NVIDIAのGeForce GTX 970のVRAMに問題がある事が公式で発表された。
GM204の悲劇
GeForce GTX 980と970は、搭載しているMaxwellコア「GM204」は全く同じでありながら、980はフルスペック版、970は一部機能を制限したモデルである。
しかし、この一部機能を制限としているにも関わらず、発売当初の製品スペックを見ると、980と970では有効化されているシェーダコア「CUDAコア」は980が2048基、970は1664基と違いはあるものの、その他のメモリ量やROPユニットは全く同じであった。
通常、メモリが同じだけ搭載されていても不思議には思わないが、ROPユニットが同じという点に疑問を感じた人もいるのではないかと思う。
そうした不思議な感覚がありつつも実際に発売された980と970だが、そのウチ970において「グラフィックスメモリの消費量が3.5GBを超えるとメモリバス帯域幅が大幅に低下する問題が発生する」という噂が出始めた。
実際に4Gamer.netではそれが本当かどうかを検証する実験が行われたりし、その実験結果により本当にこの問題が顕在化する事が発覚した。
その後、公式にNVIDIAからこの問題が存在する事が発表され、その事態の説明が行われた。
技術的に詳しい話は、コチラを参照してもらうとして、実際それが一般ユーザーに影響があるのかどうかを考えてみる。
影響する? しない?
ハッキリ結論から言ってみれば、一般的な使い方をしていれば何ら問題はない。
が、もしビデオメモリを大量に使用するケースがあった場合、この問題はクリティカルに響く事になる。
ここで言う“一般的”という事がどの程度を表すかによっても変わってくるのだが、仮にゲームで使用するだけのレベルであれば、確かに影響はない、と言いきっていいかもしれない。
しかし昨日私が書いた記事のように、動画のフレーム補完などでその映像処理をしなければならない状況になった時などは、全く問題がない、とは言い切れない。
ビデオメモリに3.5GB以上のデータを書き込む事になった場合、3.5GBというメモリ領域を超えた場合、今回問題視されている0.5GBの領域にデータを記録し始めるのだが、その時、アクセス速度が極端に落ちる事がわかっている。
アクセス速度だけ遅くなるなら致命的な問題じゃない、と思うかもしれないが、昨今のビデオカードはメモリアクス速度が大きな意味を持っていて、これが伸びないが故に性能も伸び悩んでいるというジレンマがある。だから今回のような問題は実は意外と大きな問題と言っても間違っていない。
最初から3.5GBのVRAMで発売してくれていれば、こんな問題にはならなかったかも知れないが…。
とりあえずドライバで対策
今回の件で、当のNVIDIA側はドライバでできるだけ0.5GBの領域を使わないように手段を講じたドライバを公開して対処している。
対処としてはそれで間違ってはいないが、一番大きな問題は、虚偽のスペック情報で製品を販売していた、という事実である。
おそらく米国では訴訟問題とかが出そうな感じではある…のだが、今回問題となった部分は、もともとNVIDIAから正式発表していないスペックの部分に関して、ユーザーサイドで980と同等コアであるという側面から違いが判明した問題である為、どこまで法に問えるかはわからない。少なくとも日本では難しいようにも思える。訴訟大国である米国ではそれなりの結論にはなりそうではあるが。
それにしても、今回の問題でGeForce GTX 970の性能の高さがより際だったように思えてならない。
CUDAコア含めていろんな所が980に対して劣っているにも拘わらず、その性能は980に比して5%未満の低下で留まっている。もちろん、高負荷条件になればもっと大きなスコア差になるのかもしれないが、価格から考えても970のパフォーマンスの高さは驚くべきものがある。
ただ、どうしても気になる人もいるだろう。私も今回の問題で970を購入するのをちょっと躊躇ってしまう。
しかし、一般論では970は紛れもなく高パフォーマンスGPUである。
その辺り、どう考えるか? で、970の魅力が変わるのではないだろうか?