電子情報技術産業協会(JEITA)が国内向け薄型テレビの出荷統計を発表した。
2014年から大きく伸張?
電子情報技術産業協会(JEITA)が2015年の国内向け薄型テレビの出荷統計を発表した。それによると、4K対応テレビが大幅に伸長し、金額構成比が’14年の18.9%から、’15年は35.9%まで増加したという。
確かに数字だけ見れば大躍進とも言える結果かもしれないが、私はこの分析結果にちょっとだけ違和感を感じている。
そもそも、金額構成比で見ると4K対応テレビの価格とフルHD、HD対応テレビとの価格差において4K対応テレビが圧倒的に高くなるのは当たり前の話で、逆にフルHD対応テレビやHD対応テレビはどんどんと格安になっているのだから、その価格差が詰まらないのも当たり前。
であるなら、テレビ全体の売上高に対して4K対応テレビの金額構成比がどんどんと高くなるのは自明の理ではないだろうか?
こういう数字は、どのように捉えるかで視点がガラリと変わる為、電子情報技術産業協会(JEITA)が言っている事そのものが間違いだとは言えない。
しかし、これを安易に受け止めて、世間の時流に乗ろうと考えるのは危険極まりない話だと私は思う。
消費者はまず、4K対応テレビというデバイスを買うにあたり、デバイスだけでは意味がないという事をまず知るべきであり、それに伴うサービス、ここで言うなら地上波放送や衛星放送など、放送サービスと合わせて動向を見るべきだと思う。
録画できない?
現在、4K放送に関しては、放送業界側として録画出来ない仕組みにしたいという話が出ている、という話を聞いた事はないだろうか?
東洋経済オンライン
http://toyokeizai.net/articles/-/100079
これによると、放送衛星のCSからBSへの切替にあたり、無料放送の録画禁止の盛り込みを提案しているという。
さらにこの問題を大きくしているのは、その議論の過程が公開されていないばかりか、消費者側の意見を届ける手段すら用意されていない、という部分にある。
詳細は前述の東洋経済オンラインの記事を参照して戴きたいが、著作権問題や複製問題など、いろいろな思惑によって今までの放送の録画問題が揺れ動いていたという事と、今回の問題は密接な繋がりがあるようである。
だが、消費者サイドからすれば、今まで出来ていたものに対してそれが出来なくなるという事に対して抵抗があるのは当たり前である。
そしてそれが出来ないとなると、消費者側の購買意欲減衰にも繋がり、結果として4K対応テレビが普及しない、という問題にも発展する。
つまり、消費者側というのは、最もリーズナブルで、ライフスタイルに合ったサービスへ傾倒していく傾向にあり、放送側だけが強引に事を進めると、家電業界がダメージを受け、結果スポンサーとなる企業が減り、放送業界も困る、という図式が容易にできてしまうという事である。
放送業界側からすると、今までも録画という問題で制作物を複製されたりしてきた過去をどこかで精算したい、という事なのだろうが、それを独自に進める事にキケンが伴うという事をちゃんと解っているのか? という疑問が、消費者側ですら見えてしまうのに、何故頑なに事を進めようとしているのかがわからない。
これでは、若者のテレビ離れを加速させるだけではないだろうか?
今や携帯テレビを持ち歩くに等しい時代
スマートフォンの普及で、今や人々は携帯テレビを持ち歩くに等しい時代になった…と私は思っている。
たとえそれがテレビ番組でなかろうと、動画をスマートフォンで視聴できる以上、携帯テレビと何ら変わらないと言ってしまって問題はないと思う。
つまり、放送側は、この消費者がスマートフォンというデバイスに向かう時間をどうやってテレビの前に座らせる時間へと切り替えるのか? という根底の問題を視野に入れているのか? と私は思っている。
この問題、実は数年前から同じ問題に直面している業界がある。
それがゲーム業界である。
テレビゲーム全盛期の頃は、コンシューマ機用のゲームを制作するのが当たり前だったものが、スマートフォンの普及によって安価なソーシャルゲームの制作の方が売上が大きくなってしまった。これは、そうしたソーシャルゲームに向かっていってしまったユーザーをどうやってコンシューマ機の前に立ち戻らせるか? という問題に等しい。
つまり、テレビ等の放送業界側は、コンテンツ制作の問題ももちろん解決する必要はあるが、人々を再びテレビの前に座らせる事に注力しないと、ホントにテレビは不要のものになってしまうし、その問題に対する武器の一つが4Kという付加価値だと私は思う。
それを録画禁止という逆効果的な判断によって、よりテレビ離れが加速してしまうと、家電業界も痛手を喰らうが、それに準じて放送業界も繋がっていくように思えてならない。
最終的にどのような方向に進むかはまだ解らないが、何によって収益を得るのか? という事と、今後未来に渡っての計画をちゃんと考えた上で、周辺の意見を取り入れつつルールを策定しないと、独りよがりなものになる、という事だけは理解してほしいものである。
この問題、果たしてどのような結末を迎えるのか?