PCが本気で売れないという事なのか?
NUCとMini-STXの中間
Intelから新しいフォームファクタ製品「NUC6i7KYK」が発売となる。
まだ店頭には並んでいないようだが、フットプリントの大きさは211×116mmと、NUCのサイズより大きめのサイズを想定したフォームファクタで、先日ベアボーンキットが発売となったMini-STXよりは小さいという、NUCとMini-STXの中間を狙ったような製品になる。
目的はビジネス用途ではないかと思うのだが、それだけなのか? と勘ぐってしまう性能をIntelはこの製品に持たせている。
「Skull Canyon」とも呼ばれるこの「NUC6i7KYK」は、搭載しているCPUがIntelがパッケージで発売しているCPUに同等製品が存在しない、ある意味最強を謳うCPUを搭載している。
「NUC6i7KYK」が内蔵するCPUは「Core i7-6770HQ」で、名称だけ見ていると他にも存在する製品。基本的なスペックとしては、クァッドコアでベース2.6GHz、TurboBoost時3.5技かHzとデスクトップ版Skylakeに引けを取らない能力なのだが、内蔵されているGPUが「Iris Pro Graphics 580」で、いわゆるGT4と呼ばれる構成を取っている。具体的には、eDRAMを128MB搭載していて、Microsoftの「Surface Pro 4」などの最上位品に使われている「Core i7-6770HQ」に採用されているeDRAM 64MBの2倍の容量をもっている。
これによって、当然の事ながらグラフィックスまわりの性能が劇的に向上していて、その性能はGeForce 9800世代に匹敵する。内蔵GPUでこれほどの性能を持つものは今まで存在していない。
また、自作PC用に販売されている通常のCPUパッケージには、もともとGT4構成のCPUが存在しないため、そういう意味でもこの「NUC6i7KYK」は特別な存在となる。ディスクリートGPUを使わない前提であれば、まさしくSkylake最強の名を持つ製品と言える。
何故今新しいカタチなのか?
詳しい製品のレビューは、量産試作機をレビューしている以下を参照してもらいたい。
PC Watch HOT HOT REVIEW
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/hothot/1014222.html
この記事を読めばわかるが、実にこのサイズのPCとしては凄まじい性能を持つ。
GIGABYTEから発売されたBRIXにもハイエンド製品が存在していたが、あれは中にディスクリートGPUを搭載してその性能を引き出していたものであり、今回の「NUC6i7KYK」とは意味が異なる。
GPU自慢のAMD A10-7870Kよりも数割性能が上というから、Intelの本気はここまできた、という感じである。
では何故今新しいカタチのPCをIntelが提唱するのだろうか?
NUCではハイパフォーマンスPCを望めない、という事は間違いない。あの大きさで発熱が大きくなる構成は採れないし、ハイエンドな性能を求めようとすれば、どうしても筐体を大きくしてやる必要がある。
それを考えてのMini-STXだが、今回Intelが発売する製品はそれよりも小さいサイズのPCになる。
つまり、Intel側としてはMini-STXよりも小さく、それでいてNUCよりもハイパワーなPCを必要としている顧客がいる、と判断したと考えられる。
たしかに、普通にビジネスシーンで考えた時、それなりのパフォーマンスは必要だが、デスク周りのPC接地面積を極力減らしたい、また発熱を抑えたいとなると、Mini-STXでも良いかも知れないが、それより小さい製品があればそちらを選ぶ可能性が高い。
ましてオールインワンで全ての機能を集約していれば、ただそれ一つあれば事足りる話になる。
ある意味、Mini-STXの市場を喰ってしまう可能性はあるが、ユーザー側に選択肢を与えることによって、よりPCの導入を容易にしようという思惑があるのかもしれない。
Mini-STXの市場が既に完成されていて定着している状態であれば、この「NUC6i7KYK」の入り込む余地はなかったかも知れないが、今の状態ならより市場でのスタンダードがどちらになるのかは、ユーザー側が決めればいい…そう考えたのかも知れない。
導入するユーザーサイドとしては有り難い話ではあるが、メーカーサイドとしては主流がどちらになるのかと今後揺れ動く可能性はあるが、PCが売れない今、少しでも売れるための幅を広げよう…そういう意図なのかもしれない。