AMDが正式にVegaを発表。
小型で高性能
Radeon RX Vegaがようやく正式発表された。発売は8月14日以降から始まるという。
姿を現したVegaは、事前の噂通りVega64とVega56と、その搭載するStream Processor数で2つのグレードがあるようだ。どちらにしても蓋を開けてみれば随分と小型のGPUに収まっていて、それでいて性能は前世代のRadeon R9 Fury XのFP32性能8.6TFLOPSに対して、Vega64は12.66TFLOPSと、結果的には47%も性能が上がっているという、これまたRyzenの時と同じような高効率ユニットになっている。何しろ、前世代とStream Processor数はどちらも4,096個と同数でありながら、その性能が47%増しなワケだから、如何に効率が上がったかがよく分かる。
実際、ダイの大きさも486平方mmしかなく、ライバルのNVIDIAのVolta世代“GV100”では815平方mmからくらべれば60%ほどのサイズに収まっている。
しかも、NVIDIAのVoltaのGV100はディープラーニング特化型のコアだが、Vega64はディープラーニング特化ではなく、グラフィックパフォーマンスも高い汎用型として設計されているという。
ライバルのNVIDIAとしては、どっちつかずのコアに見えるかも知れないが、このあたりは実際のベンチマークで実証するしかない部分でもある。
具体的な性能に関しては、以下の専門のサイトを見てもらうとして、今回登場したVegaを私が選ぶべきかどうかという事をちょっと考えていきたい。
impress PC Watch
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/kaigai/1073276.html
価格は499ドル
ビデオカード単体の話をすると、AMD曰くVega64の空冷モデルの価格は499ドルだという。
Vega64は空冷の他にも液冷モデルが存在し、そちらは500ドルオーバーのモデルになるが、空冷モデルでは500ドルを下回る製品と位置付けた。また同じ空冷モデルでも高クロックモデルが別に存在する。
下位モデルのVega56は、空冷モデルで399ドルでこちらには液冷モデルは設定されていない。
価格的には随分と挑戦的な価格で責めてきたなとは思うが、北米でいくらこの値段で売られていたとしても、日本国内に来れば相当な価格へと跳ね上がる事は間違いない。
499ドルのVega64の国内流通価格は、結果とすれば7万円を超えてくるのではないかと予測する。これならGeForce GTX1080とロクに変わらない価格になるが、たしか1080も価格改定で499ドルだったものが国内だとこの価格なワケだから、7万円超えは間違いないと言えるかも知れない。
また気になる消費電力だが、Vega64の液冷モデルで345W、空冷モデルで295W、Vega56で210Wというから、このあたりはNVIDIA製品のほうがずっと省電力と言える。但し、NVIDIA製品も実使用時はそれなりに電力を消費するので、カタログスペックで判断するのは危険というものである。
Vegaが市場に出回るのは当面はリファレンスモデルだというが、9月下旬以降からは各ベンダーデザインのカードが登場する予定となっている。待てる人は待つのも一つの方法と言える。
で、実際は買いなのか?
現時点でVega64の性能はGeForce GTX 1080Tiより上、という理論値になっている。
それが7万円台のビデオカードとして購入できると考えれば、買いと言える製品とは思うが、現在流通しているゲームをプレイする場合、Radeon系はそれに特化した製品でないかぎりは概ねNVIDIA系よりもベンチマークは下回る傾向にある。
そう考えると、NVIDIA製より高性能であっても、性能がスポイルされて結果NVIDIA製と互角になる…と考えるべきであり、その結果で考えれば、ワットパフォーマンスはNVIDIA製に劣る事になる。
なので純粋に性能志向でビデオカードを判断するなら、私は現時点においてもNVIDIA製を選ぶべきと思う。
だが、私の様にRadeon系でないとできない事、つまり動画のフレームレート補完機能などを求めようとすれば、自ずとRadeon系を選ぶしかなくなる。なのでそちらを主体に考えるならは、今回のVega64は実に「買い」と言える製品ではないかと思っている。
もちろん、実際のゲームベンチマークを見てみない事には最終判断はできないのだが、恐らくは不利な状況下であっても互角勝負をしてくる性能は持っているのではないかと思う。
Radeon系に突貫するしかない人にとっては福音となるGPUではなかろうか。
問題は流通
だが、私が一番心配なのは、入手性である。
というのは、ここ最近Radeon RX580が現行品でありながら、店頭に並ばないという状況にあったりするからだ。
理由は単純で仮想通貨のマイニングをしている集団が製品を完全にまとめ買いしてしまっていて、一般に製品が下りてこないという状況だからである。
世界的にはもう企業が仮想通貨のマイニングをしていたりする状況で、電気料金の安い中国では、ビル一棟をまるまるマイニング工場にしてしまい、そこで大量のビデオカードでひたすら演算しまくるという事業を行っているところもある。とある企業だと航空機をまるまる一機チャーターし、それにビデオカードを満載して買い付ける…なんて事もあるらしい。
おそらくVegaに関しても同様に製品をまとめて押さえてくる可能性はあり、本来欲しいと思っている人たちに下りてこない…なんて事も考えられる。
だから、私などが欲しいと思った時に商品が手に入らないなんて事は、簡単に起きてしまう。メーカーの意図とは異なるだろうが、最近のRadeon系の入手難を考えれば、あり得ない話とは言えないのである。
とりあえず、発表されたVegaだが、私としては良い製品が出てきたな、と思っている。
メインPCの構成品として考えたい一品だと思うし、検討していきたいと思う。
あとは実販売価格がどうなるか、といったところだろうか…。