アンプとかに拘り始めると、必ずと言っていいほど通っていく道が真空管ではないかと思う。
真空管自体はアナログアンプの代表格みたいなもので、オペアンプのデジタルアンプとは相対する存在だと思う。
だが、その独特の重厚感ある音が好きという人も多く、暖かみのあるその音は現代のカリカリした音にまみれた中では特別な存在に感じられるかも知れない。
真空管アンプは高い
真空管アンプだが…ちょっと良いなと思うものは値段が高いというのが難点である。
私が好きな真空管アンプのメーカーであるトライオードなどは、自作キットでも8万円とか完成品だと10万円以下というものを見た事がないというようなメーカーである。
トライオード
http://www.triode.co.jp/
流石にそこまでのシステムは不要…という人も多いし、価格的には出せても3万円ぐらいが限度…という人も少なくはない。私もその一人。
私がDr.DAC2を購入した時も3万円を切る価格だったからこそ購入した。
PCに接続する事を大前提とするなら、本来ならデジタルアンプの方が接続性が良いハズなのだが、あえてアナログで行きたい、という人で、かつそれでも3万円が限度という人に朗報である。
PCパーツショップとして名を馳せているドスパラから、29,999円の真空管アンプ“DN-10497″が発売された。
ヘッドホンアンプも兼ねている
この“DN-10497″はヘッドホンアンプも兼ねていて、そのヘッドホンアンプのLINE OUTをそのままスピーカーアンプにLINE INしてスピーカー等に出力する仕組みになっている。
だからヘッドホンアンプ部分のみが欲しいという人には、同社から“DN-84335″というさらに小型のヘッドホンアンプが発売されている。
なので“DN-10497″はスピーカーへの出力も視野に入れている人への商品となる事に注意だ。
構造は単純。
ヘッドホンアンプ部とスピーカーアンプ部に分かれていて、一体に見えるのは外装のみ。
だから本製品を背面から見ると一目瞭然である。
スピーカー端子より上がヘッドホンアンプ部で、スピーカー端子以下がスピーカーアンプ部である。
主となる入力はまずヘッドホンアンプ部のステレオRCAピンジャックにより入力し、その左隣のLINE OUT端子より下部のスピーカーアンプ部のLINE IN端子にステレオカードで入力、あとはスピーカー端子よりスピーカーへ出力するという仕組みである。
電源スイッチは、ヘッドホンアンプ部は前面のボリュームツマミがそのまま電源となっていて、スピーカーアンプ部は背面にスイッチが存在する。
外見こそ一体型ではあるものの、全く別体のものがニコイチになっている事がよく分かる配置である。
電源も別
“DN-10497″は前述したように完全に別体のヘッドホンアンプとスピーカーアンプがニコイチで繋がっているだけの製品であるから、電源も別系統になっている。
ただ、小さなこの筐体で2つのコンセントを占有するというのは使い勝手が良くないため、本製品には2系統の出力をもつACアダプターが付属する。
二股に分かれているACアダプターで電源供給しているため、コンセントは1つで済むのである。
ただ…私もまだ明確に見ていないのだが、このACアダプターの出力はこの2つのアンプが求める電源を完全に安定供給させられるのか、そこだけが気になる所である。
オーディオは安定した電源供給が良い音の絶対条件でもあるため、この辺り抜かりはないと思うが気になる所の一つである。
ニコイチの製品ではあるものの、この“DN-10497″は実に手頃な大きさが良い。
高さ115mm(真空管部を除けば60mm)×横幅67mm×奥行き128mm(端子部除くと100mm)と、実に小型。なので小さなPCの横に置いても違和感もなく、淡く光る真空管が良い雰囲気を作ってくれる。
前述のヘッドホンアンプのみの“DN-84335″は高さが低くなるためもっと小さくなる。
小さいが、真空管を通した音が実現でき、かつ値段もびっくりするほどでもない製品。私的にはオススメできる製品である。
真空管はそれなり
そんなオススメとした“DN-10497″と“DN-84335″だが、実は真空管はあまり良いものを使っているとは言えない。
Philips 6922真空管を採用しているのだが、この真空管自体は非常に安価な真空管のようで、だからこそこの価格が実現できた…という言い方ができるのかもしれない。
非公式ではあるが…6N2 、6DJ8、ECC88、12AU7などに交換ができるようで(詳しくは不明。当然サポート外)、音楽に適した真空管へと後から交換すれば、本製品は化けるかもしれない。
真空管そのものはピンキリなので、自分にあった1本を見つけることができれば、本製品は小型で納得のいくプリメインアンプとなるだろう。
この辺り、デジタルアンプでもOPAMPを交換して音を探ったりするが、それとよく似ているように思う。…いや、逆だな。真空管でそういった交換して音を探るという事を、デジタルアンプのOPAMP交換がオマージュしているに違いない。
要は、音というものが相性なんだという事である。
最初の初期投資はそれなりになるが、音を追求したりする楽しみを持てるようなら、本製品はアリだと思う。小型化するPCファクタに合わせても無理のない大きさだし、それでいて音を追求していく事ができる…実に楽しいAV機器なのではないかと思う。
圧縮音楽をそのまま聴いている人には、ぜひちょっと良いアンプを通した音に触れて欲しいと思う。
CDはオーバーサンプリング技術でもって高音質化していたが、MDが登場した頃から、音を圧縮するようになった。持ち運ぶ事に関して便利になったが、犠牲になったのは音質だった。持ち運ぶために圧縮によって欠損した音を膨らませようというのがポータブル含めたアンプの意味であり、デジタル/アナログの区別なく、それらを通してより豊かになった音質をぜひ聞いてみてもらいたい。
あー、それとアンプを通す上で、音を再生するデバイス、たとえばスピーカーだったりヘッドホンだったりするものは、もちろんそれなりのものを用意した方がいい。というか、先にアップグレードさせるのはそちらだ。
アンプはその次という事になるが、これらが組み合わさった時、今までと違う音の世界が待っているだろう。
…私も随分とハマリこんだものである(爆)