iPhoneやiPadを使っていて、PCから比べて使いにくいなと感じるのが、文字入力である。
私がPCのキーボード入力に慣れているからこその問題かもしれないが…。
iOS8で大きく変わる
iOS7シリーズまでは、そもそも日本語入力は選択肢がなかった。
基本的にAppleのIME以外に使用する事が出来なかったからだが、iOS8からはその社外製IMEの使用が可能になり、早速いくつかのアプリが公開されている。
特に日本で有名なのはATOKだろう。これはPCでモノ書きをしている人からすると常識とまで言える名門IMEである。
また、mazec for iOSも最近台頭してきたIMEと言える。開発元はATOKの開発元であるJustsystemの創業者である浮川氏が新たに起業したMetaMoji Corporationで、ATOKと異なり手書き文字を活字化するIMEである。
そして私的には地味に展開しているな、と思っているSimejiもiOS8でよく使われるIMEと言える。Simejiは何と言っても無料で使えるのが強みで、特にネット上で使われる顔文字などが豊富に用意されているIMEである。変換もクラウドを利用したものが採用されているため、PCで言うところのGoogle日本語入力のような印象がある。
これら3つをちょっと比較してみたい気分になったため、ちょっと導入を交えていろいろ検討してみたい。
まずはSimejiから
正直に言うと、私的にはちょっと…という感じがするのがSimejiである。
変換に文句があるわけではないのだが、主体がネットでの使用を前提としたアプリであるため、どうも仕事向きじゃない。極めつけはネットからのクラウド変換になるため、どうしてもネットスラングを引用しがちで、言葉として伝える正確性が欠ける部分がある印象がある。
その為、どうも私には馴染まない。ま、最初から分かってたことではあるが。
ただ、ビジネス主体で考えないなら、カジュアルに使える無料IMEとしては良いかもしれない。
キーボードの着せ替えもできるし、見た目が変わる事に新鮮さを感じないわけではない。
顔文字を多用し、またキーボードをカジュアルに使いたい人には良いIMEと言える。
ただ、インライン入力ができないという問題がある。これはiOS8側の問題でもあるため、Simejiが悪いというわけではないのだが、iOS標準のIMEとは異なるインターフェースに感じるだけにマイナスポイントにはなる。
異端IME、mazec
なぜmazecが異端と呼ぶに相応しいIMEかというと、こいつは手書き文字入力しか受け付けないからである。
このIMEに切り替えると、入力スペースに手書きが可能なエリアが出てくる。ここに指やスタイラスで手書きして、その手書き文字から活字に変換する。変換エンジンはATOKほどの正確性はないかもしれないが、かなり高性能。
また、漢字とひらがな混在入力でも漢字文字に変換できるため、フリック入力含めたスマホの入力そのものが苦手だという人には最適かもしれない。
実際、私が現時点においてメインで使っているのはこのmazec for iOSであり、サッと手書きで入力できるのは便利に感じる。
また、インライン入力ではないのだが、そもそもが手書き入力後に漢字変換するため、あまりインライン入力でないという感覚がない。そういう方向で考えても実に良く出来ていると言える。
実際の使い勝手は、この動画で確認して欲しい。結構な認識力でスラスラ書いていける。
音量にちょっと注意かもしれないが、適度な時間でわかりやすい動画と言える。
定番中の定番、ATOKの実力は?
そして…いよいよATOKである。
コイツに搭載されている変換エンジンは、長い歴史から生み出されたものだけに、実に小気味よい変換をしてくれる。ただ、インライン入力でないため、それが違和感となって使いにくさを感じるかもしれない。もったいない話である。
また、エンジンは優秀と言いつつもまだiOS上で実現する上で万全ではないのかもしれない。特に長文変換の精度はあまり高くないようだ。
それと、地味な機能として、縮小キーボードを右もしくは左に寄せる機能がある。iPhone6 Plusで有効活用できる機能で、片手で入力作業が効率良くできる仕組みである。これは他のIMEでも実装して欲しい内容である(mazecだと入力エリアが小さくなって不便だが)。
それと、「らくらくカーソル移動」という、今までiOSでは搭載されていなかったカーソルの移動が可能になる機能が搭載されている。
また、バックスペースキーをフリックする事で、句読点および改行単位での文章を削除する「まとめて削除」が搭載されたのも、iOS標準のIMEから使いやすくなっている面である。
正直、これらの追加機能があるだけで文章を編集処理するのが随分と楽になる。iPhone6 Plusにはカーソル移動のボタンは追加されたが、それはあくまでもiPhone6 Plusだけの機能であり、従来機種では相変わらずカーソルキーが存在しない。しかしATOKを使う事で全てのiPhoneにカーソル機能が付くワケで、これは評価に値する機能である。
ただ、そういうATOKもまだまだ実は万全ではない。
現時点でBluetoothキーボードでは使えないという問題がわかっており、使い手によってはこれがクリティカルな問題となる場合もある。
またインライン入力はぜひとも欲しいという人もいるはずだ。こちらはiOS側の対応も必要になる話かもしれないが、これが実現しないと違和感なく標準IMEの代わりとして使用する事はできない。
これらが解決した時点で改めて再評価したい問題でもある。
現時点でのベストは?
この問題は人によって異なるため、私の結論が全てではない事をまず先に言っておく。
現時点でもっとも良い選択は、Simejiを使う事である。
少なくとも変換効率では標準IMEから比べても賢いわけで、日常的に使うならSimejiがベストと言える。
何故かというと、それは価格が無料だから。
ATOK for iOSは価格が1,500円で、mazec for iOSは価格が900円である。
ATOKはまだ1,500円を支払うだけの完成度に至っていないと私は考えていて、mazecは手書き入力を求めるならアリな選択肢だが、そうでなければ900円は安い買い物ではない。
私は手書き入力を求めたが故に現時点で既にmazecを購入済みだが、そうでない人は選択肢がATOKとSimejiであるため、そうであるならまだATOK導入は早いように思う。
また、こうした拡張IME全体にまだ問題もある。
時々だが、IMEを切り替えたタイミングでIME枠がグレーアウトして一切のボタンなどが表示されなくなる事がある。
これを元に戻す方法は「設定」→「一般」→「キーボード」→「キーボード」→「(対象のIME)」と進んで「フルアクセスを許可」という項目を一度OFFにして、再度ONにする事で修正される。
まだまだiOS側にも問題があるのが今の段階であり、安定して使用できるとは言い難い。
こうした問題を覚悟の上でさらなる利便性を求めるなら、拡張IMEはアリだと言える。
最後に。
一応、お薦めはSimejiという事にしたが、Simejiはバイドゥで開発されているIMEであるため、入力した情報がノーマルの状態ではバイドゥのサーバへ送信される事になっている。バイドゥの大元は中国百度であり、サーバ情報は中国本社に送られている可能性が高い(公式では文字列情報はサーバに送信されたあと廃棄される、と説明している)。
それを嫌うなら、Simejiを使うのを辞めるかSimejiの設定内で情報を送信しないように設定するしかない。ここは要注意である。
兎にも角にも、もう少し熟れてきた方が扱いやすいのがiOSの拡張IMEである。
安全に使いたいなら、もう少し待った方が良いし、いち早く便利にしたいなら突貫するのもアリだろう。