最近PCを自作しなくなった私は今のパーツ乱立ぶりに困る事もあるのだ。
新しいものが最強とは限らない
まだPCがPentiumだとかCore2だとか言っていた頃は、CPUの比較というのは概ねメーカーvsメーカーという比較だけで、他は型番の序列通りの性能だったため、特に判断に困る事はなかった。導入するシステムのメーカーさえ決めてしまえば、あとは予算で性能(型番)を決めるだけで済むからだ。
しかし、最近のCPU、特にIntelのCPUは、必ずしも型番通りの性能とは言えない所がある。
それは製造される世代毎で、省電力を踏まえた上での性能をチューニングしているという理由だけでなく、搭載されているGPUの性能が絡んでくるからである。つまり、今は単一性能だけで処理の効率が決まるのではなく、CPU的処理能力とGPU的処理能力の複合性能で、全体の処理能力が変化する時代になった、という事である。
それでも新しいモノは強い
過去からの19製品をベンチマークした、という記事があるので、そちらを紹介する。
AKIBA PC Watch
Intel&AMD CPU一斉ベンチ -19製品を性能比較-
http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/docs/dosv/20150706_710237.html
この結果を見ると、やはり新しいBroadwell-Cの性能が高い、という結果が出ている。
なんだかんだと、新しいものは強いのである。
但し、面白いのはCINEBENCH R15の処理結果である。
基本、マルチスレッド処理だけでいえば、別格のExtreme製品が16スレッドというバケモノじみたマルチスレッド能力を発揮して3.2GHzという、クロック周波数的には最高性能ではない値であっても結果は良好だったりするのだが、これがひとたびシングルスレッドとなると最大4.4GHzで動作するHaswell世代のCore i7-4790Kが最も高いスコアを叩き出している。
単純にシングルスレッド能力では余程アーキテクチャに差がない限りはクロック周波数がモノを言うという結果なワケだが、このクロック周波数がある程度抑えられているBroadwell-CはHaswell世代をこの部分で超えた、とは言えないワケである。
まさしく、新しいものが最強ではない、という事の所以である。
一方AMDは…
総合テストではAMDのAシリーズもそんなに悪い性能ではない、と判断されるのだが、純粋にCPUの処理だけを問われるCINEBENCH R15では、AMDのAシリーズはかなり厳しい状況と言わざるを得ない。
純粋に、Aシリーズに搭載されているBulldozerアーキテクチャの問題がそのまま現れるという結果で、Core i3の性能はおろかCeleron G1840より下回るという結果のようである。
AMDのAシリーズは、搭載されるそのGPU能力は確かにIntelコアを遙かに超えるのだが、基本となるCPU能力に大きな問題を持つと言える。
この状況を打破するには、AMDもCPUコアの刷新をする必要があるのだが…来年、AMDはFXシリーズもAシリーズも大きく進化させる事を明言している為、今はそれに期待するしかない。
GPU能力
イマドキのCPUはGPUを内蔵しているのが当たり前だが、それによってCPU単体で3D系の処理も比較的軽快に行えるようになっている。
まだチップセットにGPUを内蔵していた頃は、Intelの内蔵GPUはお話にならないレベルの性能しか持ち得ていなかったが、最近のIntel HD Graphics世代のGPUはかなり高性能になっていて、ましてそれがIris Pro Graphicsが搭載されるとなるとダントツの強さを魅せる。
これはIris Pro Graphicsが、4次キャッシュとして128MBのeDRAMをコア内に持つからだが、この効果が相当に大きいと言える。
前述のリンク先では蒼天のイシュガルドのベンチマークをDirectX11で動作させた結果が記載されているが、それで見ても一目瞭然で、Iris Pro Graphics 6200を内蔵するBroadwell-Cでは、フルHDでも遊べる性能を発揮している。
私はHaswell世代のノートPCであるVAIO Duo 13(Intel HD Graphics 5000を内蔵)を持っていて、以前はFF14のキャラクター編のベンチマークを走らせたことがあるが、その時は1280×720ドットで何ら問題なく動作する事を確認はしている。しかし、蒼天のイシュガルドではそこまでの性能は期待できないし、何よりフルHDではゲームにはならない速度になると考えられる。
それを考えれば、Broadwell-CのGPU能力は相当に高いと言わざるを得ない。
一方、この分野ではAMDもかなり好スコアを期待できる。
というのは、内蔵しているのがRadeon R7クラスのGPUを内蔵しているからである。
ベンチマークの結果だけで見れば、Broadwell-Cより以前のIntelコアではAシリーズに太刀打ちできない結果となっている。
要するに、IntelからするとIris Pro GraphicsでなければAMDには勝てない、という事でもあるわけだが、AMDは販売戦略上この部分ばかりを強調しているイメージが私にはある。自分の強みだからそれは仕方のない事なのかもしれないが、それでもディスクリートGPUと比較すればその結果は間違いなく良いわけではない。つまりAMDのAシリーズはビデオカードを増設しないである程度の事はできるが、それも限定的である、という事に過ぎない。お手軽では良いのかも知れないが、ガッツリと深みにハマりたいゲーム分野を中心に考えると、実に中途半端な感じが否めないのは残念な話である。
GPUを外付け前提とする場合
前述したように、最近のCPUは内蔵GPUの性能を上げていく傾向があるため、そのGPUの発する熱を考慮して動作クロックを少し落としたりするケースがある。
Broadwell-CのクロックがHaswell世代より低いのは、まさにそれが理由と言えるワケだが、そもそもGPUを外付けする人からすると、この流れはあまり喜ばしい事とは言えない。
私が以前から言い続けている事だが、そもそも内蔵GPUをディスクリートGPUと同時に使用できないという状況がこの問題をより深刻化させているように思える。
例えば…グラフィック処理はディスクリートGPUで行い、基本のプログラム処理をCPUか行い、補助的な物理演算を内蔵GPUが行う、といった、分業が内部で行われるようになると、内蔵するGPUの性能を余すことなく利用でき、かつ全体の処理にムダがなくなるのだが、そういった処理の棲み分けが環境によって変動する為に難しいのか、この流れになる気配がまったくない。
だから、いつまで経ってもディスクリートGPUを使用する人は内蔵GPUの恩恵を受けられないし、挙句の果てに内蔵GPUを持っているばっかりに動作クロックが下がっているCPUを使うハメになる。
Intel系CPUのExtremeを使用すれば、内蔵GPUを考慮しないで済むのかもしれないが、アレは価格が異様に高いという問題がある。
ミドルクラスでも、ディスクリートGPU前提のCPUというものが発売されると良いのだが…。
自作PCの幅は年々狭まっていく。
何とも寂しい限りである。