任天堂が1月17日、平成26年3月期業績の下方修正を発表した。
今、任天堂の株価が怪しい。
一時2,700円安という尋常ならざる低迷ぶりを見せた事もそうだが、円安によって海外利益が出るハズの状態で利益が出せなかったという事実は、任天堂の危機を深く物語っている。
後塵を拝するハードウェア
任天堂のハードウェアは最新技術に固められたものがない。
これはおそらくファミコンを発売した頃から一貫して同じである。その当時存在する最先端の技術を取り入れたハードウェアを作らずとも、枯れた技術の水平思考の考え方の元、アイディアで勝負してきたと言ってもいい。
実際、Wiiはリモコンというインターフェースを導入し、ゲームユーザーに今までになかったユーザー体験を与えた。
また、2画面を持つニンテンドーDSも、今までとは違う遊び方を提案し、開発側含めて支持された。
対するSCEやMicrosoftは、その画面に表示される映像品質をひたすら高めるため、常に最新技術のハードウェアを投入してきている。
この両者の考え方の違いが、開発側の体制に影響を与え始めている。
ネットワークを利用した作品を作る上で、どうしても任天堂は敬遠されてしまうのである。Wii Uのネットワーク機能の弱さと処理能力の弱さが、開発側の開発するネット対応ソフトを可動させる事ができないという事態になっているのである。
3DSの立体視にも賛否両論
これは3DSを発売した頃から言われていたことだが、裸眼による3D表示の必要性は未だに論議される問題である。
私自身は面白い試みではあると思っているのだが、純粋に見づらいという人もいるし、それによって製品価格が上がっているなら不要にして安くして欲しいという人もいる。
他者製品との差別化という意味では、3DSは特徴のある製品ではあるが、ユーザーが必要としていない機能ならばそこに固執するのも変な話である。
また、この裸眼立体視機能には任天堂の顧客層と噛み合わない部分もある。というのは、裸眼立体視は視差を利用した立体視だが、この視差は子供の目では負担が大きいため、子供向けではないとしている。だが、任天堂の顧客層の中心は間違いなく子供である。この食い違いを考えれば、任天堂が立体視に拘る理由が全く見えてこなくなる。
ただ、現時点で言えば3DSは収益として悪くない。
それが“立体視だから成功している”という思い込みが危険なのであって、携帯機としては2画面というデバイスはある意味正解の一つと言えるのかも知れない。
次の一手は?
最終赤字250億円という見通しが出されたが、これに対する解決策は今月末に発表されるという事らしい。
いくつかの業績回復シナリオが予測される中、抜群の集客力を持つ任天堂のソフトウェアをスマートフォンのアプリなどで発売する、という事も考えられる。だが、これはソフト事業に主軸を置きハード事業を縮小する、という動きに繋がる事であり、第2のセガを生み出す結果になりかねない。
それに、個人的に言えば任天堂はハードから離れてはいけないメーカーだと思う。
というのは、任天堂の企画者や技術者の中には、依然として横井軍平氏の「枯れた技術の水平思考」という考え方が身にしみている人が多いと言えるからだ。
ソフト専業だと、この思想が活かしにくいし、新しい発想から生まれる製品を生み出しにくい。
自前のハードで面白いと思うものを形にしていく…この流れだけは任天堂は捨ててはいけないように思う。
もし、今任天堂が再起を図るなら、Wii U用のソフトとして基本プレイ無料&アイテム課金という手法のオンラインゲームを展開するのも一つの方法かもしれない。
ドラクエXのような従量課金制だと子供はプレイしづらいところがあるが、基本プレイ無料だと子供の間口も広がるというものである。
ただ、このアイテム課金というのも注意しなければならないものの一つで、如何に子供の(金銭の)使い込みを防ぐ仕組みを作るかが重要になる。ま、任天堂ならそのあたりはよく分かっている事だろうとは思うが。
PS4の快進撃で、据置機が売れないという事ではないという事は証明された。
あとはどれだけ売れる作品を紐付けるかである。
任天堂が不振と世間は言うが、実の所、任天堂の純資産は約1兆2,000億円で、自己資本比率は82.5%と、揺るぎない資本力を依然として持っている事実は変わらない。
長期的視野に立てば、業績の浮き沈みは必ずあるワケで、この資産を背景に新しい事にチャレンジする事は十分できる。
今後の任天堂の復帰に期待したいところである。