レコーディングと聞くと、スタジオにあるフィジカル(ムービング)フェーダーがずらずら並んだミキサーとそれらを巧みに操るエンジニアを前に歌の収録…なんて姿を想像するかもしれない。
確かに今、プロの現場で行われているレコーディングの基本的な部分はそうした専用機材とそれらを操るエンジニアで支えられていて、ミュージシャンが一人でレコーディングするなんて事は少なくなっている。
簡易的に録音するのと違い、レコーディングとなると本格的な知識と技術が必要であり、良いものを作ろうとなるとおそらく単一の存在ではなかなか作れないのが現在のレコーディング事情だと思う。
しかし、そもそもレコーディングというのは、ミュージシャンが音楽をメディアに録音するのが基本であり、専門の技師がついて回るという事そのものが変な方向に流れた結果だと思う。
レコーディングという行為をより突き詰めていった結果、良いものを高度に仕上げるには専門の知識と技術が必要になったのがその最大の理由だが、原点に返れば、やはり録音という行為は作曲者や奏者に委ねられるのが正しい結論だと思う。
しかし、繰り返すようだが、今のレコーディング事象がそれを許さない。
使用する機材もソフトも高度化し、専門知識を要してしまうからだ。
ところが、Reasonという画期的なスタジオソフトウェアを開発したプロペラヘッドというメーカーが、そうした専門知識を要しないミュージシャンの為の録音ソフト“Record”を9月9日に発売する。
見た目はReasonにそっくりな作り。やはりReasonは音楽の金字塔ソフトなのかもしれない。
Recordは見た目もReasonそっくりだが、根本的にこの二つのソフトは別モノだ。
Reasonはラックマウントタイプのシンセサイザやエフェクトを仮想的にソフトウェアで実現するソフトであり、ある意味音楽機材のシミュレータみたいなソフトであった。
しかしRecordは単純に考えてそれらのようなシミュレーションソフトではない。外部からの情報をベースにあくまでもレコーディングするためのソフトである。
言葉で説明しようとすると、かなり苦労する。実はこれはReasonの時も全く同じで、プロペラヘッド製の音楽ソフトは従来の常識を根本から覆す事が多い。
Recordは、単純に言えば録音ソフトであり、PCの音声入力(オーディオ)データをトラック毎に記録する機能を持っている。
但し、ここで記録するオーディオデータは、あくまでも入力データ以外のナニモノでもない。
Recordというソフトは、その入力されたオーディオデータに各種のエフェクタを重ね、リアルタイムにシミュレートするソフトである。
なのでエフェクタの種類を変えれば当然違った音に聞こえるのだが、従来のDAWから比べるとそれらをレスポンスよく扱う事ができるのがRecordである。
録音したオーディオデータは普通に聞こえる何の変哲もないデータでしかないが、Recordを使いエフェクトや音素材の加工をRecord上でいろいろシミュレートする事ができるため、エンジニアが必要というよりはミュージシャンの感性でそれらの調整が簡単にできてしまうワケである。
こういう“理屈は簡単でもやっている処理は恐ろしく高度”…なんてソフトを作ってしまう辺り、実に凄いソフトでおそらくこれは言葉ではどうあっても説明できない部類のものである。
しかし、やっている事は常識的なものであり、今までこの手のソフトが無かったのが不思議なほどである。
詳しい内容については公式サイトを見てもらったほうが早いかもしれない。
プロペラヘッド Record 公式サイト
http://www.propellerheads.jp/products/record
とにかく可能性が広いソフト。
Reasonとの連携も可能で、今からが楽しみなソフトである。