岩谷産業と聞くと何を思い出すだろうか?
こんな事もしていたのか
私は、岩谷産業と聞くと、カセットガスコンロとか、カセットガスストーブを思い浮かべるのだが、元々岩谷産業は水素やLPガスといった産業ガスメーカーでもあり(というかコチラが主産業)、総合エネルギー産業をベースとした企業である。
また、それらエネルギーだけでなく、食品産業にも進出しており、他にもマテリアル事業なんてものにも進出している。
CMなどのイメージでは家庭用品などのメーカーなのかな? と思ってしまいがちだが、岩谷産業は実に多岐にわたる産業を手がけているのである。
岩谷産業
http://www.iwatani.co.jp/jpn/index.php
その中でも今回話題にしたいのは、マテリアル事業の事。
岩谷産業が、何と、蛍石を人工的に合成する技術を確立した、というのである。
何の事? と思われるかもしれないが、この蛍石は安定したものを入手するのがとても難しい材料で、人工的に合成する事ができるようになる事で得られるメリットは計り知れない。
そもそも蛍石が何に使われているかというと、高性能レンズなどでは必須な材料で、色収差の小さいレンズを作る際には間違いなく必要になる。蛍石レンズと言えば高性能レンズの代名詞みたいなところがあり、かなり重要な材料になる。しかし、蛍石の単結晶を光学材料として使用するという事はとても難しく、Wikipediaによると直系20cmの凸レンズで100万円以上の高値になる事もあるらしい(http://j.mp/ZvUYP6)。
もちろん蛍石そのものは他にも利用される事が多く、紫外線を透過する事に優れている為、集積回路の露光に使われるステッパーの光学部品に使われたりする。つまり、半導体製造でも必須になるような材料であり、今のほぼ全産業に影響を与えるような材料である。
しかし、やはり注目したいのは純粋に光学部品として使われる蛍石であり、人工的に合成できるようになった事で得られるメリットは計り知れない。
岩谷産業 ニュースリリース
http://j.mp/ZvVm08
なんでも、人工的に合成された蛍石は、天然の蛍石にありがちなバラツキがなく、より安定した性質を持つ材料を得やすくなる事を意味する。これはより大きな蛍石の単結晶を作る際には重要な要素だ。
また、人工的に合成された蛍石は天然の蛍石よりも光学特性が優れているというのも注目すべきポイント。天然資源の多い中国から蛍石を仕入れたとしても、その天然モノよりも特性が優れているとなると、蛍石そのものの価格はかなり下がってくるだろう。
この事は、カメラ好きに大きな影響を与えるようになるかもしれない。
後々には蛍石レンズを…
兎にも角にも、こうした技術を日本企業が開発した事は素晴らしい事であり、また優れた蛍石から作られるレンズが天然でなく合成で作れるようになれば、今のレンズ業界でひときわ価格競争が激化する可能性もある。
もちろんオンリーワン技術になるだろうが、それで価格が安くならない事はあり得ないと私は見る。何故なら今ではいろいろな代替技術が出てきていたり、また海外勢の技術進出もあるわけで、この技術だけで殿様商売をしてしまえば、有利な状況を作れなくなる。
おそらく岩谷産業もそのあたりはよく分かっているだろうから、得られた技術とそれに対しての恩恵を適度に見ながら展開していくだろう。
何はともあれ、今まで出来なかった事ができるようになり、それによって恩恵を受ける人がいる…。それを確立したのが日本企業であり、天然資源で勝負する中国と対等以上に渡り合えるという事そのものが、実に素晴らしい事だと思う。
日本の技術の素晴らしさに敬意を表したい。