Wii版とWii U版が既にサービスインしている、国民的RPG“ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン”だが、先日Windows版が9月26日に発売される事が発表された。
コンシューマ機からWindows版という方向は今までもなかったワケではないし、その逆パターン、つまりWindows版からコンシューマ版という方向も今までいろいろあったワケだが、ドラクエもそれに倣った形になる。
このWindows版への展開は、単純にユーザー獲得数を拡大するという目的に他ならない。おそらくWii Uの普及を当初は見越していたところが、思った程ハードの普及が進まない状況が続いているため、折角のサービスをこのまま特定ユーザーのためだけにしておくのはもったいない、という事なのではないかと思う。
私が思うに、今後のオンラインゲーム、特にソーシャルとは違う単体で展開しているサービスは、Windowsを併行展開していくものが増えてくるように思う。特にPS4やXbox Oneはそのアーキテクチャもx86ベースになるため、そうした動きが顕著に表れるように思える。
で、肝心のドラクエ10だが、始まったベータテストをやってみた。
現在はテスト期間が一度終了してしまっているため、ログインする事はできないが、その時の状況を今更ながら書き記してみる。詳しい話は他サイトを当たって欲しい。
最初に、このベータテストを行うまでがちょっと難解だった、と行っておく。最初にベンチマークプログラムをインストールして、そのベンチマークの結果を見てからでないとベータテスト参加申請ができないようになっているのだ。
ベンチマーク終了時に出てくるメニューの中に、ベータテスト用のリンクがあり、それをクリックすると特設ページへと飛び、そこでスクウェア・エニックス IDを使ってログイン、プレイ申請をする。
申請後にベータテストプログラムのダウンロードページの連絡が来るのだが、ここで一つ苦言を言うなら、そうしたベータテストプログラムのサーバをNVIDIA等のサーバに持っているのは良いとして、そのダウンロードページ自体が、ベンチマークプログラムのダウンロードページと酷似しているため、ベータテストページでなくベンチマークプログラムのページと誤解してしまう可能性があるという事である。
私はこの誤解の為に、ベータテストプログラムをダウンロードするまでにちょっと手こずってしまった。まぁ…ちゃんと読めば自分が間違っている事に気づくのではあるが、そのあたり、間違えないような作りにして欲しいと思った。単純にダウンロードボタンの色を変えるとかそういう事で、見間違えというか勘違いをなくすことはできるのだから。
最初のベンチマークプログラムだが、私の環境では1920×1080のウィンドウモードで最上位の結果にはならなかった。
私の環境はIvy Bridge 3770KとGeForce GTX 670、メモリ32GBという構成だが、これでもスコアで9700ちょっとで最高レベルにならず、まだ上があるのか…という感じである。
もちろん、私の環境よりずっと上の環境を持っている人もいるのは当然だが、もしこのベンチマークで最高レベルにするには、Sandy Bridgeの6コアにGeForce GTX 680以上もしくはSLI構成とかそういう内容でないと最高レベルにはならないのかもしれない。或いはデュアルGPU以上が最高レベルのキーになっているのかもしれない。
もちろん最高レベルでなくても、十二分な動作状況にあるため、私の環境では綺麗な画面でのプレイは可能である。実際ベータテストプログラムインストール後にプレイしてみたが、サクサク動くを事を確認した。
今まではコンシューマ機でしか見る事のなかったドラクエの世界が、Windows上で再現されている事に違和感を憶えるが、その違和感もすぐになくなる。
プレイしてしまえば、あとは普通のMMORPGと何ら変わる事のないものに見えてくる。ただ、そこはドラクエ、初心者にもわかりやすいインターフェースがいろいろと用意されている。ただ、それが特別かというとそういうワケではなく、最近のゲームでは普通にできる事が標準実装されている、といった感じである。
ベータテストという事もあって、キー操作のマニュアル等が一部不備がある感じで、私が最初に躓いたのはチャットの仕方である。
シフトキーを押すとチャット開始になるのだが、それが分からない。ラグナロクオンラインだとエンターキーを一度押すとチャットモードに入ったりするのだが、まさかシフトキーだとは思わず、チャットを開始できないという事があった。本サービスが始まる際には、そうした操作系の説明は改めて必要だと思う。
それとこれはもっと前提の話になるのだが、Windows版もキーボード&マウス以外にジョイパッドが使用できる。その際の視点移動操作は右アナログスティックを使用する事になるのだが、このアナログスティックが一部コントローラーで上下左右が入れ替わる現象が起きる。これはドラクエに限らず、他タイトルでも起きる事で、その調整が最初のコンフィグでできるのだが、実際の上下左右の操作をリバースするかしないかの設定が、最初の段階でできないのが気になった。
ベータテストの段階で細かい事を言っても仕方が無いのかも知れないが、ドラクエがカバーする年齢層を全てサポートするつもりなら、そうした部分は正式サービスの際にはちゃんとしておかないとマズイ部分と言える。
そうした問題もありながらではあるものの、プレイそのものは問題なく動作している。右アナログスティックの視点移動の速度指定ができるともっと良いという気もするが、概ね快適にプレイできる。
戦闘にしても、会話にしても従来のドラクエ然としたプレイができる為、絶対的な安心感がある。そこはシリーズの共通感性として貫き通されているため、これができているだけでも及第点と言えるのではないかと思う。
ドラクエはオンラインよりオフラインが良い。
そういう声があるのも事実だ。
かつてニコニコニュースに押井守監督がオンラインのドラ
クエはキライだと言っていた(http://news.nicovideo.jp/watch/nw386574)が、この押井守監督の言い分は言い分と
して、それと相反する意見を持つ人の中にも、オフラインが良いという人がいる。
理由は人それぞれだが、作品が持つイメージをどこに持ってくるか
で、オンラインが適するのか、それともオフラインが適するのかという色が決まってくる。作風によっては、どちらも適するなんてものもあるが、人の意思が自
由に入り交じり、そこに善悪があり、現実ならばここに法がある、となるのだが、ゲームだとここに抑制力のないモラルしかないため、作風によって適する、適
しないが分かれるのである。
現実世界は法という絶対的なものがある。無法地帯ももちろんあるが、少なくとも治安がある程度行き届いている地域には法があるのが通例だ。この法を犯す事でデメリットが生じるから、現実世界では善悪を超えてありとあらゆる人々が共存できる。
だが、ゲームの世界では法という抑制力がなく、あるのは参加者の内側にあるモラルだけ。しかもそのモラルの価値観は人それぞれ違うのである。
だから作風というものが重要になる。ドラクエは今までの作品でその世界観、つまり作風をオフラインで構築してきた。オンラインになった際、構築された世界
観にあったモラルを人それぞれが維持する事を、プレイヤー達は期待するしかない。中には、そのモラルを逸脱する人も現れ、そうした人達が悪と言われたり、
異端と言われたりする事態が発生する。それぞれのブレイヤー達がその人達を許容できている間は良いが、許容できないレベルになると、運営側はここで現実世
界の神以上の強制力を発揮し、大多数の人を守らなければならなくなり、その守るという行為が、問題視される場合も出てくる。
作風から逸脱した行動を抑制する意味でも、それがプレイヤー個人の中に収まりきる話になるのがオフラインである。オンラインは、ある意味強制力のない現実世界と同じであるから、発生する問題を収集させる際に、いろいろな歪みを生む。
こう言っては何だが、ドラクエ10は善良なるモラルを持ってのプレイしかできないオンラインゲームだと個人的には思っている。私の中にあるドラクエの世界観が、そうしろと囁くのである。多分、ほとんどの人が同じモラルを感じるのではないかと思う。
考えてみれば分かるが、イキナリ街中(あるいは街を出てすぐの所)でプレイヤー同士が血みどろの殺戮劇を繰り広げていたとして、それはドラクエの世界観と呼べるだろうか?
ドラクエの中にある悪意とは、世に存在する絶対悪のみであり、人が持つカオス的な悪意とは異なる。そうした共通認識を持てる人しか受け入れない、受け入れられないというのが、ドラクエ10ではないかと思う。
Wii版、Wii U版なら、そうした認識をある程度共通化する事ができるのだが、Windows版となると、価値観が大幅に異なる人を受け入れる事になる。
ドラクエ10は、これからが本当の環境整備の始まりではないかと個人的には思っている。