Blu-rayもいよいよ4K時代に入ることになるが…。
ようやく登場したドライブ
パイオニアからUltra HD Blu-ray Disc(以下UHD BD)に対応したBDドライブが発表された。PS4には搭載されなかったが、Xbox One Sには搭載され、価格的には通常のUHD BDプレーヤーよりも安い価格で既に市販されているものだが、PCに搭載する単独ドライブとして、ようやく製品が登場した形になる。
UHD BDは、解像度が4Kになり、HDRやBT.2020などの広色域に対応する規格で、最近よく耳にする規格に対応したBlu-ray Discという事になる。
このUHD BDにPCが対応する為には、現時点でIntelの第7世代CoreプロセッサのS番もしくはH番が必要で、さらにIntel SGX(Software Guard eXtentions)対応であり、さらにマザーボードがHDMI 2.0/2.0a対応である必要がある、と言われている。
この言葉の意味がわかる人ならすぐに分かる事だが、現時点ではAMD製CPUではまだ未対応という事になる。
さらに、ソフトウェア側の準備としてWindows10のアップデートも必要で、次期Windows10のアップデートRedStone2、つまりCreators Updateの対応で本格的に対応が進んで行く見通しになっている。
つまり、現時点ではまだまだPCでUHD BDの再生すらまともにできない状態だという事であり、今ようやくハードウェア側が準備が整いつつある、という事である。
何故こんなに複雑な準備が必要なのかというと、それは著作権保護機能の強化に原因がある。
デコードしながら再生
BDの時もセキュアな環境で再生できるようにBDの規格を制定したのだが、そのセキュアな環境を作る為にソフトウェアによって暗号キーを更新し、再生するという仕組みを採った。ところが、PC用のBD再生ソフトウェアからその暗号キーのアルゴリズムが流出し、結果としてソフトウェア側から暗号キーを解除する事ができてしまうという問題が発生した。
そこで、UHD BDではソフトウェアではなくハードウェアによる暗号キー解除を行う仕組みにした。それが必要要件に入っている“Intel SGX(Software Guard eXtentions)対応”という部分である。つまり、Intel SGXで暗号キーを解除しながら、読み出したデータをデコードしながら再生するという方法を採ったわけである。
これによって、CPUのハードウェアを利用して外部ソフトのアクセスができない環境で再生するという事が可能になった。これなら、専用ハードを持っていなければ再生できないワケである。
だが、この方法だとCPUというハードウェアが直接関与する出力でしか再生できない事を意味するため、マザーボードに搭載されているHDMI端子からCPUに内蔵されたGPUを経由して出力した映像でしか再生できない事を意味する。
ディスクリート(外付け)GPUでは、現時点でUHD BDは再生できないのである。
ディスクリートGPUメーカーであるNVIDIAやAMD側として、この状態が良いわけがなく、今後何かしらの対策が出てくるとは思うが、現時点ではIntelのハードウェアでないと暗号キーを解除できないという壁が存在する。
しかもIntel SGXに本格的に対応するのは、第7世代Core、つまり昨年末に登場したKaby Lakeからであり、そのKaby LakeでもS番もしくはH番でないと対応できない。しかもこのIntel SGXはマザーボード側も対応している必要があり、Intel200シリーズのチップセットでないと対応しておらず、しかも全てのIntel200チップセットを搭載したマザーボードが対応しているわけでもない。モノによってはBIOSでディスクリートされているだけの場合もあれば、そもそもBIOSで設定項目が存在しない場合もあるし、まだまだメーカー側の対応が行き届いていない状態である。
さらに追い打ちを掛けると、外付けディスプレイに出力する場合は、HDCP2.2に対応していないとダメだという要件もある。HDMIやDisplayPortでHDCP1.4対応というのは既に広まってはいるが、現時点でHDCP2.2に対応しているというのはまだ少ない状況である。
PCでUHD BDを再生するという状況は、まだまだ一般的とは言えないのは、こういう部分を見ていてもわかる話である。
メーカー製でもまだまだこれから
このような要件を揃えなければならないため、メーカー製PCにおいてもUHD BD対応PCというのは、まだまだコレからの登場を待つしかないハズである。
自作PCであれば、各メーカーの対応製品を一つずつ洗い出し、それらで組み込んでいけば現実的に可能かもしれないが、その場合やはり問題となるのは、外付けディスプレイで出力する為のHDCP2.2対応である。
ノートPCやタブレットであれば、基板直結の内蔵ディスプレイという扱いでHDCP2.2対応は必須ではなくなるが、その場合、第7世代コアの対応が問題になるし、結局はまだまだどっちつかずという状況と言える。
しかし、実はもっと根底にある問題もある。
ディスプレイパネルのHDR対応
これは私が以前から問題視している事なのだが、液晶モニタに使われるパネルにおいて、HDRに対応する製品がまだまだ登場していないという事である。
一応PCの場合、Adobe RGBの色域95%に対応とか、独自に広色域対応してきているのだが、これらが明確に規格化された事はない。
よって、今のPCモニターにPS4やXbox One Sを接続しても、HDR対応と認識するモニターは存在しないと思う。
内蔵モニターをメーカーが選定する場合、現時点ではメーカーが液晶テレビで対応しているような対応策を採らない限り、HDR対応とするのは難しい可能性がある。
ディスクリートGPUでもUHD BDが再生できる環境ができたとしても、それを表示するパネル側がHDRに対応しない事には、最終的な出力ができないのである。
CESでいくつかHDR対応モニターが展示されたが、それらが一般的に普及するまで、あと数年はかかるだろうから、PCでUHD BDに対応が進むのはまだまだ先、という事になるように思われる。
ある意味、2017年はHDR元年になるのではないかと私的には思うのだが、多分VRよりは現実味のある話になるのではないかと思う。