GoogleがGoogle 日本語入力というサービスのβ版を公開した。
Googleが絡むと「インターネットを活用した日本語入力」というイメージがあるが、半分アタリで半分ハズレ。
構造としてネットワーク経由での変換ではなく、辞書や変換エンジンはPC側で持っているため、オフラインでも利用できるようになっている。
単語辞書は、Webから機械的・自動的に生成することで、新語、専門用語、芸能人の名前などを網羅的に収録しており、高い変換精度を実現するために、Web上の大量のデータから統計的言語モデルを構築、変換エンジンを構成している。
要するにネットワークによって言語を使用している人達からデータを取り、統計的な言語モデルを作り上げてそれを変換エンジンに利用しているという事のようだ。
このGoogle 日本語入力が完成した背景には、Googleの「もしかして」機能の存在がある。
Googleの「もしかして」機能のソフトウェアエンジニアである工藤拓氏は日本語の誤変換に起因するスペルミスを「もしかして」のシステムが高い精度で修正していくことから、Google 日本語入力の可能性を確信したという。
たしかにGoogleの検索でタイプミスをした場合でも、検索結果では可能性として高い精度で目的の語句を検索している。詰まるところ、そのシステムで入力における誤変換やタイプミスを検出する事ができるという事は、同時に入力システムとしての活用も可能なのは言うまでもない話である。
このGoogle 日本語入力が登場する事で、もっとも被害を受けるのはジャストシステムだろうと思う。
ジャストシステムは、現在の日本語入力プログラムの最大手ソフト“ATOK”を擁する会社だが、このATOKの変換精度の高さはMicrosoftのMS-IMEとは比較にならず、私も長年利用している。というか、日本のライター稼業の人でATOKを使用していない人の方が少ないのではないだろうか? と思えるほど、ATOKはデファクトスタンダードなソフトである。
ATOKの最大のポイントは、その変換精度の高さだが、もちろんタイプミスや誤変換に関しても予測変換してくれたりする機能は搭載している。
しかも辞書機能も統合されており、広辞苑や英和/和英辞書などと連携し、変換する語句が正しい文字なのかどうかを即座に知る事もできる。
また、専門辞書も用意されており、入力するという行為をあらゆる角度からサポートしてくれるため、一度ATOKを利用してしまうとMS-IMEには戻りたくなくなるぐらい便利なソフトと言える。
Google 日本語入力は、このATOKの機能のウチ、タイプミスや誤変換の予測変換という部分で真っ向からぶつかる性能を見せる事になる。
辞書機能に関して、どういった形でアプローチしてくるかはこれから先の話になるだろうが、少なくともGoogleの「もしかして」機能の正確さはATOKの同機能よりも上を行く性能を持っていると言える。
しかもGoogleは基本的には無料ソフトで展開してくるため、ATOKのビジネススタイルを根底から覆す可能性がある。
ATOKも現在では月額300円から利用可能というプランも存在するが、無料利用ができるソフトが相手では太刀打ちできないのではないかと考えられる。
このGoogle 日本語入力の話題で、Twitter上でホリエモンこと堀江貴文氏は以下のようなコメントをつぶやいている。
「それが本当だとしたらこういうのはインサイダー取引にあたるんでしょうかね? QT @ykatou
ホラー RT.@tabbata グーグル日本語入力のリリースの情報を掴んでいたのでしょうかねw RT @gogatu: そういやジャストの創業者、最近役員辞めて株売りまくってたよな…」
もしコレが本当ならインサイダー取引になるだろうと思うが…立件するのは難しいだろうと思う。
また本当だとするならば、ジャストシステムの創業者も既にGoogleとは戦えないと判断したと言う事にもなる。
個人的にはATOKはとても優秀なソフトだと思うし、これから先も存続して欲しいとは思っている。
有効なサポート辞書も多いし、何よりその変換精度の高さ、そして個人に対しての学習機能など優秀な部分も多い為、私は利用し続けていきたいと思っている。
1年に1度パッケージを購入するにしても6,000円程度で購入する事ができるワケで、もし2年に1度のパッケージ購入なら3,000円/年という事になる。
これを高いと言ってしまったら、いくらデフレといっても言い過ぎのように思えてしまう。
Google側からすれば自分達のリソースをうまく次の展開に持っていったというだけの事かもしれないが、ジャストシステムからすれば悲劇もいいところである。
まぁ…このまま行けばGoogle 日本語入力の利用者が続出する事になるだろうなという事はなんとなく予測できる。
あとはATOKが存続してくれる事を祈る限りである。
Google 日本語入力(BETA) ダウンロードページ
http://www.google.com/intl/ja/ime/