規格ばかりが増えていく…。
サブ1Lクラス
AsRockから初のMini-STXマザーボード「H110M-STX」が正式発表された。Mini-STXはIntelが新たに提唱した140×147mmという大きさのマザーボード規格で、ちょうどMini-ITXとNUCの真ん中に位置する大きさの規格である。
Mini-ITXと同じくCPUはソケット式だが、PCI-Express×16スロットは省かれていて、CPUの熱設計電力は65wまで対応できる。
基本的に2基のDDR4 SO-DIMMスロットを持ち、2基のM.2スロット、2つのSATA 6Gbpsヘッダーを装備するが、バックパネルのインターフェースと同様に、このあたりの細かい仕様は明確な決め事はおそらく存在しない。
ただ、決まっているのは65wのCPUを利用しているときは120wのACアダプターで稼働し、35wのCPUを利用しているときは95wのACアダプターで稼働すると決まっているため、それで稼働できるだけの装備しか実装できない。
AsRockの「H110M-STX」のバックパネルインターフェースには、USB 3.0、USB 2.0、HDM出力、DisplayPort 1.2、ミニD-Sub15ピン、Gigabit Ethernetなどを装備し、前面用にUSB 3.0×2(うち1基はType-C)のヘッダピンを装備する。また出力という意味では音声入出力も備えている。
Mini-STXの規格自体は、前述したようにPCI Express×16のインターフェースを持たない為、基本はCPU内蔵のビデオ機能を利用する事になる。
Mini-STXはNUCよりもフットプリントサイズが大きいため、それなりのCPUパワーを得られ、かつ内蔵GPUで十分な用途…となると、近年のビジネス用途では相当に使い勝手が良いと思われる。
このMini-STX規格のPCであれば、液晶モニタの裏側にセッティングして使用するという用途も、今まで以上に期待できるだろう。
リプレース狙い
日本では、デスクトップPCからノートPCへと業務PCを切り替えたところが多いのではないかと思う。実際、私が勤める会社でもノートPCへの移行が多くなってきている。
ノートPCであれば、デスクトップPCのような本体とキーボード、モニターの接地面積を必要とせず、ノートPCだけの面積で事足りるからだ。
だが、私はこのノートPCで業務を行うという事ができない。特に文字を打つという行為に関してだけでも、普通にデスクトップで使用しているキーボードが欲しいと思う程である。
理由は単純。操作性の問題である。また、液晶モニタの視認性の問題もある。
どっちにしても、ノートPCは臨時的措置でしかなく、あくまでも外出先での対応時に使用するもの、という意識がある。
だが、デスク周りの省スペース化は、必要とされている事実に変わりはない。そこで登場するのが小型デスクトップPCである。
特に液晶モニタの裏側に設置できるタイプであれば、液晶モニタの設置面積とキーボードの面積(あとマウスを利用出来る場所)があれば業務は快適に行う事ができる。液晶モニタの視認性もかなり良いとくれば、ノートPCよりはずっと業務に適していると言える。
Mini-STXは、まさにそうした需要の為に生まれた規格である。
Mini-ITXもそうした需要を見込める大きさではあるが、想定している電力がMini-STXよりも高い為、液晶背面に取り付けるPCとしては大きくなってしまう。
またNUCは残念ながらCPUパワーがどうしても劣ってしまう。想定しているTDPが10w以下であるため、ちょっとした演算をさせると処理待ちが長くなってしまう。
Mini-STXはそうした中間点に立つ、便利に使う為の規格と言えるだろう。
自作派はまた違った目線で…
自作派の人であれば、またちょっと違った目線でMini-STXを捉える事ができる。
例えば、メインのシステムの大幅な変更は行わないが、同じソケットタイプの新CPUが発売された場合、CPUだけ交換するというケースがある。
そうなると今まで使っていたCPUが余ったりするわけだが、その時こそMini-STXの出番である。
最近のCPUは全てGPUを内蔵しているから、Mini-STXのマザーボードとSO-DIMMメモリ、あと僅かなストレージがあれば、小型PCが一台作れてしまう。省電力に設定すれば、十分使っていけるPCになるだろう。
この場合、OSのライセンスがもう一つ必要になるという問題もあるが、それはDPS版を購入するなり、今後予定されているサブスクリプト版のWindows10を利用するなど、方法はいろいろある。
Mini-STXは、考え方一つで上手く使っていける規格だと私は考えている。
自作PCは今でこそ廃れてきているが、全世界的に需要がなくなってきているわけではない。
スマホがどんなに普及しようが、それでもWindowsを初めとしたコンピューティングは不要とはなっていない。
それは恐らくだがまだまだ同じ状況が続くと私は見ている。
それが続く限り、いろんなタイプの規格が提唱され、統廃合されていくだろう。
それでも、Mini-STXはビジネススタイルを意識した規格だけに、長期に渡って使われていく規格になるのではないだろうか。