国内で初めて単体で6TBの大容量を持つHDDが発売になった。
HGST(日立グローバルストレージテクノロジーズ)製の『Ultrastar He6』である。
ヘリウムガス封入型
6TBという大容量を確保できた背景には、回転する磁気ディスクへの空気抵抗を減らす為にヘリウムガスを利用したという事が大きい。空気抵抗を減らし、より安定的にディスクを回転させる事が出来る様になったことで、7枚ものプラッタを封入する事に成功、結果6TBという容量に繋がったようだ。
通常、空気抵抗を減らした、と聞くと、回転速度を上げたという感じに思えるのだが、そういう事ではない。
ヘリウムは空気に対して密度が1/7と薄く、抵抗が激減したようだ。
だが、このヘリウムガスが漏れては意味がないため、ディスクを格納しているユニットは完全密閉されているという。
この完全密封によって、非導電性の液体に浸した状態でも動作するようだ。
つまり、HDDの液冷化である。
昔、高橋敏也という人が『改造バカ一台』という自作PC系の記事で、無水エタノールを使った「水没PC」なんてものを企画して作っていたが、まさに無水エタノールなどで冷却できるHDDという事になる。
現時点ではあまり現実味のない液冷HDDだが、その昔はCPUの冷却ですら水冷(液冷)は現実味のない話だった。それが今ではメンテナンスフリーの水冷CPUクーラーが売られている時代てなワケで、今後HDDの液冷化キットなんてものが出てくるかも知れない。
ちなみに、この6TB HDD『Ultrastar He6』の店頭価格は、60,000~64,000円程度のようだ。
今回秋葉原の店頭に並んだのは並行輸入品という事で、国内製品が販売されたわけではない。
久々の単体容量更新
3.5インチHDDで今回6TBという容量のHDDが出たワケだが、久々に単体容量の最大数が更新された。
前回の最大容量更新は4TBで、2011年12月8日の事だった。
約2年ぶりの更新という事になる。
3.5インチHDDの容量の進化を振り返ってみると、400GBが登場したのは2004年6月にUltra ATA/100のドライブが発売になっている。
その後、1年後の2005年6月にシリアル/パラレル両方で500GBが発売され、2006年4月末に750GBが発売されている。
販売されているHDDの容量が1TBに到達したのは、2007年3月末で、2008年10月に1.5TB、2TBへは2009年2月末であった。そして4TBに達したのは前述した通り2011年12月8日。
この容量の増加の流れを見ると、たしかに6TBの容量が登場する時期はそろそろだったのかもしれないが、年々大容量化する上で技術的な問題は大きくなってきているワケで、よく順当にこの流れに乗っているなと思ってしまう。
まぁ…実は400GB以前のHDDの進化速度は今よりずっと遅かったわけで、今のように年間1TBの増加がある事自体、実は凄い事だったりするのだが。
光学メディアはどうした?
ストレージで大容量化に成功している…と考えられるのは、NAND型フラッシュメモリと磁気記録型ディスクで、光学メディアは残念ながら完全に後れを取っている形だ。
最近のノートPCでは光学ドライブがないモデルが当たり前のようになり、最近ではデスクトップ型でも外付けドライブを使用するものまで現れている。
光学メディアもホログラム記録方式で立体記録化する事で大容量化ができる…なんてのを大学などの研究で進められていたかと思うが、結局それらは未だに世に現れていない。
もう容量的に限界…とか、もう読み書き速度的に限界、と言われていたNAND型フラッシュメモリや、磁気記録型ディスクが未だその主流で、結局それに変わるものがまだ登場しないというのが今の現状である。
個人的には光学メディアという媒体はカートリッジ式にしてもっと普及すればいいのに…と思うのだが、残念な事に光学メディアではテラバイトレベルの容量はとても難しいし、ギガバイトレベルの容量だとしても、メモリカードより容量が小さくてはあのサイズでは普及するハズもない。
やはり光学メディアがこれらのデバイスを超えて普及するには、もっと大容量で、高速で読み書きできる必要がある。
そう考えると、やはり物理的に読み書きのヘッドを動かさなければならない関係でNAND型フラッシュメモリには勝てないのだろうか?
ただ、そんな光学メディアに希望はないのか? というとそうでもない、という事を言っている研究があると言う事を最後に紹介しておく。
北海道大学 研究紹介
http://optpia.ist.hokudai.ac.jp/hds/
これによると、1ディスクあたり500TB~1,000TBという容量が可能らしい。
この発表が2011年7月の事だから、そろそろ次の展開があるのだろうか?
低迷しているストレージ業界に旋風を巻き起こして欲しいものである。