私は今現在Core 2 Quad Q9550を使用している。
これで困った事はないし、あえてCore iシリーズに突貫する必要も無いと思って、未だCore2世代に留まっている。
だが、世間ではIntel CPUもCoreマイクロアーキテクチャ代3世代の新しいCoreシリーズ“Sandy Bridge”に突入する…というか、もうすぐ発売になる。
絶対性能で言えばまだまだCore 2 Quadでも問題はないのだが、新世代コアとの性能比は拡大の一途を辿っている。情報を集めていると、そろそろ次を考えるべき時期なのか? と考えてしまう。
Intelは開発サイクルとして「Tick・Tock」モデルを採っている。これはTickタイミングで新しいプロセスルールの導入を行い、Tockタイミングで新しいマイクロアーキテクチャを導入するというもので、微細化プロセスが進む時にはアーキテクチャで無理をしないバランス取りも含んでいる。
今回のSandy BridgeはTockタイミングなので新しいマイクロアーキテクチャを採用する。
この手の新しいテクノロジーについてはもっと詳しいサイトに譲るとして、私的に「そろそろ次を考えるべき時期なのか?」と考えてしまいそうになる機能をひとつ挙げてみる。
Sandy Bridgeでもっとも興味深いのは、Intel AVX命令セットだと思っている。但し、この機能は現時点のWindows7では使用できず、ServicePack 1が適用された際に有効となる。このIntel AVX命令セットは256ビットに拡張された浮動小数点演算命令で、ベクトル演算の処理性能を向上させる命令セットである。
Intelは、今後このような命令セットでの性能向上を続けていくらしいが、それによって現在でも年に15%増の性能向上を果たしている。
という事は、私の場合は前のCore iシリーズをすっ飛ばしてきているので、今度のSandy Bridgeでは性能が30%増となっているハズだ。この30%増がIntel AVX命令セット込みでの性能かどうかはわからないが、仮にそうであっても既にWindows7のServicePack 1はリリース候補版が公開されている為、正式版が公開されるのもそう遠い日ではないだろう。
ただ、Intel AVXは組み込まれたからといってすぐに性能を発揮するワケではない。MMX命令などと同じでプログラムがその命令セットを使用しなければ使われる事はない。なので、どちらかといえばこれからの機能と言える。
ただこの“これからの機能”を持っているかいないかでは大きな差となる事を私は過去に経験していて、持っている事で製品寿命が格段に延びるケースがある事を知っている。
そういう視点から見て、今回のSandy Bridgeは私にとって導入すべきかどうか迷いどころと言える。
また、今発表されているSandy Bridgeは、全てがCPU内にGPUを内包しているタイプである。内包されているのはHD Graphics 3000と2000で、各サイトに公開されているベンチマーク結果を見ると、HD Graphics 3000に関して言えばRadeon HD 5450と同等かそれ以上の性能を持っているようだ。
ようやくIntelもAMDレベルの内蔵ビデオ機能を持つ事になったワケだが、当然ながらAMDもCPUとGPUのヘテロジニアスコア“Fusion”を投入してくるわけで、それらとどれぐらいの差になるのかはまだわからない(1月4日にFusion APUが発表されたがローエンドモバイル等省電力モデルのみで今公開されているSandy Bridgeとは格が違いすぎる)。
Fusion APUは2011年上半期中にデスクトップ製品が登場すると見られているため、現時点での比較はできない。後発のFusion APUが有利な展開になると思われるが、もともとのアーキテクチャの違いがどういった結果を導き出すのか、興味のある所である。
それとSandy Bridgeは従来のソケットであるLGA1156とは互換性がない。形はそっくりだし、ピンも1本少なくなっただけのLGA1155だが、CPUの切欠き位置を合わせる突起の位置が異なっている。なので従来のLGA1156のマザーボードを使っていた人でも、マザーボードからの交換になる。Core 2 Quadの私なら当然の結果だ。
ただ、CPUクーラーに関してはLGA1156対応品と同じものが使用できる。
ここまではまぁ、妥当な話。
が、肝心のチップセット…ここに大きな問題がある。
個人的に今回のSandy Bridge対応チップセットのIntel 6シリーズは肩すかし的なチップセットだと思っている。機能を見ると…Intel 5シリーズとロクに変わらない。Intel 5シリーズがそれだけ優れていた、という事なのか、それともIntel 6シリーズは次の世代までの中継ぎ仕様なのかはわからないが、とにかく前シリーズと比較して差がない。
おそらく、実際に発売されるマザーボードにはいろいろな機能を盛り込んでくるとは思うが、それらはチップセットが提供する機能ではなく、サードパーティ製のコントローラチップから得られる機能だろう。
実用からすれば問題ない話とも言えるが、何かしらの違いを見せて欲しかったところである。
性能的にはかなり見所のあるSandy Bridgeだけに、組み合わされるチップセットの善し悪しを考えると、どうも二の足を踏みそうな感じである。ソケットのLGA1155は次世代コアにも引き継がれるようだが、Intel 6シリーズのチップセットが寂しいものであるため、いくらソケット互換があろうとも意味がない。それならば次世代まで待つという選択もあるだろう。
今年上半期にはAMDからFusion APUのBulldozerコアが発表・発売されるため、それを見てから乗り換えなどを考えた方がいいかもしれない。
Fusion APUはIntelとは全く異なるアプローチから性能向上を目指しているコアであるため、最終的な性能がまだ見えてこない部分がある。
両者の比較はまだ先になるが、そもそもAMDが視野に入っていない場合はSandy Bridgeは一つの選択肢にはなる。
特に私のように前のCore iシリーズを飛ばしてきている人にはかなりの性能向上と利便性が待っている。
あとはどのタイミングで決め込んでいくか? である。