PS3がついに出荷完了。
一つの時代が終焉を迎える
ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジアが、近日中にPS3の出荷を完了する事を明らかにした。
現在製造している最新モデル“CECH-4300”は2014年8月より発売しているモデルだが、このモデルはPS3としては4世代目になる。
初代は2006年11月に発売され、PS3は11年目にしてその出荷を終えることになる。
PS3は私的には一つの革命みたいなデバイスだった。
おそらくヘテロジニアスという言葉をここまで有名にしたのはPS3ではないかと思うのだが、異種混合型のCPUを搭載し世間を驚かせたのが今からもう11年も前の事なのかと思うと、随分と時間が経ったなぁと変に思ってしまう。
ヘテロジニアスコアとして登場したCell Broadband Engineは、ソニー、IBM、東芝の3社共同開発で生まれたコアだが、画像処理分野でもっと活躍する事が期待されたコアでもあった。たしか私の記憶によると、このCellを搭載した地デジ対応液晶テレビというのも東芝から発売されたと思うし、Cellが搭載された映像編集の為の拡張カードというものもあったと記憶している。
結果から言えば、このヘテロジニアスコアは、プログラミングがとても難しく、使いこなすのが難しいと言われていた。ソニーはこの扱いにくさを吸収するために、開発ライブラリの準備を急いだが、結果時間がかかり、当初はPS3用タイトルの少なさに随分と苦戦したと言える。
今にして思うと、PS3が勢力を伸ばしてきたのは初めて登場してから3年が過ぎて以降の話だったと思う。
高級だった初代機
PS3は初代機とその後の後継機では、そもそもハードが大きく異なっていた。
初代機はPS2の完全上位互換機としてPS2に搭載されていたコアがまるまる搭載されていた。しかもSUPER Audio CDの読込再生にも対応し、専用プレーヤーだと十数万円する機能がPS3にも搭載されていた事も話題だった。おそらく、今までの中で最安値のSUPER Audio CD再生機がPS3の初代機だったと言える。
その後、価格を抑える為、廉価機としてこれらの機能を削除した第二世代機が登場し、以降のPS3はこの機能が通常機能となった。つまり、PS2との互換性を完全に捨てたのである。私がもつPS3は、この第二世代機で、見た目こそ初代機と同じだが、互換性などを切り捨てたタイプである。
その後、第三世代機、第四世代機と、消費電力とサイズ、価格をどんどんと下げていき、最終的にPS3は初代機と比較して重量で半分以下、価格も約半額、搭載するHDD容量は25倍という製品に変化した。
要するに、周辺機器の性能や容量もこの11年で驚くべき進化を遂げており、処理能力そのものは同じでも運用環境は随分と改善されていったと言える。
時代を変えた一台
PS3を世間的にどう評価するか?
人によって様々とは思うが、私はやはりCell Broadband Engineの採用によって世間の全てのコンピュータに一つの革命を起こした一台だと思っている。
この当時、コンピュータはシングルスレッドで動作しているのが普通であり、マルチプロセッサで構成されていたとしても、それらは同じコアを複数搭載していたというだけのシロモノだった。
しかしCellはメインとなるコアと複数からなるサブユニットで構成され、役割の異なるコアを混載させる事で、その処理能力を格段に引き上げるという手法を採っていた。チップ全体のスループットで言えば、当時の汎用PC向けCPUの10倍程度には達していたと言える。
このCellの登場でAMDはAPUへと明確に進んで行き、IntelもCPU内にGPUを混載させる方向に舵を切ったとさえ言える(当時GPUはチップセット内に混載させているケースが普通だった)。
最終的にどのような進化を辿ったかは別としても、このPS3という一台が世界のコンピューティングに与えた衝撃はとても大きく、この進化が今の常識を支えていると私は言い切りたい。
そういう一台が、とうとう出荷完了となる。一時代の幕が閉じ、終わりを告げる…そんな気がするのは、多分私だけではないだろう。