世間的にはDSDと呼ばれるもの。ハードウェア必須だと思ってた…。
Direct Stream Digital
DSDとは“Direct Stream Digital(ダイレクトストリームデジタル)”の略で、従来のCD音源で採用されているPCM方式と全く違う1bitのレコーディング型式を言う。現在はサンプリング周波数には2つのフォーマットが存在しており、通常CDで使用する44.1kHzの64倍である2.8224MHzというフォーマットと、CDの128倍となる5.6448MHzのフォーマットがある。ただ、ちょっと最近この2つのフォーマット以外にも更なる高音質フォーマットである11.2MHzのサンプリング周波数を持つフォーマットもあるようだが、
流石にこれぐらいの周波数となると、その音が出ている場の空気感なども再現可能なレベルとも言え、アナログレコードの滑らかさとデジタルの透明感を併せ持つフォーマットと言える。
ここ最近のハイレゾ音楽と言えば単純に96kHz 24bit以上の音を指すか、もしくはDSDと言われるぐらいメジャーになってきていて、ポータブル機器もリリースされている。
私もいつまでもハイレゾはまだ環境が…とは言えない状況という事である。
どうやって聴く?
DSDを再生する方法はというと、私はハードウェア必須だと思っていた。ここ最近そういうのを調べていなかった、というのもあるが、時代は更なる進化を遂げ、今ではPCと再生ソフトで再生する事ができる他、DACを使用する方法もあれば、ポータブルプレーヤーで再生させたり、或いはネットワーク対応の据置ハードウェアで再生する事ができる。
最近では、Raspberry piという、ARMコアを搭載したマイコン(教育用コンピュータだが…)をオーディオ再生デバイスにして、その上でDSDをPCMに変換、それで再生させる…なんて事も可能だったりするが、DSDはPCM変換するよりもダイレクトに再生させるのが醍醐味という人も多く、そういう視聴方法をネイティブ再生と言ったりもする。
ネイティブ再生させる方法としては前述の方法で可能だったりするので、特別な機器等は不要だが、Windowsでの再生では概ねASIOドライバ対応の音源がないと厳しいと言わざるを得ないので、そのあたりさえ解ってしまえばハードルは高くないとも言える。
foobar2000
Windows環境でDSDを無料で再生させたい、となると一番メジャーな所で言えばfoobar2000を使用する方法と言える。
ところがこのfoobar2000、実は全てのWindows PCで利用可能かというとそうとも言えないという、実に不確定要素の強いソフトで、PCにインストールした段階で全く再生できない場合もあればプチノイズが乗ってしまうケースも出たり、或いは全く問題なく使えたりと、全ての環境で同じ設定にしたとしても同じ結論に至らないという、実に不可思議なソフトだったりする。
私も以前にこのfoobar2000に乗り換えてみようと思ったのだが、余りにも不確定要素が強すぎて諦めたという経緯がある。
しかし、現状ではWindows PCでDSDの無期限無料再生をするにはfoobar2000しかメジャーどころでは選択肢がなく、私としても導入してみようかどうしようか悩んでいる所である。
まぁ、それ以前の話として私はASIOドライバーで稼働できるサウンドデバイスを持ち合わせていない為、まずはそれを手に入れる所から始めないといけないわけだが。
そしてそのソフトと出会った
foober2000しか選択肢がないような書き方をしたが、実際はそうでもない。
最近になってDSD再生を含めたいろんなフォーマットを再生できるソフトが出回り始めている。
私がその中でも注目したのは“TuneBrowser”と呼ばれる、ASIOだけでなく、WASAPIにも対応したソフトである。
TuneBrowser
http://tiki-s.cocolog-nifty.com/blog/tunebrowser.html
再生エンジンを完全新規で作成したという事で、foober2000とも異なるソフトで、フリーで使用するとしても管理可能曲数が500までという制限しかなく、他の機能はフル版と同じというハードルの低さは実に有り難い。
foober2000は英語版という事もあって、どうしてもローカライズの面で使う事を躊躇う人もいるかもしれないが、TuneBrowserは完全日本語。手頃な再生ソフトとしては、私個人の感想としてfoober2000よりも良いのではないかと思う。
前述したように一応シェアウェアではあるが、1,400円+手数料という価格でのソフトとしては手の出しやすい良ソフトだと思う。
ただ…これは私がまだ使いこなしていないからかもしれないが、iTunesからの乗り換えの場合に、音楽ファイルの管理方法を従来からバッサリ切り替える必要があるため、そこで戸惑う可能性はあるかもしれない。
何事も、自分の環境を変えるという事はそれなりに大きな労力を要するという事である。
原点に還る
DSDと言っても、その音が人間の耳に届くには、どこかでデジタルをアナログにする必要がある。残念ながら人の耳はデジタル信号をそのまま受ける事ができないからだ。
オーディオの話をする際に、必ず私はこのデジタルからアナログへの変換においての話をするのだが、ハイレゾ音楽だからきめ細かい音になると盲信している人ほど、とても重要な所を見落としている事が多い。
まずPCで音楽を再生させる上で、このデジタル信号をどの部分でアナログ信号に変換するかはとても大きな問題である。
たとえばマザーボードに内蔵されたサウンド機能を利用しているケースで、そのままマザーボードからステレオピンジャックでスピーカー等に出力しているケースは、まずもって音がノイズに侵されていると言っても過言ではない。PCの内部はノイズの巣窟であり、何も対策されていない状態であれば確実にノイズの影響を受けていると言える。
もし、マザーボードからオプィカル端子等を経由してデジタル出力が出来、PCの外部でデジタル信号をアナログ信号に変換できるという状況なら、それを行うだけでノイズの影響はかなり抑えられると言える。
なので、現状の出力状況を改善する事をまず最初に行い、今の環境を買えるだけでどれだけ音が良くなるかを試してみるのがまず先であると私は思う。
また、これも原点の一つだが、実際に音の出るデバイスを換えるという事も重要である。
こう言っては何だが、安物はやはり安物なのである。数千円のスピーカーやヘッドホンと、最低1万円くらいのスピーカーやヘッドホンとでは、やはり出る音が違い過ぎる。昔から比べれば今の安いデバイスもかなり音は良くなったと言えるが、音なんてどんなスピーカーやヘッドホンを使っていても同じと考えているようなら、まずその認識から壊してしまうところから始めないといけない。
というか、もし良い音で聞きたいと思っているなら、それぐらいの投資は考えた方が良い、という事である。
私が言っているのは「高いモノを買えば良い」という事ではなく、まず「自分の最低ラインを見つける必要がある」という事である。
ちなみに私は自分の中て5万円以上の音楽デバイスは買わないと決めている。3万円台ならなんとか考える、というレベルであり、それ以上は多分私の耳では善し悪しが分からないと思っているからである。
ゼンハイザーのHD650というオープンエアーのヘッドホンは、今では型落ちとなった事もあって値下げされはじめ、新品でも4万円台になってきている。私が買うとすればこれぐらいの価格が限界点である。
このように、自分でお金を出しても良いな、と思える限界点を見つける意味でも、まずは手の出しやすい1万円前後くらいのデバイスを試してみるという事をお薦めしたい。これで物足りなくなったら次のステップに進むかどうかを検討すればよいのである。
ちなみに…各メーカーの商品紹介の所に「ハイレゾ対応」とか書かれていても、安易に信じないように。たしかにスペック的にはハイレゾと呼ばれる周波数帯域を再生できる能力を持っているのかも知れないが、そもそもハイレゾと書かれていない製品であっても、ハイレゾと呼ばれる周波数帯の音を再生できる事も多々あるのだ。だからデジタルアンプ以外の、スピーカーやヘッドホンといった直接アナログ信号を音として出力するデバイスにおいては、ハイレゾという紹介は気にする必要はない、と私は思っている。
ドライバを換えるだけで…
環境を整えたなら、あとは聴くだけである。
多分、今までとは異なる音に聞こえるハズである。もし違いが分からないとするならば、何かの設定が間違っているか、もう一度以前の環境と聞き比べるしかない。
何も対策をしない時とした後で音が同じというケースはまず考えにくい。
何しろ、ドライバを換えるだけでも音が違って聞こえるのだから。
私も前述のTuneBrowserでドライバをWASAPIに換えて聴いてみたが、音が明らかに変わった事を感じた。
ハードウェア環境は以前と全く同じだが、ドライバを換えただけで背景で鳴っている音の出方に違いを感じる事が出来た。
なので、こういう環境を変えるという事もとても重要だと言える。
ハイレゾという環境に飛び込むなら、まずは今の状況を見直すところから始めるのも重要だと思う。
ぜひ見直して、ハイレゾの世界へと突き進んでいただきたい。
多分、私も何れそれを追う事になるだろう。