1月8日~11日(現地時間)、ラスベガスのコンベンションセンターで“2013 International CES”が開催される。そろそろ始まるか、という感じだろうか。
IT関係や家電関連の展示会として世界最大規模を誇るイベントだが、それだけに面白いものが発表・展示される。
その中でNVIDIAは“Wayne”のコードネームで開発されたモバイルプロセッサ“Tegra 4”を発表した。前世代コアの“Tegra 3”はARMアーキテクチャのCortex-A9ベースだったが、今回はCortex-A15をベースにし、統合されるGeForce GPUを72個搭載した新世代モバイルコアである。
その処理能力はTegra 3と比較してWebブラウジングで約2.6倍、グラフィック能力では6倍の性能に引き上げられている。それでいて一般的な利用において消費電力はTegra 3より45%低くなっているというから、その進化には驚きである。
そのTegra 4を搭載したゲーム機をNVIDIAが発売するかもしれない、という情報が出た。
今まで隠されてきたプロジェクトであり、驚きでもあるが、よくよく考えれば可能性は十二分にあった話である。
“SHIELD”と名付けられたその筐体は、コンシューマ機のコントローラーに液晶画面が搭載されたようなスタイルで、Retinaディスプレイ並みの720pマルチタッチ対応5型ディスプレイを搭載している。
他にも独自の低音ブースト機能を搭載したオーディオ機能や、HDMI出力、microSDスロット、USB、ヘッドフォン端子などAndroidデバイスとしてフルI/Oを搭載し、一般的なAndroid OSで動作するもののようだ。
Android OSであるため、Google Playストアが利用可能であり、NVIDIAが提供しているTegraZoneにもアクセスすることができる。
Android OSでPlayStationのゲームが動く…とSCEが展開したものと酷似していると言えなくもないが、そのハード性能は現状で最強と考えて間違いない。
だが、このSHIELDの注目ポイントは、そうしたハードウェアスペックではないと私は見る。
今回の発表では、KeplerベースのGeForce GTXを搭載したWindows PCにリモート接続して、ゲームをPC側でレンダリング、それをSHIELDでストリーム再生しながら楽しむ機能がある事が公開された。
ストリーミング再生と聞くと、動画? と思うかもしれないが、そうではない。レンダリングデータをストリーミングするだけであるため、ゲーム処理はTegra 4でする事になる。要するにCG部分だけを外部で処理するという事だ。
この事そのものは別に新しい技術という事はない。
ブラウザゲームも似たような事をしているし、単にそのプログラムの格納先および処理先がクライアント側にあるのか、それともサーバ側にあるのかの違いでしかない。
これらがAndroid OSというモバイルに適したOSで動作するゲーム機というだけの事であり、SHIELDオリジナルの技術機能ではないという事である。
今更モバイル機を出して任天堂とSCEにケンカを売るのか? と単純に考えればそうなるが、縮小していく自作PC市場を考えれば、NVIDIAとしては新しい市場の開拓をしていく必要があるわけで、GPUを製造しているNVIDIAが目指す方向としては、この方向性があっても不思議ではない。
このSHIELDがどのようなビジネススタイルになるのか等は一切語られていない。
それどころか、本当に発売されるのかどうかもまだ分からない。
だが、NVIDIAがこのまま何もしないとは思えない。何か秘策をもってこのSHIELDを市場投入してくる可能性は十二分にある。
個人的には、NVIDIAがこういったコンセプトのモバイル機を発売し、任天堂とSCEに対して宣戦布告し、市場により大きな競争を引き起こしてくれれば…と思っている。
市場に投じる石は大きければ大きいほど波紋を呼ぶ。
そこから生まれた競争でより技術が進化するのなら、ぜひその流れをNVIDIAには起こしてもらいたいものである。