PlayStation VRが登場し、話題をかっさらっているが…。
仮想であっても現実
PlayStation VR(PSVR)の話題が出てから、ゲーム系の情報サイトが軒並みPSVRの話題ばかりになったように思う。
それぐらい期待されているコンテンツだという事は理解するし、私自身も期待しているところは多々ある。
VRを可能とする機器については、PSVRの前にOculus RiftとHTC Viveが話題に上がったが、その価格に対するハードルの高さからか、今回のPSVRほどの話題の広がりはなかった。
そのネックとなる価格は、PCに接続して使用するOculus RiftやHTC Viveは価格が10万円クラスになるが、PSVRは税込でも5万円を下回るためまだ手が届きやすい。しかも、PS4本体の価格とPSVRを足してもOculus RiftやHTC Viveの方が高いというのだから、コストパフォーマンスはかなり高いと言える。
だが、それに伴う性能はどうなのか?
まずOculus RiftやHTC Viveはというと、HMDの解像度は2160×1200ドットの視野角110度、リフレッシュレート90Hzとなる。
対してPSVRの解像度は、左右の目にそれぞれ960×1,080ドットの映像を表示して3D立体視を可能とし、総じて1920×1080ドットを可能にしている、そして視野角は100度、リフレッシュレート120Hz/90Hzとなっている。数値だけを見るとPSVRが若干劣る部分があるように思える。
だが、これは日本人の悪い癖みたいなもので、数字にダマされてはいけない。
PSVRは仮想であっても現実を見る事を最優先させていて、プレイヤーの視点最優先で設計されている。具体的には、プレイヤーが映像で酔わない為に、直接表示される画素数そのものが少なくても、それを支えるサブピクセルの量は他VR機よりも多く取り入れ、それでいてリフレッシュレートが最大120Hzという性能を維持している。
だから…かもしれないが、Oculus RiftやHTC Viveを経験した人がPSVRの映像を観ると、PSVRの方がより綺麗に見えるという。
このあたりを考えると、PSVRはよく価格をここまで抑えた、といえるかも知れない。
PUという存在
PSVRが他VR機と大きく異なるのは、プロセッサーユニット(PU)が付属しているという事である。
Oculus RiftやHTC Viveは、基本PCに接続され、そのPCからのデータを出力する機器として存在する。いわばPCが全て処理したVRデータをアウトプットするのが仕事であり、それ以上の役割を持たない。
ところがPSVRはPS4と接続する真ん中にPUを入れ、PS4で処理したデータをVRデータと通常の2D映像データに分けたり、3Dオーディオデータを処理させたりする仕事をPUが行う。つまり、PS4の外部演算装置としてPUが存在する。
考えてみれば当たり前の事だが、Oculus RiftやHTC Viveでも、それを可能とするPCスペックはかなり高いものとなる。ところがPS4はAMDのJaguarコアをカスタマイズしたものであり、単体での性能では驚く程高いというものではない。
だからVRを可能にするにはPS4のみで全ての処理を行うというのば現実的ではない。そこでPUの登場という事である。
だが、このPUがPSVRのコストを引き上げる事になる。
数年前…だったと思うが、PSVRが他VR機と比較して不利になると言われていた事があるが、それは外部演算ユニット、つまりここで言うPUが必要になるからだ、という話だった。当時も処理能力から考えれば確かにそれは間違っていない話だったが、結果としてPSVRの価格が一番抑えられたというのは、一重にPSVRが販売されるであろう台数の期待値が全世界で相当数に上るから…という結論なのだろうと思っていたら、どうもPSVRは単体でも黒字になるらしい。
…どれだけOculus RiftとHTC Viveはコストかかってんだよ?(-_-;)
VR元年と呼ばれる年になるか?
いろいろ話題になる産業が現れると、その年が「○○元年」と呼ばれたりするが、ここ最近その○○元年と呼ばれる産業が、その翌年にはあまり振るわなく収束していくという事があったりする。
さすがにVRがそのような流れになるとは思わないし、思いたくもないのだが、国内でPSVRが普及するにはまだ敷居が相当高いと言える。
それは日本国内ではゲームというコンテンツにおいて既にコンソールという存在が相当に小さくなってしまっているという事である。
その昔は、ゲームといえばテレビと合わせてコンソールが主体だったが、既にスマホを中心としたものが主流となった日本では、PS4が海外から比べて普及していない。
そこにPSVRとなると、本体合わせて購入しないとそのVR体験が出来ない。
もちろん、その本体合わせた価格であっても他VR機から比べれば価格は安いのだが、絶対価格が安いという事と意味が異なる。
VR体験の為に10万円近い出費というのが、どこまでの人に許容できるか?
そう考えると、日本においてVR元年が更なる飛躍をもって翌年に展開すると言いきれるか、いささか不安になる。
ただ、現時点でPSVRに参入する企業は全世界で230社に超え、国内でも34社ある。どの企業も既存ゲームの限界を突破する為にVRという存在に未来を見ているという言い方ができるかもしれない。
その為の下地となるPSVRなのだから、普及しない事にはこれら参入企業が報われる事はない。
その為にSCEはバンドルセットなどの手を打ってくるだろうと思うのだが、そこで私がSCEにお願いしたいのは、そうしたバンドルセットの中に、カメラとPS Moveの周辺機器だけのセット品を作ってくれないかな、というものがある。
PS4を購入した人の中には、カメラは使わないから、と最初からカメラセットを購入しなかった人が相当数いる。
実際、ソフトと本体がセットになった限定品を購入している人は、カメラを持っていない。しかもPS MoveはPS3の時代の製品でもあるから、持っていない人も多い。
であるなら、このカメラとPS Moveのセット品を商品化してもそれなりの需要があると考えられる。
そうした製品を投入する事で、少しでもVR体験ができる人の幅を広げて欲しいな、と主ワケである。
ま、PSVRはコレからの製品であるから、今後どのような商品展開が行われるかはまだわからないが、幅広い展開で少しでも市場を拡大し、VR体験をもっと身近にして欲しいものである。