最近、Raspberry Piが非常に元気。
Raspberry Piがコア
オトトイ、サエクコマース、ティアック、トップウイングサイバーサウンドグループ、バリュートレード、ブライトーン、ラックスマンの国内オーディオ関連企業8社が「ワンボードオーディオ・コンソーシアム」の設立を発表した。
そしてそのワンボードオーディオのコアとしてRaspberry Piを採用したオーディオプラットフォームの規格策定を行うとしている。
ワンボードオーディオ・コンソーシアムでは、ワンボードコンピュータという最新のIT/IoT技術を活用して高音質と快適な再生環境を追求するとしている。
当然だが、今世間一般的に最も代表格として知られているワンボードコンピュータはRaspberry Piであり、それをメインに規格策定を行うというのは理にかなっているが、当然これにはRaspberry Piの汎用性の高さと処理能力、Inter-IC Soundで内部コンポーネント間を接続できるなどの機能があるからこそ選定されたという事は間違いない。
実際、Raspberry PiはOSとしてもLinuxが使え、ソフトウェア資産が元々豊富にあるというのも魅力である。
ワンボードオーディオ・コンソーシアムでは、今回の規格策定にあたり、Raspberry Piだけに拘るつもりはもちろんなく、それ以外のアーキテクチャも視野にいれている。
その為、規格はハードウェアとソフトウェアの2分野で進め、それぞれを策定するとしている。
ハードウェアプラットフォームは、ヘッドフォンに適したポータブルタイプと他のオーディオ機器と組み合わせるコンポーネントタイプの2つを定義し、面白いのはこれら両プラットフォームで、一部を交換・アップグレード可能な設計にするとしている。所謂“育てる”オーディオプラットフォームを目指しているというところが、特徴と言える。
なお、この両プラットフォームでは、ハードウェアの互換性はないが、共通のシステムソフトウェアで動作するようにするという。やはり基盤レベルでの互換性を保ったまま、ポータブルとコンポーネントを実現するのは難しい、という事なのかもしれない。
また、現時点でのポータブル規格では、Raspberry Pi2 Model BもしくはRaspberry Pi3 Model Bに、寸法がHAT規格互換の拡張ボードを装着したシステムを格納できるケースを定義しているという。このあたりは、いろいろな端子に適合させる必要があるので、ケースパネルは交換可能とするらしい。
他、コンポーネント規格もCompute Model3を搭載するベース基盤を用意し、DACやアンプ、ディスクドライブなどの他デバイスとは内部配線で接続するようにする。それらの一部は寸法と仕様を規格化し、交換可能にするという。
こうしたハードウェア規格は、一部独自としつつも、ある程度の規格化をすすめ、交換可能な規格として進めるようである。
Linuxを活用するソフトウェア
ソフトウェア規格は、当面はオーディオ再生に特化した既存のLinuxディストリビューションを活用し、その後カーネルやライブラリ、サウンドシステム、コーデックなど共用可能な基礎部分を継承しつつ、独自の実装を検討していく。
音質に直接影響しない部分でオープンソース化し、継続利用でき、かつ改良可能なインフラを形成して開発資源の効率化を目指すという。そうした活動の中には楽曲配信サービスも視野に入れていて、自動ダウンロード機能も想定しているという。
こうしたソフトのサポートや配付は、原則としてディスクイメージで行い、microSDに書き込んで起動ディスクにする。
こうしたソフトウェア規格を見ると、オープンソース化してあらゆる資産を取り込んでいくという姿勢が見えてくる。
何となく、こういう規格の流れを見ていると、かつてのMSX規格のような感じがして、実に面白い。
独自性を持ちつつも共有化したシステムで動作する環境が出来上がってくると、オーディオの世界もまた違ったものが見えてくるような気がする。
さらに低価格モデル登場
ちょっと前の話ではあるのだが、Raspberry Piのシリーズとしてさらに低価格なモデルが登場している。
Raspberry Pi Zeroと名付けられたそのシングルボードコンピュータは、65×30×5mmというサイズで、その基板上にARM11コアを実装し、初代Raspberry Piと比較して40%も高速動作するという。
ボード上には512MBのLPDDR2メモリと、microSDカードスロット、Mini HDMI出力端子とMicro USB×2、40ピンのGPIO、カメラコネクタを搭載している。
これらのシングルボードコンピュータが、わずか5ドルで販売されるというから驚きである。
ただ、このRaspberry Pi Zeroは単体では通信機能を持ち合わせていないため、些か使いにくいところがある。
そこで先日、新たにRaspberry Pi Zeroに無線LANとBluetooth機能を追加した、Raspberry Pi Zero Wという製品が発売された。価格は10ドルで、通信機能以外の性能ではRaspberry Pi Zeroと共通となっている。
単体で通信ができるようになるだけでも随分と用途が変わってくるだけに、今後はRaspberry Pi Zero Wが主力になるのではないかと思う。
もちろん性能的にはRaspberry Pi2 Model BやRaspberry Pi3 Model Bの方がずっと上にあるため、環境に応じて用途を変える必要はあるだろうが、より低電力かつ小型で、しかも安価にシステムを手軽に構築する事ができる幅が広がったと言える。
後追いするメーカーもあるが…
このRaspberry Piシリーズのようなシングルボードコンピュータを他メーカーも発売はしているが、どうもRaspberry Piが一人勝ちしているような気がする。
やはりその低価格が一番の強みなのかもしれないが、ここまで強いと確かにこれを利用した製品を生み出していこうというメーカーが現れても不思議ではない。
それだけ汎用性に富んでいると言えばそういう事なのだが、そもそもRaspberry Pi財団はRaspberry Piを教育用として低価格化を進めてきた背景があるので、変な使われ方をすればそれは不本意な話ではあろうが、前述のオーディオの共通フォーマットとして使われるという事に関しては、喜ばしい話なのではないかと思える。
ただ、同時にRaspberry Piに対応したといっていたWindows10 IoT版がその後全く話を聞かなくなったのが寂しい限りで、Windows10ライクな軽量OSが使えれば、もっとRaspberry Piシリーズは普及するのではないかと思ったりする。まぁ、そうなれば本家Windows10が怪しくなったりする可能性もあるわけだが。
CPUの進化
しかしよくよく考えて見るとARMというコアの進化には驚きである。
Raspberry Piシリーズに搭載されているCPUは、基本的にARMアーキテクチャだが、これはスマホなどにも搭載されているアーキテクチャで、ここ数年で劇的に高性能化している。
同時に大量生産している事から、とんでもなく価格も安く製造でき、それがRaspberry Piという低価格シングルボードコンピュータを可能とした背景がある。
逆に性能が伸び悩んだのがx86コアである。
ARMには高性能化できるだけの伸び代があったという事かもしれないが、x86コアは残念なぐらいARMと比較して伸びていない。
もっとも、現時点ではx86コアの方が総合的な性能は上ではあるが、ARMコアとの差は徐々に詰まってきているのは間違いない。
そうしたARMコアの進化の過程でコストも落とし、こうしたシングルボードコンピュータが実現可能になり、気がつけば5ドルや10ドルのコンピュータが手に入る時代になった。
コンピュータと呼ばれるものがまだ特殊だった時代から考えれば、想像できない時代である。
何はともあれ、Linuxを扱える人であればRaspberry Piシリーズはいろいろな事に使えるコンピュータである。
手軽に手が出せる価格でもあるので、いろいろ挑戦してみてはどうだろう?
また、オーディオに興味のある人は今後に期待である。