今日、明日と中野サンプラザで春のヘッドフォン祭2015が開催される。
高級機が目立つ
今回の春のヘッドフォン祭は、情報を見る限り結構な高級機が揃った祭になるように思える。
Astell&kernからはハイレゾ対応プレイヤー「AK380」が発表され、完全なProfessional向けのプレイヤーである事は疑いの余地がない。残念ながら発売時期や価格などの情報はないものの、おそらく数十万とかそんな価格になる事は間違いない。
ファイナルオーディオでは、「Pandora」に代わる新ヘッドフォンシリーズ「SONOROUS」(ソノラス)が公開され、実質的にはPandoraシリーズの上位モデルという事らしい。価格も38万とか62万とか、ホントにヘッドフォンかよ…と思えるような価格のものがズラリと並ぶ。
参加している200以上のブランドが全てこんな高級品ばかりを扱っている、という事ではないにしても、今回はこれぐらい高級志向の製品が多いというのもまた事実。
正直、こんな価格の製品が並ぶ展示会は、まさしく見るだけの展示会ではあるのだが、こうした中にも「これぐらいなら何とかなるかなぁ」というような製品もないワケでもない。
個人的に気になるのは…
そんな中で私的に気になったのが、ドイツのゼンハイザーから発売される、密閉型ヘッドフォン「HD 630VB」である。ゼンハイザーといえばオープンエアーヘッドフォンの名機「HD650」が余りにも有名だが、今回展示されているのは密閉型。ダイナミック型ユニットを搭載したもので、再生周波数帯域は10Hz~42kHzというから、特別スゴイという感じを受けないのだが、ゼンハイザーぐらいの製品になるとこうしたスペックからは凄さはわからない。
ハウジングは軽量なアルミを採用し、ヨークやスライダーなどにも高級素材が使われており、イヤーパッドは当然の事ながら交換が可能と、この辺りは流石ゼンハイザーとい言えよう。
価格は499ユーロで残念ながら日本での発売は未定。まぁ、価格的に499ユーロという事は、日本円にして大凡68,000円弱といった所。国内での発売が決まった場合、実際には7万円クラスになるのではないかと予測する。
HD 630VBのユニークな機能
今回ゼンハイザーから発表があった「HD 630VB」だが、独自機能としてちょっと面白い機能を持っている。なんと、ハウジングに低音調整用のダイヤルを装備し、50Hzを±5dBの範囲で調整する事ができるという。これによってユーザー好みの低音が楽しめるという機能だそうだが、要するに音を作ってしまうという事であり、モニターヘッドフォンとして考慮されているものではない、という事が言えそうだ。
BOSE製品もそうだが、モニターに徹する必要なしと踏んだ製品は、積極的に音を作り込む方向に振るというのはアリだと思う。
このHD 630VBには、他にも接続したプレーヤーを制御する機能もハウジングに備えていて、音量調整や再生トラックの制御ができる機能も内蔵している。マイクも備えていて、スマートフォンと連携して通話にも利用できるというから、完全に今までのゼンハイザー製品とは異なる方向に振った製品と言えるかも知れない。
このマイク機能だが、PCで利用出来るように考慮してくれていたなら、結構面白い使い方ができるのだが…。実際はどのような形でそうした追加機能を実現しているのか詳しく知りたいところである。
まずは日本国内で発売されない事には使いようがない為、今はまず国内発売される事を祈りたい。
高級である事の意味
明日18:00まではこの「春のヘッドフォン祭2015」が中野サンプラザで開催されているため、行ける人はいろいろな高級機を実際に触って見るのも良いと思う。
何故高級なのか? なぜ高価なのか?
それは実際に体験してみなければわからない。
そして実際に体験して、その意味が分からないなら、あえて高級なものに突貫する必要などない。あなたの体はオーディオに対してそこまで高級なものを求めていないという証である。
逆にその意味が分かってしまったなら、なぜ高級・高価なのかがよく分かると思う。そして後は価格との折り合いを付けるしかない。自分の手の届く範囲で善し悪しとのバランスを考えて最適なものをチョイスする…高級オーディオの世界はそうやって製品を選んでいくしかない。
ハッキリ言って、高級オーディオだから良いもの…と盲目的になるのは危険だと私は思っている。
自分でそう思えないなら、それで良いのである。ハッキリ言って、高級機と普及機の差などというものは、時としてものすごく微妙な差でしかない事など多々ある。その微々たる差の中に価値を見出した人たちが、高級オーディオの世界を支えているとさえ思う事がある。
ただ、差を理解するには高級と呼ばれるものがどんなものであるかを知る必要がある。知る事ができれば差が理解できるハズであり、そこで知る事ができなければそもそも高級オーディオの世界を理解する事などできない。であるなら、そこで変にお金をかける必要などないのである。
趣味の世界であるため、こうした仕分けは絶対に必要だ。
これは何もオーディオの世界だけではない。カメラでもそうだし、車でもそうだし、趣味と呼ばれるものの大多数は同じである。
何に価値を見出すか?
すべてはソコに帰結する、と私は思う。