発売日に購入したドラクエIXだが、ようやく本日メインシナリオをクリアした。
かかった時間は85時間超。
かかりすぎだろと思われるかもしれないが、実はこの85時間の40時間近くは寝落ちの為の時間。朝起きるとドラクエの戦闘BGMが鳴り響いていた…なんて事が多発していた。
なのでクリア時間は多分45時間弱といった所。
短くはないが、長すぎる事もないクリア時間ではないかと思う。
メインシナリオは主人公の守護天使が世界の異変の原因を追及しつつ、女神の果実を集めて、天使の長年の悲願を達成する…という主目的。もちろん、そこに行き着くまでにいろいろな緩急があるわけだが、シナリオ的に言えばそんなに長くない。
発表から発売までに時間のかかったドラクエIXだが、シナリオで時間がかかったという事ではなく、あくまでもシステム的な部分で時間がかかったのだろうと思われる。
前にもこのBlogでドラクエIXのシナリオの事について書いたことがあるが、今回はクリアした事を踏まえて再度ドラクエIXのシナリオについて考察していきたい。
ここからはネタバレが若干入る可能性がある事を先に言っておく。
ドラクエIXの世界観は天使がシナリオの主体を占めるものである。
星空の守り人というサブタイトルでもある程度の予測がつく人もいるだろうが、まんまその通りである。
だが、このドラクエIXの天使という存在は、日本で一般的に言われている天使という存在とはかけ離れた存在だ。
日本で一般的に言われている天使とは、ヘブライ系宗教を主体とした宗教上の天使に基づくもので、神秘思想家偽ディオニシウス・アレオパギタの著作『天上位階論』に記載されている天使を指す。
つまり天使には9つの階位があり、上位三隊、中位三隊、下位三隊で各々三階位存在し、有名な四大天使がそれらを統括しているという図式で成り立つ天使である。
ドラクエIXで登場する天使は、この図式に全く当てはまらない。これは登場する天使の名という意味でなく、まずその天使である事の戒律という部分で全く一致しない。
というのは、ドラクエIXに出てくる天使は、絶対的な戒律、というかシステムの中に存在する。その絶対的な戒律というのが「下位の天使は上位の天使に逆らうことができない」という事だ。
ゲーム中、しかも序盤にその事はイザヤールという天使から主人公に語られるシーンがある。
しかし『天上位階論』をはじめとする一般に天使といわれる存在の物語を読み解くと、この「下位の天使は上位の天使に逆らうことができない」という図式は全く成り立たない。
理由は単純で、聖書などで天の大戦が起きたとき、大天使ミカエルが天使をまとめ、ルシファーに対抗するという下りがある。ルシファーは第八階位の大天使よりもずっと上位の第一階位である熾天使であるから、もし上位天使に逆らうことができなければ、まずこの下りはあり得ない話という事になる。
また、ドラクエIXでは堕天使という存在が実に稀な存在として描かれている。堕天使とは、天使の戒律を破ったものが天使から堕ちる事で堕天使となるとされている。つまり、お坊さんであれば破戒僧である。
この堕ちるという行為はいわゆる堕落の事で、悪の道に進んだ天使が堕天使となると考えてもよいだろう。
宗教上で言われる天使は、意外と沢山の天使が堕天していると言われている。詳しい事はその筋のサイトに任せるが、天使には許されない自由意志によって堕天している事が多いのである。
ところがドラクエIXでは堕天した天使は私が知る限り一人だけである。
まぁ、これは恐らく子供向けのシナリオにしなければならない関係でそうなっているのだろうが、とにかく堕天する天使がいない。つまり、悪というものに対する方向性が、全ての物を巻き込んで定義されていない、という事なのかもしれない。
これはより世界観をわかりやすくする意味で間違っているとは思わないが、天使というありふれた言葉を使ったが故に、実に誤解を生みやすい結果に繋がっている。ドラクエIXをプレイする年齢層をほぼ全年齢で考えなければならない事を考えると、一般的な天使を導入するのは難しかった、という事だろう。
この天使という存在の扱いと同様に非常に残念な存在なのが、ガナン帝国である。
ガナン帝国はかつて全世界を恐怖で支配するほどの帝国だったにも関わらず、その痕跡が恐ろしいほど少ない。
ナザム村とドミールの里で、帝国の歴史的痕跡が(シナリオ上で)見て取れるが、それ以外の土地では帝国の事は一切語られない。
全世界を恐怖で支配するだけの力をもった帝国であれば、その伝承は各所に残っていなければいけないハズ。世界観を創る側であれば、そうしないと整合性がとれない。しかし、ドラクエIXはそのあり得ない世界観を構築してしまっている。これは私的に見て大きなマイナス点である。
また、残念な存在という意味では物語序盤に出てくる黒騎士も残念な存在である。
登場した時のインパクトなどを見ると、もっと大きな意味があって然るべき存在だと思ったが、一戦した後は物語が急展開し、結果たった1セクションに登場するだけの存在でしかなかった。
存在が消されてしまったルディアノの騎士である事はシナリオ上で明かされるが、問題はこのルディアノという国が何故消える事になったのか? という事。セントシュタイン城での歴史書クエストで歴史的物語が一部存在するが、それも明確な何かを示しているわけではない。
いろいろな事から推測するとガナン帝国との関係が予想できるが、それに関してシナリオ上では一切語られない為、推測の域を出ない。折角おもしろそうなシナリオソースなのに、推測の域を出ない時点で、現時点ではドラクエIX正史とは言えないのが残念でならない。
また、このよく分からないという部分でもうひとつ浮上するのが、ベクセリアの町の西にある“ふういんのほこら”である。
ここは“名も無き王”の墓らしいのだが、その名も無き王というのが、どこの国の王なのか、そもそも国王なのかもわからない。この疑問とガナン帝国を結びつけるのは現時点では難しいが、ガナン帝国が何らかに関与しているとすれば、物語はもっと拍車がかかって面白くなっただろうと思われる。
以上、クリア直後のシナリオでいろいろ考察してみた。
ネタバレ的要素も多数あったと思うが、ドラクエIXはこれで終わりではなく、追加シナリオでいろいろなストーリーが明かされていく事になっている。そのクエストの事をストーリークエストといい、既にいくつかが配信されている。
このストーリークエストで、上記の私が指摘した部分が補完されるとするならば、ドラクエIXはストーリーとしても及第点になるかもしれない。
しかし、それはあくまでもWi-Fiを使って配信クエストを受けての話であり、最初からそのままプレイする事で得られるシナリオで物語が完結しない以上、ドラクエIX正史と呼んでいいものか判断に迷う部分でもある。
Wi-Fiで追加シナリオをプレイしない状態であれば、ドラクエIXのシナリオはドラクエV~天空の花嫁~には遠く及ばないし、さらに言えばドラクエⅢ~そして伝説へ…~には到底及ばない。
グラフィックや音楽、システムは歴代ドラクエシリーズから格段の進歩を遂げたが、RPGの基本とも言えるストーリーで劣るようであれば、名作とは決して言えない。
Wi-Fiで補完してようやく及第点だとするならば、ドラクエIXは名作シリーズの一つという位置づけを逸脱する事はないのかもしれない。いや、言い方を変えれば、未完の名作となるのかもしれない。
最後に。
ドラクエIXのシナリオを酷評する人がいるが、全年齢対応であり、社会的影響力があるという事を考えると、この作りは実に無難な作りであり、残念なのはその世界観の薄さのみである。
天使と堕天使の話で先が読める…なんてのは、昨今のRPGやコンテンツを知り尽くした人であれば誰もがそうだろうが、小学生の低中学年を対象としなければならないとするならば、この程度に留めておく方が夢というものである。
子供向けコンテンツという性格を考えて、私は駄作だとは思わない。
ただ、一歩詰めが足りないとは思う。
残念な作品である。
ドラクエ9最新情報サイト
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「ドラクエIX 解」が出たりしてw
私はIXをプレイしてないし、ドラクエIV以降は離れてしまったので推測でしかありませんが、話を聞く限り今後の為の伏線じゃないかと思いました。
色々設定だけ残しておけば続編やスピンオフを作れるし。
…まぁ、それで本編が薄くなったら本末転倒ですがw
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問題は、ドラクエIXがどこまで配信データでおもしろいコンテンツを提供できるか? だと思います。
ホントの事を言えば、シナリオやアイテムだけでなく、機能的に拡張する部分も残されていればソフトの寿命はもっと長くなると思います。
しかしながら、多分それはないでしょう。
今後配信されるのは追加シナリオと追加アイテム、あとは歴代キャラがリッカの宿屋に泊まりに来るという追加要素だけでしょう。とても拡張システムとはいえないものばかりです。
ま、スクウェアエニックスはそれでも今回の追加配信データに満足しているハズです。
この追加配信データの存在によって、中古市場への流出を半分に阻止できたという事ですから。
ただの抑止力として配信データを使っているとするならば、やはりドラクエIXは名作とは言えないのかもしれません。
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