最近、妙に「ハイレゾ」という言葉を耳にする。
ハイレゾに踊らされている?
Stereoという雑誌は、毎年1月号と8月号に何かしらの大型付録が付くというのが定番になっている。
大体1月号はアンプやUSB DACで、8月号はスピーカーという流れで来ているのだが、2015年1月号はUSBからデジタルデータで音楽データを抽出する際に発生するノイズを抑えるノイズフィルターが付録についた。
最近、オーディオもPC中心に動いている所があって、そこから音データを抽出する際のどうしても電気信号的ノイズが発生しやすい傾向にある。
よい音を出す為には発生しているノイズをフィルタリングするしか方法がないワケだが、その為のデジタル基板を付録にした、というワケである。
アンプが付録の時には、その設計がLUXMANだった事もあって、かなり好評だったが、その後USB DACもLUXMAN設計で登場、しかし、このUSB DACが意外や意外、結構なノイズが乗るシロモノで、その翌年にUSBノイズフィルターが付録についたのは、LUXMAN設計のUSB DACがノイズの酷い製品だったからじゃないか? などと私は邪推したものである。
で、音楽之友社は12月19日に…なんと、1年前の付録と中身はほぼ同じというUSBノイズフィルターに、専用カバーと短めのUSBケーブル、取付けネジなどが加わったものを付録にした「極上のハイレゾサウンド抽出法」という本を発売したそうである。…これ、昨年の在庫が大量に余ったからそれにカバーとか付けて付録にしておこう…的な安易な考えでこうなったワケじゃないだろうな?w
とりあえず、今年は何に付けても「ハイレゾ」という言葉が叫ばれていた年だったわけだが、PCからハイレゾ音楽を取り出す場合、やはり気になるのはそのノイズ。
だからこの昨年と同じものをまた付録にした、という事のようだが、とても安易に思えるのは私だけだろうか?
世間一般がハイレゾという言葉に踊らされているように思えてならないのだが…。
使ってみなければわからない
正直、この付録になる「ES-OT4」というUSBノイズフィルターは、使ってみなければその効果はわからない。残念だが、私は2015年1月号も見送ったし、このES-OT4の性能がどの程度のものなのはわからない。
しかし、今年もそれを付録にしたという事は、それなりの効果がある、と判断したからではなかろうか?
…もしそんなに効果がないという事であれば、ホントに大量に余った在庫を再度付録にした、という事になるワケだが、実際どんなものなのだろうか?
そもそも、どういう原理でノイズをフィルタリングしているのか?
そうした構造を知ることで、この付録の意味が見えてくるかも知れない。
要するに電源の安定化
ネット上にもいろんな検証レビューが掲載されている“ES-OT4”だが、それらを読むと一つの傾向が見て取れる。
それは、
- PCの電源にも出力の余裕がなく、また安価な電源でPCを動作させている場合で、なおかつ音を抽出する機器がUSBバスパワーで動作している場合は、テキメンに効果がある。
- 電源周りは比較的余裕があるが、USBバスパワーでDACなどが動作している場合は、それなりに効果がある。
- 安定化直流電源を経由して音を抽出する機器がUSBに接続されている場合、ほぼ効果がない。
という感じである。
つまり、音というのはほぼほぼ電源の質に影響を受けるという事であり、この電源の質が元々高い場合は“ES-OT4”の効果はほぼ期待できない、という事である。
裏を返せば“ES-OT4”を使う事で、電源の質を改善する事ができる、という事だ。
ちなみに“ES-OT4”も、INTモード(セルフ電源モード)とEXTモード(外部電源モード)が存在するのだが、当然だがEXTモードの方がノイズ軽減効果は大きいようである(当たり前過ぎて書くのも恐れ多いが…)。
買いか?
で、問題はこの“ES-OT4”は買ってお得なのか、それとも損なのか? という事。
現在手持ちのPCオーディオ機器が、USBバスパワー駆動のものを使っているという人は、買っておいて損はないと思う。
このUSBノイズフィルターのような製品は、普通の製品として購入すると10,000円くらいは平気でする。しかし“ES-OT4”は基盤むき出しだが本の価格を差し引くと3,000円程度で購入する事ができる。しかも2016年1月号の付録はアクリル板だがカバーなども付いている。となればお得と言わざるを得ない。
逆にPCオーディオに何も期待しない、とか興味がないという人はそもそも必要としないから買うだけ損である。
また、直流電源安定化ユニットなど、電源の質に拘りを最初から持っている人もおそらく不要だ。導入しても音の良さは感じられないだろう。
保険で一つ買っておく…という手もあるが、とにかくこの“ES-OT4”という製品の性質は「電源の質を高めてノイズをフィルタリングする基盤」というものなので、自分の環境とよく相談した上で購入を検討した方がいいだろう。
ま、価格的にはお得感満載ではあるので、あとは好みの問題という事で。
どっちにしても、音楽がデジタルデータとなり、そして今ハイレゾという環境が身近になってきた段階で、ノイズという問題に焦点が当てられた事で“ES-OT4”のような付録が登場した…という事は理解できる。
だが、それを別の本で再度付録にした、という事の意味は、焦点が当てられたから、とかそういう意味とは根底が違うように思える。
さて、どういった大人の事情がそこにはあるのか?
まぁ…消費者にはその大人の事情は意味のない話かもしれないが…。