儲けに走るだけでなく…。
Vegaで混乱を再整理?
この夏、AMDのRadeon RX Vegaが遂に発売になる。
既に発表があったワケで、あとは現物を手にしてそのパフォーマンスを確認するだけ、といった状態ではあるのだが、結果としてその性能はVega64でGeForce GTX 1080Tiをちょっと超える程度の結果として発表された。だが、その消費電力の高さから考えると、驚く程の性能向上ではないし、思ったよりはずっと地味な内容だったように思う。
但し、それはあくまでも発表された内容を結果として見ただけの話であり、そこに行き着くまでの過程を見ると、Vegaは今後のGPUの行く末をNVIDIAとは違うアプローチで指し示そうとしているようなアーキテクチャに見えてくる。過去、AMDは同じようなアプローチをCPUの時にも行っている。それがAMD64、つまりCPUの64bit対応への道である。
それまではCPUの64bit対応はIntelの独壇場だったが、AMDがx86アーキテクチャと互換性を保ったまま64bit化させたAMD64を発表。コンシューマでもx64として対応を可能にした。今度はそれと同じような事をGPUでも行おうとしている節があるという。
それがDirectX11以降のプログラマブルシェーダアーキテクチャの見直しである。
詳しい話は、下記サイトで確認して欲しいが、これを読むとAMDには何ら利益をもたらさない事ではあるものの、今後の技術開発において整理が必要と思われる部分をAMDが再定義しようとしているように見える。
4Gamer.net
http://www.4gamer.net/games/337/G033714/20170804085/
これによって、AMDが何らかの利益を得るかというと、現時点ではそんな事はなく、この再定義された結果を利用する事で利益を得ることができるのは、プログラマー達であると考えられる。
ただ、現時点ではこの再定義されたアプローチはすぐに利用される事はない為、Vegaでは既存の処理も可能になっているが、ひょっとしたらそれ故に性能的には1080Tiをちょっと超える程度に収まっているのかもしれない。
また、AMDはPlayStation4やXbox OneなどのCPU(正確に言えばAPU)の製造元でもあるため、その次世代機で、この新たに定義したプリミティブシェーダを標準採用するつもりなのかもしれない。そうなると、AMDにも何らかの形で利益がもたらされる事は十分あり得るが、それでも間接的でしかないだろうと考えられる。
気になるVolta
AMDがVegaによってこのようなアプローチをしてきた事で、やはり気になるのはNVIDIAの次期アーキテクチャであるVoltaである。
Voltaの基本はとても簡単で、現在のPascalアーキテクチャの拡大版という位置付け、と私は見ている。
FP32におけるピーク演算性能で15TFLOPSに到達すると言われているVoltaは、そのダイ面積も巨大で、CUDAコアも5120基に到達する。
もちろんVolta独自に新たに搭載される技術も存在はするが、基本的にGPGPUとグラフィックス用途を別に捉えているNVIDIAでは、Voltaで拡張されるアーキテクチャの大部分はGPGPU用途を目的としたものと言えそうである。
なので、グラフィックス用途で言えばVoltaは基本的には巨大化したコアでパワー演算するという方向になる。
この点がAMDとは全く異なる部分で、とにかく今まで効率を上げてきたコアを多数搭載して押し切るのが基本戦略になる。
もちろん、この方向が間違っているとは言えない。事実、現時点においてもNVIDIA製GPUの方がワットパフォーマンスは高く、グラフィックス処理能力が高い。だからゲーム用途でGPUが欲しいといった場合は、NVIDIA製コアを選択する方が(どちらかと言えば)間違いが少ないと言える。
それでも私はVegaが気になるし、推すとするならVegaを推したい。
それは、AMDの方向性や未来性を私が推したいからに他ならない。
未来を推す理由
私がPCを構成する時に心がけているのは、現時点での性能だけに縛られないようにする、という事である。
今から10年15年前の話なら現時点の性能で検討するという事で問題はないのだが、2017年の今となると、今年発売されたCPUと来年発売されるCPUでは、性能的に隔絶の差というのは生じない。というか、もう一定の性能まで達してしまったCPUは、数パーセントの性能向上とワットパフォーマンスの違いしか生まれない。
なので現時点の性能というよりは、今後スタンダードになる可能性のある技術に注目し、それに対応できる事の方が、数年先に性能が向上する可能性を秘めている事になる。
私がRyzenに期待したのはまさにこの部分で、Ryzenはアプリケーションレベルでまだまだ最適化が必要なCPUだと思っている。
これと同じように、GPUも未来を見据えた方が息が長く使えると言える。
もちろん、数年先には数年先の製品が世に出てくるのだが、それが3年先だとするならば、現時点での製品が対応できる事の方がより重要である。
まぁその中にあってGPUはまだ性能の伸びは期待できるので、未来を見据えすぎる事よりも今を見て判断する方が良いかも知れないが、ちょっとでも製品寿命を長くして使いたいという人は、こうした次世代スタンダードと考えられるような製品を見ていくというのも必要なのではないかと思う。