ハイブリッドカーは環境に優しい…という事で、トヨタとホンダは、この冷え切った車消費社会に大きくハイブリッドカーを打ち出してきた。
トヨタのプリウスは他のトヨタ車が値下げしてもプリウスだけは値下げしないという強気な販売体制を貫いてきたが、ホンダのインサイトの登場によって従来車をコストダウンし、新型プリウスを高く売るという戦略に出てくると思われる。
ホンダのインサイトにしても、一番下のグレードで189万円という価格を打ち出してきたが、たしかにハイブリッドカーとしては安いかもしれないが、それでもバリュークラスの車としてはまだ高い。
消費者側は、もちろん環境の事も考えるだろうが、一番考えるのはコストの問題である事に違いない。少なくとも私はそうである。
だから幾らホンダのインサイトが安いといっても、その安さが絶対価格としてどれぐらいになるのか? という所はどうしても考えてしまう。
これはやはりプリウスも同じである。
では普通のコンパクトカーとハイブリッドカーを買う際のコスト的なメリットというのは、どれぐらいになるのだろうか?
今年4月から始まる、低燃費車など環境に優しい自動車を新車で購入する人を対象に、自動車重量税と自動車取得税を減免するという仕組みを考慮して考えてみたい(この措置は2009年4月から3年間の時限措置となる)。
仮に新車価格を200万円と想定する。
これはハイブリッドカーも低燃費コンパクトカーも同額として考える。
すると、通常支払うべき自動車重量税は3年分で56,700円になる(新車購入時は3年分前払い)。
次に自動車取得税だが、これは購入価格の5%が対象となるため100,000円となる。
つまり合計で156,700円が購入価格に上乗せされる。
ところが今年4月から始まる措置では、ハイブリッドカーはこれらが免除される。
また、コンパクトカーも、燃費性能に応じて重量税と取得税について本来の税額からそれぞれ75%か50%を差し引いた額を実際の税額とするという内容であるため、仮に75%だったと考えると117,525円になる。50%なら78,350円だ。
本来なら200万円のところ、実際には2,156,700円必要な状況が、ハイブリッドカーなら200万円、低燃費コンパクトカーなら211.8万円、もしくは208万円ぐらいになる。
これだけ見ると低燃費コンパクトカーとハイブリッドカーなら、絶対的にハイブリッドカーがお得という感じがする。
ところがこれには罠がある。
なぜならば、実際はハイブリッドカーと低燃費コンパクトカーでは同じぐらいのグレード(装備)で考えると価格差が約50万円になるからだ。
もちろん、グレードの選び方やオプションの付け方なども関与する問題ではあるが、私がコレと思った感じで調べると、往々にして低燃費コンパクトカーは約50万円安くなる。
つまり、ハイブリッドカーは一番最初の購入価格で50万円くらいのハンデを背負っているワケだ。
そして問題は5年間くらい使用すると想定した時のガソリン代の差である(まぁ、3年で計算してもいいが)。
今のハイブリッドカーと低燃費コンパクトカーの燃費差は大体リッターあたり12~15km前後になる。
実際には走る距離も影響となるだろうが、一番最初の50万円のハンデを覆すだけの金額にはなかなかならないハズだ。ハイブリッドカーといえどガソリンを使うわけで、ガソリン代をゼロにはできないのだから。
感覚で言っていても証明にならないので、例を挙げてみる。
例えば、私は月に2回ほどガソリンを入れる。
ガソリンをリッターあたり140円で計算し、距離差を15km/Lとする。
すると月2回の差額は4,200円になり、これが1年間となると25,200円になる。
これが5年分となると126,000円となるわけで、自動車重量税と取得税を75%税額として加算しても(126,000円+117,525円)、243,525円、つまり50万円差の半分にしかならないのである。
もちろんこれはあくまでも一例にすぎない。
走行距離と月給油回数などいろいろな条件でその差額は変わってくる。
だが、50万円の差額を埋めるレベルにするには、相当な燃費をたたき出し、なおかつ走り込む必要があるハズだ。
しかもこの計算では5年間のガソリン料金で計算している。これが3年分であるならば、24万円はもう少し安くなる。
また、安いハイブリッドカーは全てにおいて良さそうな雰囲気で語られているが、実際は低燃費コンパクトカーでもかなりのコストパフォーマンスを叩き出す。
ホンダの話になってしまうが、インサイトのカタログスペックは30km/Lの燃費となっていて、これが仮に本当だとしてもフィットも24km/L(カタログスペック)の燃費を叩き出す。つまり、燃費の差はわずか6km/Lしかない。
ところが、フィットのRS(1.5Lでカタログスペックは19.6km/L)は、実際に高速道路走行すると、場合によって23km/L以上を叩き出す。
つまり、カタログスペックではなく実走行値をインサイトも同じように見積もったとしても、その燃費性能の差は対して変わらないと予測できる。
前述の差額を求める時、私は距離差を15kmとしたが、実際はそんなに差がないワケである。
プリウスの場合はもう少し変わってくるかもしれない…そう思って15km/Lの差にしたのだが、それでも結果的に有利かというとそうでもない。
つまり、この差額をどう考えるか? である。
まだ多少ハイブリッドカーの方が高いが、環境の為と考えてハイブリッドカーをセレクトするのか?
それとも総合的な価格を考えてまだ安くなる低燃費コンパクトカーをセレクトするのか?
たしかに環境の事を考えると燃費は少しでも良い方がいい。
しかし、コストの問題は常について回る。
消費者からすれば、車は耐久消費財とはいえ数年後には買い換える事になる。
となると、今ハイブリッドカーに行くべきかどうかという問題がおそらく最も的を射た話となるだろう。
実際、4月以降にどんな車の売れ行きになるのか…
多少気になる所である。