ポメラを超えるものはポメラだけ…
ポメラと呼ばれるもの
キングジムのポメラは、折りたたみキーボードと即起動する軽快さを持ち合わせた、モバイル用テキスト入力機器の代名詞みたいなガジェットである。
これが初めて世に登場した初代機「DM10」は2008年の登場で、単四乾電池2本で駆動する画期的なデバイスであった。
当時はまだ今ほどスマホが当たり前になっていない時代だった(iPhoneもまだ4が発売される前だった)事もあって、ちょっとしたテキスト打ちに使用する上では便利な機器だった。
その後、2009年に上位モデルの「DM20」と女性向け廉価版の「DM5」が発売され、全部で3シリーズの製品になった。
…なんで女性向けが廉価版なのかが今一つわからないが、多分大きさをコンパクトにした分、機能が削られた、という意味だろうとは思うが、性差別に聞こえると思うのはまさに今の時代と言うべきか?
それはさておき、ポメラは多分この頃が最盛期だったのではないかと思う。Blogが流行始め、いろんな所である程度の文章を打ち込みたいという要望が結構あったという社会的現象も追い風になっていたのではないかと思う。
その3年後、2012年にポメラは一気に世代交代し、新型「DM100」が投入されたが、この機種は襲来機種と大きく異なり、折りたたみキーボードを持たず、また反射型液晶からバックライトへと変更された意欲作だった。
このDM100は良く出来た機種とは思ったものの、多少時代を外したか? と思える節があったように思う。個人的には欲しかったが、それはBluetoothでスマホやタブレットのキーボードとして使用できるという側面が強かった為でもある。実際、そういう事を以前Blogで書いている。
そして今回新たに発表されたのが「DM200」という、DM100の後継機にあたる機種である。
DM100の頃に既にスマホにその存在意義を喰われ始めていたテキストガジェットは、今回どのようなアプローチで市場を開拓しようというのか?
Wi-Fi対応
DM200は、前機種と同様にBluetooth機能は引き続き搭載している。
今回はさらにWi-Fiに対応し、そのWi-Fiでネットに接続、そのままGmail経由でメモ機能を持たせたり、メール機能で文章送信できたり、Evernoteにアップロードできたりする。
また、Wi-Fiを内蔵した事で無線LAN対応プリンタからの印刷もできるようになり、その活躍の幅がPCにより近づいたと言える。
但し、ブラウザによるネット検索等はできないし、メール機能も受信という事はできない。テキスト入力を阻害する機能は一切搭載しておらず、情報発信側の機能しか持ち合わせていない。
この割り切りこそがポメラであり、テキストガジェットと呼ばれる所以である。
また、日本語変換機能は前機種と同じくATOKを採用しているが、今回は「ATOK for pomera [Professional]」として、PC版と同等の変換エンジンを搭載している。残念ながらATOK Syncには対応していないため、PCの設定をそのまま利用する事はできないが、PCとはUSB経由で登録単語を取り込む事はできる。そういう意味では、前機種と同じとはすでに言えない機能を内蔵した、と言える。
リチウムイオン
ポメラと言えば乾電池駆動、というのが従来からの定説だったが、今回のDM200はリチウムイオンバッテリーが採用された。
これは十分な駆動時間を確保する事が目的ではあるが、昨今のスマホ事情を考慮しての事でもある。最近ではモバイルバッテリーを持ち歩く人も多いため、それによる充電で駆動時間拡大を狙ったわけである。
乾電池駆動は便利ではあるものの、ランニングコストはあまりよくなく、またeneloopなどの充電池を使う人も多いことから、それなら最初からバッテリーにしてしまえ、という考えはあって当然だったように思う。
お隣の国のとある製品は、リチウムイオンで火災発生などと言っているが、まぁキングジムではそういう事もないだろうから、バッテリーにした事の意味は大きいと思う。
VAIO type Pか?
このDM200を見て、かつてのVAIO type Pを思い出す人もいるかもしれないが、VAIO type Pは元々Windows機である事を考えると、そもそもの比較対象としては違うように思う。
確かに大きさは非常に似ているのだが、存在としての意味はVAIO type Pというよりは、さらに過去の製品であるオアシスポケットと似ている製品と言える。
…そもそもオアシスポケットをどれだけの人が知っているのかという問題はあるのだが、かつてOASYSという名の富士通製ワープロが存在していて、それの携帯機が存在していた。大きさ的にも非常に似ているのだが、厚みは当然DM200が圧倒的に薄い。
OASYS Pocketはワープロ機だったため、テキストガジェットとしてはDM200とは全く同じジャンルの製品と言える。ただ違うのは、当時は当然だが通信機能は内蔵していない製品だったため、DM200の方が圧倒的に便利に使える。だが、いざテキスト入力という意味で言えば、OASYS Pocketはそれしかできないデバイスであるため、機能面で言えばDM200と真っ向勝負できる機器である。
どちらが使いやすいか? という事になると、DM200を使ってみなければわからないのだが、かつて私がDM100を店頭で使ってみた感覚でいうと、OASYS Pocketの方が日本語入力はしやすかった、という印象であった。
ま、感覚的な問題なので人によるのだが、そもそもポメラはテキストガジェットであるため、まずこの部分が最良でなければ意味がない。
なのでもしDM200を考えている人は、一度は店頭等で実機を触って見る事をお薦めしたい。
エッセイストなど、文字入力を必要としている人は、この使い勝手の部分を重要視しないと生産性に関わってくるし、そうでない人であってもDM200を買おうと思うぐらいのテキストに対する拘りがあるだろうから、まずはキーボードが使いやすいかだけは確認した方が良いだろう。
個人的にはオススメしたい機器ではあるが、昨今のスマホ状況やタブレット状況を考えると、絶対的存在感を持つ製品とは言い難い。
このガジェットの本質を理解し、それでも使いたいという人が使う製品だと思うので、その納得の上での購入であれば、便利に使える製品ではないかと思う。