者の文字通り“いたちごっこ”が繰り返されるのではないかと思われる。
ただ、解析する側と対策する側とでは、それにかかる労力は多分違うだろう。素人的に考えれば解析する側の方が大変なのではないかと思ったりするが、対策する側も対策を強化しすぎてマジコン以外の動作にまで問題を来すような事があっては本末転倒であるため、検証や動作確認の労力からすれば、解析する側よりも大変なのかもしれない。
しばらくこのようなやりとりがあったあと、この問題は自然と水面下に降りるのではないかと私は見ている。
だが、消費者のモラルは常に試される事に違いはないし、子供に対する親の責任の重さは何ら変わりがない。
犯罪と知っていても躊躇わない子供を作るのも、犯罪と知っているからこそ躊躇する子供を作るのも親次第だ。
マジコンに関して犯罪に直結する使い方があるという認識を再度考える時期に来ていると思う。
それは使っている当事者だけでなく、その当事者が未成年であるならばその親も含まれる。
任天堂が本格的に乗り出してきた今、親は子供を守る事ができるかどうかぐらいの気持ちでいる方がいいだろうと思う。知らず知らずのウチに(知っていての事かもしれないが)犯罪者にしてしまう可能性は十二分にあるのだから。