NTTが来春あたりに光回線サービスの利用料を大幅に引き下げる方向で検討しているらしい。
総務省は2015年までに日本の全世帯にブロードバンド回線を普及させることを目指しており、NTTには回線価格の引き下げ要請を行っていた。今回はそれに応える形になる。
現在、NTTが提供するBフレッツ(戸建てタイプ)は機器利用料を含めて月額5,460円の定額制で提供しているが、今回の引き下げで、新たに基本料で一定量まで利用でき、一定量を超えた段階で使用量に応じて料金が加算される従量制を導入する方向で検討しているらしい。基本料を安くするには従量制がもっとも簡単な選択という判断なのかもしれない。
ただ、今回の報道には一つの落とし穴があるのではないかと私は思っている。
というのも、今回のこの発表では“光回線サービスの大幅値下げ”と謳われているが、前述したように安い基本料金を提示するために従量制の導入を検討しているという話であり、従量制であれば基本料金は安いという事に他ならない。つまり、定額サービスの基本料金が大幅に下がる、とは言っていないのである。
もっとも、発表された文面では従来のサービスにも値下げの可能性はある。
ただ、大幅値下げはあくまでも従量制での話、と考えていた方がいいかもしれない。
ま、そうそう上手い話はない。
この値下げでブロードバンド回線の普及へとつながればいいが、実際は課題もある。
P2P通信によって増大したデータ通信によってインフラはパンク状態で、一部プロバイダでは帯域制限を設けるという手段に出ている。
もちろん一部の利用者がほとんどの帯域を使っている現状では、そうした帯域制限も必要とは思うが、少なくともビデオ通話を余裕でカバーできる送受信帯域くらいは確保して欲しいところである。
日本という国が世界に向けてIT先進国であり続けるならば、この課題を何としても解決する必要がある。
モバイル分野もまた然り。
全世界にiPhoneが爆発的に広まった際、定額制を廃止する国が増えた。増大するパケット通信を支えるインプラに問題が起きたからだが、そこで日本も従量制へ…となると、日本は自らIT先進国を放棄した事になるのではないかと思う。
今のところiPhoneの通信事業者であるソフトバンクは未だ定額制を採っているが、Androidスマートフォンの登場で全キャリアでまた様子が変わってくる可能性がある。
少なくともパケット通信は爆発的に増大する筈だ。
これらをどう解決するか、で、日本が世界に一歩リードし続けられるかが決まるような気がしてならない。
ま、総務省の思惑をどこまでNTTが受け入れるか?
ブロードバンド普及率が大幅に向上するかどうかは、まずそこに鍵がある。
もっと利用しやすい価格帯に来れば、ADSLからFTTHへと切り替える人も増えるだろうし、帯域の心配を全くしなくてもよくなれば、その時ホントの意味でもブロードバンド大国になる…少なくとも、私はそう思っている。
ま、ここまでくるとNTTだけの話ではないのだけれど…。