9月末って話じゃなかったか?
突然発売、下位モデル
AMDのRadeon RX Vega56が本日発売になったようである。
価格は市場価格で税込70,416~72,144円程度と、上位版であるVega64と1万円程度の価格差になっている。
たしかに、AMDの公式発表価格も、Vega64が499ドル、Vega56が399ドルとなっていたため、価格差約1万円というのは間違っていないとは思うのだが、絶対価格でVega56が7万円程度という事を考えると、割高感を感じずにはいられない。
スペックは…もう今更言うまでもなく、StreamProcessor数3,584基と、上位版とSP数が512基少ない程度のもので、その他は大きな違いが無い。
明確に違うところといえば、Vega56には水冷版が存在しないという事で、リファレンスは空冷1モデルのみが存在する。
当初は9月末頃に登場するという噂もあったVega56だが、気がつけば8月末ごろと、Vega64とは僅か1週間の差でしかなかった。
それとも、9月末頃という噂そのものが間違っていたという事かもしれない。
ワットパフォーマンス
Vega56は、絶対性能ではVega64よりも低い性能しか持ち得ていないが、Vega56をパワーセーブモードで動作させた時のワットパフォーマンスは、NVIDIA製ビデオカード並に優れている。そういう意味で、Vega64よりもVega56を推すという人もいて、ひょっとしたらマイニングなどではVega56の方が、良好な結果が得られる可能性がある。
聞くところによると、マイニングは性能も必要だが、処理するプロセッサ数が多い方が結果として高効率になるようで、ワットパフォーマンスに優れる状態の方が好結果となるらしい。
結果としてVega56も、マイニング需要で数が足りなくなるような気がするが、絶対価格が高いので未だにPolarisテクノロジーのRadeon RX 580や570(場合によっては480や470)に需要が集中する可能性もある。
本家本元のグラフィック分野で使われるよりもGPGPUとして使われるケースが多いというのも、時代の変化から生まれた使われ方だが、メーカー側からしてみれば売れてくれれば良いわけで、一つのセールスポイントなのかもしれない。
実は歩留りが悪い?
Vegaシリーズは、メモリにHBM2を採用しているが、この事で歩留りが悪いという噂が出ている。
というのも、Vegaの半導体を構成するベンダーが複数にまたがっており、GPU部分はGlobalFoundriesの14nm FinFETプロセスで製造され、VRAMあるいはキャッシュメモリとなるHBM2はSK HynixまたはSamsungが製造し、これらの半導体をシリコンインターポーザを使用してパッケージングするのがASEが担当する。
ところが、このパッケージングの過程が非常に困難なようで、ここで歩留りが相当に悪くなっているらしい。このパッケージ問題は、そもそもベンダーの技術力に問題があるのか、それとももっと別に意味があるのかまでは分かってはいないが、歩留りの悪さがそのまま供給量に直結しているらしい。
マイニング人気で需要が多く、それでいて歩留りから供給量が少ないとなると、製品が出回らないのも当たり前で、しばらくは品不足が続きそうである。
適正価格
個人的に、Vegaシリーズの国内販売価格はまだまだ高いと思っている。
499ドルが8万円ぐらいになり、399ドルが7万円程度になる。499ドルが8万円になるとすると、1ドル=160円という事になるし、399ドルが7万円になるとすると、1ドル=175円という事になってしまう。レートとしてはあり得ないものである。
もちろん、そこに代理店のマージンが入ったり、輸送費が入ったりするワケだから、ある程度の価格差が出てしまうのは当たり前の事ではあるが、今のままだと、製品全体の30%近くがマージンになってしまう。とてもではないが、真っ当とは言いにくい。
私としては、Vega64が6万円台前半、Vega56が5万円程度というのが、妥当なところではないかと思うのだが…それぐらいの価格になってはくれないのだろうか?
Ryzen Threadripperも価格改定された事だし、Radeon RX Vegaシリーズも、そうした価格の見直しが行われれば、Vegaの消費電力が高くとも、NVIDIAでなくAMDを選ぶという人も増えようかと思うのだが。
今年のAMDは魅力的な商品が多いのだが、価格という所にその魅力を削いでしまう要素が日本国内では散見されるのがとても残念である。
そこさえ是正されれば、市場はもっと活気づくと思うのだが。