昨日、エルピーダメモリが次世代メモリである“ReRAM”(高速不揮発性抵抗変化型メモリ)の開発に成功した、と発表した。
NEDOとの共同研究事業、及びシャープ、そして独立行政法人産業技術総合研究所、東京大学との共同実施として開発しているもので、今回は50nmプロセスを使用して、64Mbitのメモリセルアレイ動作を確認したという発表であった。
そもそもReRAMとはどういうものなのか? というと、電圧を加える事で抵抗値が変わる材料を素子に利用し、高抵抗状態で0、低抵抗状態で1としてデジタル記録するメモリになる。
このメモリの最大のメリットは次世代メモリの中における総合バランスと言えるのではないかと思う。書き込み電流量が比較的小さく、微細化や大容量化の可能性が高く、そしてDRAM製造ラインの流用が可能、といういいとこ取りをした結果とも言える。
他にも相変化メモリ(PCM:Phase Change Memory)というメモリ技術もあるが、これは微細化に問題があり、またヒーター加熱によって相変化を起こすのだが、その加熱を維持する為に書き換え電流を下げられないという問題もある。そのため、エルピーダでは研究を断念したという経緯がある。
また、磁気メモリ(MRAM)というメモリ技術もあるのだが、こちらはMR比(磁気抵抗の違いの大きさ)を大きく取れないことが問題であり、そのために大容量化が難しい。最大容量で1Gbitまでは達成できるようだが、DRAMと同等以上の記憶容量は実現しにくいようだ。
この結果で言えばReRAMを選択する理由は一目瞭然だが、他にも理由がある。
それは抵抗変化を起こす記憶素子の材料としてエルピーダがDRAMで使用している酸化ハフニウム(HfOx)系(DRAMセルのキャパシタ絶縁膜ですでに実用化されている)が使えるという事である。これによって生産ラインがほとんど流用可能らしい。
今は50nmプロセスだが、今後は30nmプロセスで製造し2013年には製品化という流れを想定しているようだ。
そうなれば、2014年には不揮発性メモリを持ったPCが登場してもおかしくない。いよいよ、シャットダウンしても次回起動時にそのままの情報で即座に起動するPCが現実となるかもしれない。
ま、それでもWindowsの場合は一定の間隔で再起動しないといけないだろうから、HDDの遅さを完全カバーするには至らないのかもしれないが…。
DRAMのメインメモリの代わりだけでなく、ReRAMを利用したSSDのようなストレージが生まれれば、それはそれでまた面白い事になると思う。
SSDは結局の所HDD並になったとは言われているものの、基本的には繰り返し書き込みに弱い記憶媒体だが、ReRAMはDRAM並の書き換え耐性があり、そのアクセス速度も10nsと非常に高速なワケで、そんなのがメインメモリとストレージに使われるようになれば便利この上ない。
いや、ひょっとしたらメインメモリの必要性そのものがなくなるかもしれない…と考えるのはまだ早計だろうが、未来にはストレージ直アクセスのOSという道も開けるかもしれない。
今後もReRAMには期待したいところ。
エルピーダにはぜひがんばってもらいたい。