内閣府の社会意識に関する世論調査の結果で、日本の現状で「悪い方向に向かっている分野」(複数回答)を質問したところ、「景気」と答えた人が68.6%で最も多かったそうである。
2位は「雇用・労働条件」の57.5%で、1位2位共に調査項目に加わった平成10年以降で最高をマークした(産経新聞より)。
要するにサブプライムローンを発端とした米金融危機に伴う不景気が生活に不安を与えてるんだろうと思う。
また、「個人の利益より国民全体の利益を大切にすべきだ」と考える人が56.6%と半数を超えたそうで、調査項目に加わった平成4年以降で最高となったようである。
格差社会に対する是正を求める声である事は間違いないだろうし、こういうご時世だからこそ社会の安定を求める傾向が出たのではないかと思う。
その格差社会だが、私は今の日本政府はもっとも根本的な部分で間違っているんじゃないかと思っている。
そもそも格差社会は何故起きたのか?
私も専門職ではないので、ハッキリとこうだとデータを基に言えないのだが、私は格差社会の始まりは消費税導入の頃からではないかと思っている。
実際にはもっと前からその兆しはあったのかもしれないが、そもそも消費税そのものが格差を生む仕組みだと言う事を国民のどれだけの人が理解しているのだろうか?と思う事がある。
消費税を詳しく分類すると、個別消費税とか一般消費税とか総合消費税等、細かい分類に分かれその仕組みもいろいろ異なるのだが、要するに国民の全ての人が“必要としたものに対して等しく支払う税金”を意味する。
つまり、消費税とは税区分で言うと“間接税”になるワケである。
間接税に対して所得に比例する課税の事を“直接税”と言うが、本来、国民の格差を埋めるにはこの“直接税”を見直さねばならない。
何しろ、間接税を引き上げてしまうと、所得が少ない人ほど税金負担が高くなるからだ。
簡単な例を所得1万円の人と所得10万円の人で考えてみる。
双方が1,000円の買い物をしたとする。
所得1万円の人は残金が8,950(10,000-1,050)円になる。
所得10万円の人は残金が98,950(100,000-1,050)円。単純な算数である。
この例ではどちらが税負担率が高いでしょうか?
こんなの考えるまでもない。所得1万円の人の方がより多くの税負担率になってしまう。
所得総額の内、50円の比率がどれだけか?という事である。
これでは所得の高い人ほど税負担率が低くなり、格差はより拡大する。
直接税にすれば間接税ほどの格差にはならなくなるだろう。
ところが、格差がある程度緩和するであろう直接税は、不平等と考える事もできるのである。
その直接税のもっとも代表的な所得税を簡単に例にしてみる。
所得1万円の人の所得税が10%だとすると、課税後の残金は9,000円になる。
ところが普通の所得税の場合、所得の高い人は所得税が上がる。
なので所得10万円の人の所得税が同じ10%とは言えず、場合によって30%になる事もある。
すると、所得10万円の人の課税後の残金は70,000円という事になる。
これは明らかに不平等とも言える。
だが、この仕組みを主体にしないと、大きな集団の中にある格差は埋まらないのである。
(※上記例はあくまでも例であり、実際の対象値ではない)
この所得に対して同比率でない所得税が、なぜ集団の格差を埋めるために必要か? という事を真剣に考えると、そこには集団維持の実情が絡んでくる。
地方自治と非常に似ている為、ここでは地方自治を例にしてみたい。
例えば、東京都と山梨県を取り上げてみる。
人口が多い東京都の方が、地方税も金額が大きい事は言うまでもない。
ところが実際に山梨県の中で行われる公共事業は、国の申請が通ればその負担額が半分くらいになる。つまり、国が半額を国税より負担するわけである。
当然、国の負担額の中には東京都の人々からの税金が含まれている。
東京都の人からすると「関係ないのに理不尽だ」という事に成りかねない。
だが、例えばである。
もし仮に東京の首都部が何かしらの災害となり、都市壊滅となったとしよう。
その時、山梨県は東京都民を救済する為に活動する事になる。それは日本国民としての義務である。
何故義務なのかというと、もちろん人道的な問題もあるがそれ以上に日本国民だからやらねばならないのである。
そのために国税の援助を受けているのだから。
つまり、有事の際に互いに協力する代わりに、徴収した税金を一度均一にし、そこで周辺全ての公共活動資金にしましょう、という事を国が行っているわけである。
もちろん、別の意味も存在するが、簡単に考えるればこんな感じである。
(※わかりやすくするための例であり、実際はこんな感じより殺伐としているかもしれない)
これを個人の所得に落とし込んだとき、同じような用例になるか? というと実は微妙。
似て非なるモノという人もいるかもしれないが、国民としての一定の保障を得る代わりに、国の運営に協力しなさいという税制と考えれば理解しやすいかもしれない。
つまり、儲けてる人はより大きな負担をしなければならないのは、国民としての義務ですよと言われているのである。その義務を果たしている限り、日本国ではあなたを国民として保障します、という事である。
理不尽だと思う人もいるかもしれない。
数字だけで考えれば、かなり理不尽な話なのである。
だが、国の中にいる個人と考えたとき、これを数字だけで考えればいいというのはかなり自分勝手とも言える。
国は、国民すべてを一定に保障する事で国民を支えている。国民はその制度をみんなで分かち合うために国を支えている。
普段意識していないかもしれないが、そういう事である。
ところが、今の日本政府はこの直接税に手を付けず、消費税引き上げで財源を確保しようとしている。
要するに、格差がより拡大する方向に向かっているワケである。
格差社会をなくさねばならないと言っているにも関わらず、間接税を引き上げ、所得の低い人達の税負担率を引き上げようというのである。
格差社会をより小さくする為には、所得の高い人と低い人の垣根を取り払わねばならないのだから、本来なら直接税に手を付けなければならないのである。
それが実際は逆の道をたどろうとしている。
これは正しいやり方なんだろうか?
たしかに所得税引き上げは所得の高い人への不平等の拡大になるかもしれないが、格差社会はそこを重点的に突っついていかねば無くならない。
これは集団を維持していくための方向性だからどうにもならない。
この不平等を嫌い、間接税で平等に課税していく事を選べば、今よりも格差社会は拡大する。
今、政治の世界では、今後は消費税の引き上げを主体に話が進んでいるが、頭の良い政治家が、この仕組みを理解していないとはとても思えない。
本気で格差社会をなくさなければならないと考えているならば、消費税の引き上げで話をまとめるワケがないのである。
今後、日本はどうなっていくのか?
何の影響力もない私ではどうすることもできないが、頭のいい政治家の人達には、もっと根本的な所から考え直してもらいたいと思う。
それとも…日本の政治体制に問題があるのだろうか?
だとしたら、日本国民はどこかのタイミングで立ち上がらなければならないのかもしれない。