大企業しかできない雇用形態ではなかろうか?
働き方改革の為の制度?
テレワークという言葉がある。
意味としては「パソコンなどの情報通信機器を利用して、事業所や顧客先などと離れた場所で働く労働形態」を言うのだが、要は在宅勤務とかがこのテレワークに分類される事になる。
在宅勤務、と聞くと一気に身近に感じるケースもあるのではないかと思うが、実際問題、この在宅勤務含めたテレワークという労働形態は、私からすると大企業でしか導入できない制度ではないかと思ったりしている。
もちろん、雇用形態なので大企業でなくとも、会社側と成果に対して賃金が設定される働き方であれば、このテレワークという雇用形態に収まるのかもしれないが、一般的な正社員登録の場合は、会社側が成果主義を徹底していないとテレワークというスタイルは中々にして実践は難しいと思う。
日本Microsoft株式会社が「働き方改革週間」を実施して、過去数年来取り組んできたテレワークなどの柔軟な働き方を推し進める運動をしているようだが、それによると自社調査ではあるものの、2010年から2015年までの5年間で、ワークライフバランスは40%、事業生産性は26%改善され、残業時間は5%、女性離職率は40%低減するという効果が見られたようだ。
確かに場所を問わない勤務形態の場合、特に女性は一気に働きやすくなる可能性はある。
その面は間違いないだろうが、注目すべきは事業生産性が26%改善した、というものであり、これは私の場合に当てはめるともっと改善しそうな感じがする。
自分の時間が採れない
私の場合、会社で仕事をしていると、まず自分の時間を作る事の方がずっと難しかったりする。
「?」と一瞬考え込んで意味が分からないという人もいるかもしれないが、私は自分以外の人の業務補佐をしている事に圧倒的に時間を採られているのである。
一例を挙げると、私の勤務はこんな感じである。
朝、事務所で自分の机に座って「さぁ、今日はこの文書を処理しよう」と業務を始めようとすると、まず名前を呼ばれて、その人の所に移動する。
そうすると、その人から「コレってどうやるの?」と聞かれる。PCの操作に関する事であったり、Excelでのデータ処理の事であったり、ケースはいろいろだが、時には業務アイディア出す事であったり、単純な知識補佐だったりする事もある。
心の中で「そんなもん知るかよ…」と思いつつも、説明しないとその人の業務が止まるので、自分の持っている知識をフル動員してアドバイスしたり、或いは解決策を考えたりする。
で、それが一通り終わるとようやく自分の机に戻り、先程始めようとした業務に入る。
だが、早い時には即座に、平均しても20分もしない内にまた呼ばれ、同じような事をする。
毎日、これの繰り返しである。
問題なのは、呼ばれる事そのものよりも、私の頭の切り替えに時間がかかる事にある。
毎回自分の業務をやっている時に突然呼ばれ、しかもその呼ばれた時の対応に関して「ちょっとまって」と自分の業務に区切りの良いタイミングをつくる事が許されない事が多く、いつも自分の業務を途中にして対応に走る。
だからその対応が終わった後に自分の机に戻ってきてまず最初に悩むのが「あれ? 何をやってたっけ?」とか「どこまでやったっけ?」なのである。
酷い時には、マトモに仕事にならず、自分の仕事にようやく着手できるようになるのが午後3時を回ってから、なんて事もある。
こんな事をしていて、私の業務パフォーマンスが上がるはずがないのだが、それでも私に求められる業務はあるわけで、結局その業務はそれら対応の合間と残業時間での対応が中心となってしまうのである。
個人生産性
私が役職者であって、特定のチームの生産性を問われる立場なら、そういった業務体制も仕方のないところはある。
だが私は役職者ではなく、肩書きもない。敷いて言えば係長待遇という名目が付いているが、名目だけで肩書きはない。係長待遇といっても、部下がいるわけでもないし、そもそも私が他人の業務パフォーマンスを向上させるサポートをしなければならない義務もないのだが、私を呼ぶ人達からすると、他に頼れる人がいない、という理由で私を呼ぶのである。
会社全体の事を考えたら、その人達の業務を止める事はデメリットも多い為、仕方なく対応しているが、そもそも私の上司にあたる人が、私のその対応に問題があるという事を言わない事も問題だし、他のセクションを統括する人達がそれらを見て改善しようとする動きを見せない事も問題なのである。
もし、テレワークのように私の業務を行う体制に制限がなくなり、私に課せられた業務に対して私が100%取りかかれる体制が採れたなら、私の業務パフォーマンスは26%どころか70~80%は改善される事になる。他人のサポートがなくなるという一点で、明らかに改善されるのだから。
逆に、今まで私を呼んでいた人達の業務パフォーマンスは著しく低下するかもしれない。
誰かに聞けばいいや、と安易に考えてしまう自己成長が欠けている人材は、まず自分が業務を行う為に改善すべきポイントを改善しない傾向にあり、自分で何とかしなければならない、という状況は理解していても、そこから脱する為のポイントを押さえない。
そう考えれば、そういう人達の業務パフォーマンスは確実に低迷するだろうし、もし業務のノルマが設定されてしまえば、時間外業務が伸び続ける結果となる。
会社側が、何故私の通常業務状況を改善しないのか? という事を考えると、全体のパフォーマンスを考えた時、私が走り回っている方が全体の効率が上がる、と考えているからかも知れない。
もしそう考えてくれているのであれば、もう少し私の待遇を改善してくれるなり考えてくれてもよさそうなものだが、そういう時は得てして絶対にそんな事は言わない。
もし全体の効率云々をそもそも考えていないのであれば、私は実に運が悪い状況にある、と言ってもいいかもしれない。
どちらにしても、私からすればあまり恵まれた環境とは言えないとは思う。
中小企業の限界
世の中、テレワークだ、働き方改革だと言っていても、それらは一部の大企業などの話にしかならないのかもしれない。
大多数の中小企業で、こうした考え方に賛同する所はあっても、結局は全体のパフォーマンスを考えると、こうしたテレワークのような体制を社内に持ち込む事は難しいように思う。
結局は社員一人一人の資質や、会社風土なども関係してくるし、それだけでなく実際の運営基盤にも関係してくる事から、中小企業はそうした体制云々を問うよりも、もっと現実的な問題に取りかからねばならない状況に直面している。
ただ、そうした状況に直面しているからこそ、私は言いたい。
人材を管理する側、つまり会社でも部下を持つ管理職の人達は、自分が管理しなければならない人材に対し、平等かつ正しい評価でもって業務配分をして欲しい、という事である。
先日、私が勤める会社は新しい期に入り、そこで新体制の組織が発表された。
そこに記載されていた私の名前のある場所が、あまりにも広い事に気付き、私はとてもモチベーションが下がってしまった。
品質管理のQMS、製造販売後安全管理のGVP、国内外の法規制監視に、社内システムのIT管理、さらに労務安全衛生管理と、普通なら各々一つでも十二分なボリュームのある業務担当がほぼ私一人なのである。
そもそも業務ボリュームを考えても無理だが、今よりも業務の守備範囲を広くしろ、と命令されたに等しい状況である。
しかも、だからといって業務を行う場所が変わるわけではないので、今の私によるサポート体制は変わらず、という事である。
ただでさえ私の今の一つ一つの業務パフォーマンスの低さに辟易しているのに、今より守備範囲を広くするという事は、さらにパフォーマンスの質を落とせ、といっているようなものであり、これで私のモチベーションが上がるわけがない。
「私はやった」という達成感もなく、また達成できる状況でもない現状で、私は自分自身を維持できるのかすら、今はわからない状況に置かれている。
テレワーク?
私からすれば想像理想の産物でしかないような体制だが、世の中、そうして改善されている企業があるのもまた事実である。
日本の中小企業でもこうしたテレワークという考え方が当たり前になる世の中がくるのかどうかはわからないが、いつの時代も企業を支えるのはシステムではなく人である。
その人をどのように管理し、メンテし、維持していくかが、経営や管理側の命題であるという事を、もっと当事者達には理解していただきたいものである。