2016年4月から、電力小売りが全面自由化となる。
選択の自由
従来、電気事業法で定められていた地域毎に供給を受けることのできる電気事業者が、2016年4月より自由に選ぶことのできるよう緩和される。
簡単に言えば、電気事業者を自由に選ぶことができるようになる、という事だが、この規制緩和によって、メリットもあれば当然、デメリットもある。
そういう所をもっと国民は知るべきであるが、それと同時に、もっともっと政府は国民に理解を促す為の告知と周知を徹底すべきではないか? と私は思っている。
突然、何故こんな話になったかというと、今日、ふと近所をぶらつく事になり、今年初めてE-PM2を持ち出して撮影した中で、住んでいる町の東京電力をその画角に納めたからである。このアンテナ、何を通信してるんだろう…。
まぁ、そんな疑問はさておき、従来、関東圏に住んでいる人のほとんどは東京電力を選ばざるを得ない状況だった。
それだけに、東日本大震災の被害で東京電力の電気量が高騰する、という話を聞いた時「東京電力の杜撰な管理職達の失態から出た損失を関東圏の国民が負担するわけ?」と心ながらに思った。
もちろん、あの災害は国難でもあり、一定の負担を強いられるのはやむを得ないとは思ったが、(特殊ではあるが)民間企業の、しかも管理職の失態によって出た損失を、選ぶ自由のない国民が強制的に補うのは、どこか間違っているように思えてならなかったのである。
もちろん、その(特殊ではあるが)民間企業の末端で働く人達があの状況下で踏ん張って業務を行っていた事は解っているし、その人達には頭が下がる思いだが、それでも選ぶ自由のない国民が負担する事を当たり前とする風潮は何か間違っているように思えてならなかったのだ。
100以上の小売り業者乱立
そうした考えが発端なのかどうかは解らないが、ここにきてようやく電気事業者をある程度選択できるようになった。
現在も小売り業者が次々と生まれているという事だが、最終的には全国で100を超える小売り事業者が登場する、といわれている(昨年末で120社程度が登録している)。
通信事業者であるドコモやau、SoftBankもそこに参加し、通信事業とのセット割を主軸にサービスを開始する事を表明しているし、同じエネルギー事業を行っている東京ガス、大阪ガスなども事業参加するとして登録している。
また、ガソリンなどを提供している昭和シェル石油、JX日鉱日石エネルギー株式会社(エネオス)なども登録している。
こうした新しい事業者から電気を自由に購入できるようになり、そこで価格競争が生まれ、電気料金が安くなったりするのだが、新しい事業者は単に電気だけで事業を成り立たせようとは考えていない。というか、むしろ電気単体で事業をしようとすると、従来の電気事業者との価格競争に勝つことなどできない。
前述した通り、通信事業者は通信事業とのセットをベースとした割引で価格を下げようとしていて、同じように他事業者も従来の事業とのセットなどで価格競争を生抜くようである。
まぁ…こればっかりは、各事業者が正式な料金プランを発表しないことにはハッキリした事はわからないが、こうした自由化でいろんなプランが発表され、より自由な電力供給が行われる様になる事が予想される。
それでも地域別
こうして100以上の登録事業者が現れているが、全国どこにいてもその全ての事業者と契約できるわけではない。
現時点ではいろいろな制約があって、地域によってある程度契約できる事業者が絞られる。今後、その制約がどのように解消されていかはわからないが、少なくとも関東と関西では明確な規格の違いがあるため、これを解消しない事には全国共通とはいかない。
他にもいろいろな理由があって、結局はしばらくはある程度絞られた事業者から選ぶ事になるが、それでも選択肢ができるという事は大きく自由化に対して前進したと言える。
メリットとデメリット
こうして自由化となると、それが価格的なメリットになったりもするのだが、デメリットも当然ある。
それは「各事業者が電力を安定供給できるのか?」という事である。
従来は国による厳しい審査を受けた事業者には電力安定供給の義務が課せられていたが、電力自由化後の2020年以降に供給義務が撤廃が検討されている。今すぐ撤廃という事はないが、コスト的メリットを産むための自由化による今回の施策によって、安定供給が脅かされる可能性はゼロとは言い難い。
こうした安定供給の懸念に対して、政府は一定のルールを作ることで対応している。
安定供給の要である送配電網には従来のような規制を残し、既存の電力会社の独占を認める代わりに安定供給の義務を課す、という事を想定している。仮に新規事業者がトラブルなどで十分な電力を確保できなかった場合は、既存の電力会社が不足分を補う、というワケである。
ま、こうした問題は実際の運用を行った上で、十分なデータを採ってみないことには分からないだろうし、実際に起こりうるトラブルがどの程度なのかをみてみない事にはわからない。
それを受けての2020年供給義務撤廃検討という事だろうから、デメリットも徐々にデメリットではなくなるだろう。
ただ、当初はデメリットである事自体は間違いない。
とりあえず安定を採るか、コストを採るか、そうした選択をする事になるだろう。
よくわからない事ばかり
こうした情報も、私としては実の所まだ上辺しか分かっていない。
もっと一般レベルで政府からの周知活動が必要と前述したのは、まさに事業者を選ぶ本人達がこうした情報を知り得ていないからである。
時期からしても、残り3ヶ月ほどで始まる制度なのに、未だこんな問題があるのは、正直如何なものかと思うのだが、それでも選べるようになっただけマシと考えれば、この自由化はコレからが本格始動、といったところなのかもしれない。
私が一番恐れるのは、通信事業者が参加した事で、ケータイのプランのように解りづらいプランばかり出てこないか? という事である。
スマホやケータイのプランは未だ明確なプランばかりとは言えず、非常に解りづらい料金体系で構成されている。
今回の電気事業に関しても、その延長上にあるようなプランで説明されると、選ぶ側としては何を選べば良いのかが明確にならず、よく分からない契約をしてしまうケースも出てくるように思う。
電力自由化は、通信事業者ばかりが事業者ではないが、セット等で割り引きする予定が言われている以上、そのプランはおそらく複雑なものになるだろうから、この心配は決して安易なものではないと言える。
願わくば、消費者がわかりやすい、判断しやすい体制が取られることを願いたい。