話題沸騰のミニパソコン。
古き良き名機を復活
正直、私の時代とは完全には重ならないのだが、ハル研究所が“PasocomMini”というシリーズで1978年以降に大ヒットしたマイコン(まだパソコンとすら呼ばれていなかった時代のPC)を約1/4サイズで再現した手乗りコンピュータを発売すると発表した。
その第一弾となったのが、シャープの“MZ-80C”で、内部にはRaspberry Piを搭載し、各機種のエミュレータが動作して、実際にBasic等が動作するという内容になっている。動作するBasicは、プチコンで採用されているSmileBasicで、そのBasic上でエミュレータがオンメモリでプログラムを動作させる仕組みになっている。
発売は2017年10月中旬を予定しており、価格は19,800円(税別)を予定しているという。
デバイスの制御機能などはRaspberry Piの機能に譲る形にはなるが、結構本格的に使える製品と言える。
なお、第二弾以降に予定されているのは“PC-8001”と“FM-7”だという。
ちゃんと使える
PasocomMini版MZ-80Cには、Raspberry Pi A+が内蔵されているので、1/4サイズの筐体側面にはUSBポートが実装される。ここにキーボードを接続すすれば、USBキーボードを認識し、コントロールする事が可能になるのだが、Raspberry Pi A+には他にもHDMIポートもあるため、そこにディスプレイも接続できる。
これらを使えば、そのままの状態でSmileBasicを操作して使えるわけだが、エミュレータとはいえ、時代が進化している事から、おそらく実機よりも高速動作する事はいうまでもない。
残念ながら、筐体についているキーボードは押す事ができないため、こうした外部デバイスを接続する必要があるが、SmileBasic側からのエミュレータのメモリをアクセスする事ができるデバッガ機能が付いていて、他にもCPUを止めたりトレースしたりする事もできるようで、結構本格的な使用が可能になっているのは、マニアには嬉しい機能かもしれない。
一応、当時のゲームが3本ほど付いてくるようなので、そうしたサンプルプログラムを参考にしつつ、いろいろ試してみるのも面白いかも知れない。
要は使い方次第。
PasocomMini版MZ-80Cはそういうコンセプトで製品化されているという。
もうすこし後の時代
私的には、MZ-80CやPC-8001などではなく、もっと後発のシリーズだと馴染みやすい。
当時を知る人ならわかると思うが、PC-8000シリーズはPC-8800シリーズで大きく進化し、特にPC-8801 mkIISRは当時の進化の頂点と言える機種だが、こうした機種がエミュレータで動いてくれると、個人的にはものすごく有り難い。
また、シャープであればX1 Turbo系、富士通系であればFM-77系だと、私にはクリティカルヒットとなるのだが、そうなると、エミュレータで再現するというレベルでは困難になるのかもしれない。
また…これは絶対に無理とは思うが、シャープのX68000系などが出てくると、もうそれだけで満足、という感じだが、それは高望みしすぎというものだろう。
私としては、確かにPC-8001シリーズやMZ-80Cなどの名機は確かにパソコン黎明期を支えた製品とは思うが、今の人にはできればその時代の頂点に輝いた機種をもっと知って欲しいと思っている。
当時、パソコンから聞こえてくるFM音源の響きは、他の世間にありふれている音楽とは明らかに異なる音だったし、映し出される映像にしても、CGと一目で分るものの、未来に可能性を感じる映像に見えていた時代である。
実際、初代PlayStationでゲームライブラリを作っていた世代は、そうしたPCと呼ばれる前のパソコン時代の頂点に君臨するような機種でプログラムを学んだ世代だったりして、そういう世代が作ったゲームには、未だに名作と呼ばれる作品が多いのも事実である。
陳腐な素材をどうやって面白くするか?
そういう工夫を試行錯誤で繰り返していた世代が使っていた機種を、ぜひとも今の世代の人達にも知ってもらいたいと私は思う。
Raspberry Piの処理能力で、どこまでの機種が再現できるのかはわからないが、こうした試みは非常に面白いと思うし、プログラマー育成が遅れている日本には、何かしらの工夫をもって現世代にプログラムの何たるかを知ってもらう機会が必要だと思う。
そういう“くいつき性”で考えれば、MZ-80Cよりもその後に登場した機種の方が、向いている…そう思えてくる。
そうした世代機を再現できるコアハードが今後登場するだろうか?