DELLが発表したディスプレイでようやくHDR10対応。
NAB 2017にて発表
ラスベガスで開催された放送機器展“NAB 2017”にて、DELLがいくつか新製品を発表した。
「UP2718Q」は27型のHDR液晶ディスプレイで、4K解像度かつDELL初の“HDR10”規格対応ディスプレイになる。5月23日発売予定で、価格は1,999.99ドルになり、UHDアライアンスのプレミアム認定を取得している製品になる。Rec.2020の色域対応で、色域カバー率としてはAdobe RGB 100%、sRGB 100%、Rec.709 100%、DCI-P3 97.7%、Rec.2020 76.9%という非常に広色域をカバーする製品で、当然だがハードウェアキャリブレーションに対応する。
通常、DELLのディスプレイの型番は「U」から始まるのが通例だが、この製品が特殊という事もあって、型番が「UP」から始まっている。
ただ、この「UP」という識別はHDRに対応しているから、というのが理由ではない。というのは、他に発表された製品群にもHDRに対応した製品があるためだが、このUP型番とU型番の製品では、対応するHDRの規格が異なる。
UP型番はあくまでもHDR10対応というのがウリであり、そこにこの製品の最大の魅力がある。
Dell HDR
DELLが通常対応させているHDR規格は、DELL独自の規格の「Dell HDR」とよばれる広色域規格である。
どういった規格なのか、詳しい事はわからないが、Dellが独自に規定したルールに則ったHDR規格なので、通常この規格ではPS4 ProなどはHDRテレビとして認識しない。
今回のNAB 2017では、前述のUP2718Q以外にも「U2718Q」「U2518D」という製品が発表されたが、これらは共に「Dell HDR」に対応した製品になっていて、価格は699.99ドル、499.99ドルと設定されている。
UP2718Qとは1,000ドル以上の価格差があるが、これは機能的な問題だけでこの価格差なのか、それともUHDアライアンスのぷレミアム認定を取得した事による価格差なのかが気になる所である。
DELLが独自のHDR規格製品を発売する理由が、そうしたアライアンスなどにかかる費用によって上昇する価格にあるとするならば、アライアンスを策定している事の意味が逆に普及を妨げている事になるが、実際はどうなのだろうか?
そろそろ普及してほしいHDR10
個人的には、そろそろHDR10対応機器がいろんな所で出てきて欲しいと思っているのだが、なかなか製品として表に出てこない。
HDR10対応の周辺機器がいろいろ出てきているのにも拘わらず、何故か出力するディスプレイやテレビにおいてHDR10対応品というのがなかなか出てこない。
HDMI規格では、4KやHDRにかかる信号のルールは既に策定されていて、共に2.0a等の規格で伝送できるようになっていたりするが、それに合わせたパネルの製造、もしくはコントローラーの製造が追いついていないように思えて仕方が無い。折角の対応周辺機器が、その能力を発揮しないまま放置されているというのが今の状態で、これが真っ当な対応でない事は誰でも解る事である。
しかし、現実が追いついていない。折角の規格が上手く機能しないままというのは、何とも残念な話である。
個人的に欲しいモニタ
私が今欲しいと思っているモニタがある。
これがもしHDR10対応だったら、間違いなく購入したいというモニタになるのだが、残念ながらHDR10対応ではない。
どのようなモニタかというと、所謂ウルトラワイド液晶モニタになるのだが、私が今持っている「U3415W」と決定的に違い、横解像度が3,840ドットあり、縦解像度も1,600ドットある製品になる。表示面積比でいえば、4Kモニタの縦4分の3程度の面積のもので、一応大きさを表すインチで考えれば38インチという事になる(製品の対角線が38インチ)。
なぜこの横長をベストとしているかというと、情報を横に並べる事が多いからである。
仮に、DPIを96~110程度にした状態で4Kモニタという事になると、モニタはおそらく40インチを超えるクラスの大きさになり、画面全体を把握するのがちょっと辛くなりそうな感じと考えられる。
現在私が使用しているU3415Wは、34インチウルトラワイド液晶だが、DPIは約105と文字認識はそんなに辛い状態ではない。
4Kなど、高解像度になる場合、気をつけなければならないのは、この細かさの部分であり、DPI(ドットパーインチ。1インチあたりにどれぐらいのドットが入るのかという基準)が高いと細かい表示になり、滑らかに見える可も知れないが規定文字などは細かすぎて読めなくなる。
Windowsの標準DPIは96で、今現在これが大きく変わる事はない。iOSなどはRetina Displayと称して200DPI以上を確保しているが、表示できる広さはあまり広いわけではないので、純粋に細かさを追求した結果で高DPI設定になっている。
Windowsは、デスクトップの広さという問題が作業性について回るため、このDPIが著しく高い状態になる事はまだ当分ないと考えられる。
Displayが8Kとかぐらいになれば、DPIも96から200ぐらいに変更になるのかもしれないが、4Kレベルでは150DPIぐらいが関の山で、それで従来と同じ表示面積とするぐらいの使い勝手になるだろうと考えられる。
32型の4KモニタでWindowsの表示拡大率100%にしたら…きっと文字認識は相当困難になるのではないかと思う。
UP2718Q
こういう実情を考えると、今回DELLが発表したHDR10対応ディスプレイは、27インチとそのまま使えば間違いなく文字が細かすぎて見えづらいディスプレイになる。
HDR10という広色域は魅力的だが、あくまでもより滑らかな表示にできるというだけで、デスクトップを広く使うという考えでは使いにくいディスプレイである。
個人的には40インチクラスのHDR10対応ディスプレイぐらいにならないと、4Kという広さをデスクトップとして活かせるものにはならないだろう。
そういう製品が登場するのかどうかはわからないが、PCの用途とそうではない用途では、この解像度の考え方が変わるので、PCに向けた広いデスクトップを実現するHDR10対応4Kディスプレイが登場してくれる事を私は祈っている。
…そういうのは中々出てこないとは思うが。