PS4が発表されてしばらく経つが、その直接のライバルとなる次期Xbox“Xbox One”の概要が発表された。
発表された、と言ってもまだ分からない部分が多分にあるわけだが、それについても来月行われる展示会等で詳細が発表される事になるだろう。
今回の発表でハッキリわかった事は、PS3 vs Xbox360の時の互いコンセプトが完全に逆転した、という事である。
PS3はHomeエンターテイメントの中核マシンとして企画されたのに対し、Xbox360はゲーム機としてより高みを目指したものだったが、今回は全く逆。PS4はゲーム機としての面白さを拡張してきたのに対し、Xbox Oneはホームエンターテイメントの中核マシンとして発表された。
コンソールマシンとしては対照的である事は結果として良い事とは思うが、ココからお国柄が出てくるのではないかと私は思っている。
今回のXbox Oneが従来機と全く異なるのは、Microsoftが現時点で持っているクラウドサービスを内包しているという事。ブラウザのInternet Explorer、検索エンジンのBing、コミュニケーションツールのSkypeと、それぞれがシームレスに繋がる事で、Xbox Oneは明らかにPS3の時よりもホームエンターテイメントの中核たる機能を備える事になる。しかも今回はTVのセットトップボックスとしても機能する為、エンターテイメントのほとんどをXbox Oneでコントロールできる。
また、それらのインターフェースとして進化したKinectを使用する事で、直感的な操作を実現しようとしている。これは米国人からすれば理想的なスタイルになったと言える。
こうした統合的とも言えるエンターテイメントの中核機という位置づけは、はたして日本の場合受け入れられるのか?
私が思うに、PS3は機能として不十分だった為に中核機になり得なかったと言われていたが、本当の所は日本人としてエンターテイメントの中核機そのものが不要だったのではないか? 或いは、そもそもエンターテイメントの中核機という意味そのものがよく理解されなかった、という事ではないかと思っている。
もしそうなら、今回のXbox Oneは日本では受け入れられない(売れ入れられにくい)可能性もあり得る話だ。
だが、一方でこの中核機構想は今の時代なら受け入れられるかもしれない。現在はオーディオもPCオーディオという言葉が生まれるほどコンピュータと家電が融合し始めている事実がある。そう考えれば受け入れられる要素は十分ある。ただ、その場合であっても新しいOSは受け入れられにくい。それは今までの歴史が物語っている。Xbox Oneが有利なのは、エンターテイメント部分を統括するOSがWindowsカーネルだという事。それで時代がガラリと変わる可能性も考えられる。
あと日本にはKinectを利用できる環境が少ない。住宅環境が米国とは明らかに異なるからだ。それに、そもそも言葉や身振り手振りで操作を行うインターフェースは日本人向きではないようにも思う。
時代と共に人種も変わっていくが、日本人という枠で考えた時、大多数の人がアメリカンスタイルを受け入れられないように思えて仕方が無い。例えば、iPhoneに搭載されているSiriにしても、日本人がバリバリ活用しているシーンを私は見たことがない。docomoにも“i コンシェルジュ”という機能がありCMもバンバン放送されているが、街中で使っている人を見た事がない。
だとすると、今回のXbox OneのKinectを利用したインターフェースは日本人には不向きのように思えてならない。便利かもしれないが、それを大手を振って使用する人はいないように思うワケである。
こうしたお国柄や国民性を考えると、今回SCEが判断した方向性は日本人には受け入れられやすいと思う。逆にXbox Oneは実にアメリカンスタイルである。
この差がどのように出てくるのか、ちょっと見物ではないかと思う。
と、これだけ方向性が異なるPS4とXbox Oneだが、その中身はかなり似通ったものになる、と言われている。
発表された話だと、8コア
で8GBのメインメモリを持っている、という事になっている。このスペックから考えるに、x86系のAPUを中心としたシステムと考えられ、この時期に
GPUを内包したCPUを製造しているベンダーが限られる為、両者共にAMDコアを使用することが簡単に予想される。
PS4はJaguarコアを使用してのカスタムチップである事が既に公表されているが、おそらくXbox Oneも似たようなコアになるものと思われる。
ただ、ローンチタイトルを開発しているプログラマの話だと、PS4とXbox
Oneでは演算パフォーマンスでPS4の方が高速処理できる、と言っている話が以前にネットで噂されていたため、Xbox
Oneは前世代のBobcatコアを使用している可能性も否定できない。
また、搭載される8GBというメモリにしても、PS4とXbox
Oneで大きく異なる。PS4はより高速通信可能なGDDR5を採用しているがXbox
OneはDDR3を採用している。Microsoftはコストを抑える為にDDR3を採用したと言えるが、ここでメモリ帯域に大きな差が生まれ、それが動
作速度に反映している可能性がある。
ただ、Xbox OneはGPUに使うメモリに対して何ら対策をしていないとは言い切れない。前機種のXbox360でもそうだったが、今回搭載するコアのトランジスタ数が5 Bilion(50億)トランジスタだと公表しているのも、その理由の一つである。
この50億というトランジスタ量は普通に考えてAPUだけでこの数になるハズがない。おそらくPS4がカスタムチップとしたようにXbox
Oneもカスタム化して、APU内に何かしらの追加機能を持たせている可能性が高い。考えられるのはGPU用のメモリを内包させている可能性が高いという
事。前述したようにXbox360でも似たようなアプローチがあったからだ。もしその予想が本当だったとしたら、問題はそのメモリへのアクセスがGPU側
のみで可能なのか、CPU側もアクセス可能なのか、という事だ。もし、CPU側がアクセスできないとなると、CPU側のメモリ帯域がDDR3準拠となるた
めボトルネックになる可能性がある。PS4が高速動作できる理由はこのメモリ帯域を稼ぐ目的でGDDR5を採用しているという事であり、その分だけ有利に
なると考えられる。
またXbox Oneにおいて一つ面白い仕組みがある。それは3つのOSが動作しているという事である。
ゲーム向けのXbox
OS、汎用のWindowsカーネル、Kinectなどをコントロールするデバイス管理OSの3つである。デバイス管理OSはバックグラウンドで動作する
ものであるから、PS4にも似たような仕組みがある。そう考えればPS4も同じような仕組みで動作しているとは思うが、PS4と違ってXbox
Oneが強いのはWindowsカーネルで動作するという事。アプリケーション開発において、これほど強みのある要素はないと言える。
実際、
Microsoftのカンファレンスでは、OSの瞬時の切り替えなどもデモされていたようだ。それらは仮想化でOSを切り替えると見られるが…皮肉なこと
にこの仮想化でOSを切り替えるというのは、PS3の初期にLinuxを動作させていた事と一致する。本当にPS3がやろうとしていた事を実現している感
じである。
もし、Xbox OneのコアがAMDのAPUであるとして、開発言語がx86系だったとして…そう考えると、何となくだがXbox OneのソフトがPS4で、PS4のソフトがXbox Oneで動作しそうな感じに思えるのは多分私だけではないハズだ。
エミュレーションさせるにしても、かなり簡単に動いてしまうのではないかと思う。何しろ基本的な中身が全く同じになるからだ。
もちろん、そこにクラウド、つまりPS4ならPlayStation Networkであり、Xbox OneならXbox
Liveだが、それらに繋がって動作するソフトには互換性は期待出来ないが、それでもプログラムベースでの動作は、出来ない事はないと言える。それはあた
かもIntel MacでWindowsがいとも簡単に動作するのと同じ感覚といえる。
もっとも、メーカー側ではそれを容認しないし、それを実現する事そのものは違法になるだろうが、世界中のハッカーが挑戦しそうな話ではないかと思ったりする。
それほどまでに、PS4とXbox Oneは似ている、という事になるワケだが、ゲームメーカー側からすれば、クロスプラットフォームでの開発をしているワケだから、似ていようが似ていまいがあまり関係がないのかもしれない。
何はともあれ、来月くらいには両機種共々、もっと詳しい内容が見えてくるハズだ。
情報としては先行したPS4だが、発売時期はかなり似通ってくる。
この2強の戦いはこれからが本格スタートだと言えるだろう。