最近の私はあまりハードウェアの詳しい話をしなくなった。何故?
必要十分がお手軽になったが…
昔、まだGPUという言葉がなかった頃は、ちょっとでも性能が向上する事を渇望していた。進化するGraphicsに対してそれらを処理する半導体性能がまだまだ追いついていなかったからだ。
しかし、今はもうCPUと同じコアの中に含まれるヘテロジニアスコア(異種混合コア)という体制となり、それはもうintelもAMDも同じ状態である。もっとも、AMDの方がCPU部とGPU部が同じメモリを参照できたりと進化の度合いは進んでいるようだが、それでも両社とも進化の過程でCPUとGPUが同じダイの上に載ったという事に変わりはない。
問題は、このCPUと混合したGPUの性能が既に必要十分なクラスにまで昇華しているという事だ。
フルHDによる動画再生が可能というのは当たり前で、ちょっとした3D系ゲームも平気で動くようになった。つまり、以前ほど性能を渇望するような状態ではない、という事である。もっとも、ハードなFPSを実現したいとか、重演算を必要とする一部のユーザーからするとまだまだ…という事もあるかもしれないが、大多数の人がそれなりに使う用途であれば、既に必要十分な性能がCPUコアの中に含まれている、と言っても差し支えがなくなった。
こういう理由から、私としてもあまりハードウェアの話をしなくなったワケだが、ここ最近「4K」という解像度がいろいろと話に出てきているため、またしてもGPU能力が必要な時代がやってきた、と考えている。
4Kはやはり重い
NVIDIAのミドルレンジ向けGPUである、GeForce GTX 960が1月下旬に発売されるらしい。
既にカードベンダーから搭載カードが見え隠れしているようだが、その性能の一端が公開された。
詳しい話はしないが、性能的にはGeForce GTX 680と同程度になるようだ。ライバルのAMD製GPUでいうなら、Radeon R9 280より僅かに高速、という感じだろうか。
このクラスで4Kを表示する事はできるが、問題は30fpsなのか60fpsなのか、という事である。
おそらく60fpsの表示はできるだろう。だが余裕があるわけではない。まして4Kによるマルチディスプレイなどはかなり苦しいと言わざるを得ない。
つまり、4Kという分野で考えるなら、ミドルレンジクラスでも達成できている、というレベルの話であり、それが余裕を持って対応できている、と言うには、まだ時期尚早という事である。
ハイエンドであるGeForce GTX 980であれば、まだ余裕は生まれるだろうが、それでもフルHDをマルチディスプレイとして扱うように4Kを扱う事は苦しいと言える。
(注意:このコメントはかなり余裕を持った話である。実際には実現可能な事もあり、私が言うほど性能的に追いついていないという事ではない)
GeForce GTX 960
話はGeForce GTX 960に戻るが、性能的にGeForce GTX 680と同等となると、気になるのは他のパフォーマンスにどれだけの差があるのか? という事である。
GeForce GTX 680は、ハイエンド…と言っても実際には当時のハイエンドGPUではないGPUを突き詰めた製品だった。NVIDIAには真のハイエンドであるQuadroという製品があり、こちらはGPGPUに最適化されている製品群である。
GeForce GTX 680は、このGPGPUに特化したコアではなく、あくまでもグラフィック性能に特化したコアであるため、当時はNVIDIAのハイエンドコアではなかった。
と、同時に、実は今ハイエンドと謳っているGeForce GTX 980も実は同680と同じで、GPGPUに特化したコアではない。同じようにまだ未発表であるもののGPGPUに特化した更なるハイエンドコアが控えている。
ではGeForce GTX 960はどうなのか?
実はGeForce GTX 980のコアよりもさらに性能を押さえたコアが同960に採用されている。
それでいて性能がGeForce GTX 680と同等という事は、同680が発売されて以降、プロセス技術が進んでいないにも拘わらず、かなりのアーキテクチャ改革が行われた、とも言える。
GeForce GTX 960は、消費電力がわずか120wと言われており、補助電源も6pin×1と劇的に省電力化が行われている。
また、それによって発熱も低くなっており、クーラーユニットをかなり小さくできるようである。
極めつけはメモリインターフェースであり、GeForce GTX 680が256bitだったのに対し、同960は128bitだったりする。
それでありながらGeForce GTX 680とほぼ同性能を達成している、という事は、ある意味スゴイ事である。
パワーユーザーからすると、実に物足りない性能に感じるかも知れないが、前述した通り、普通に使う分にはかなりのハイパワーとも言えるわけで、それが既に120wで動作する時代に突入したワケである。
こうなると、ローエンドビデオカードの必要性はなくなるだろうし、実際はそうしたローエンド製品は姿を消しつつある。
現状を考える上ではGeForce GTX 960の存在意義はあると思うし、進化した恩恵を受けられると思う。
4Kという事を視野に入れての話であれば、もう一時代の進化を必要とするように思えてならない。