普通の人はコレで十分でしょ。
A9プロセッサ搭載
米国時間の21日、Appleが9.7型タブレットのiPadを発表した。3月24日から予約受付を開始するとして、もう提供までスタンバイ状態である事がわかる。
仕様としては4タイプあり、容量が32GBもしくは128GB、通信モジュールとしてWi-FiのみのモデルとWi-FiとLTE通信可能なCellularタイプの組合せとなる。
価格はWi-Fiモデルの32GB版が37,800円、128GB版が48,800円、Cellularモデルの32GB版が52,800円で128GB版が63,800円となる。価格的には随分と安くなった感じである。
その他の仕様は4モデル共通で、解像度が2,048×1,536ドット、搭載CPUはA9を搭載し、コプロセッサであるM9も搭載している。
サイズはほぼiPad Air2と同じだが、高さが1.4mm増加し、重量も僅かながら増加しているが、正直気にするレベルの変化ではないと言える。
これらから読み取るに、iPad Proの登場でiPad Airシリーズの後継機は実質上エントリーモデルという位置付けになったと考えられる。個人的には搭載するプロセッサとしてはA9Xを搭載して欲しかったところだが、そもそもA9XはiPad Proに搭載されたSoCであるため、エントリーモデルとしての位置付けである今回のiPadではA9Xを見送ったのかも知れない。
iPad mini4、続投
また、今回の発表でiPad mini4が続投される事も発表された。但し容量は128GBモデルのみでWi-Fiモデルの税別直販価格が45,800円、Wi-Fi+Cellularモデルが同60,800円という価格となった。
こちらは容量以外は全く変わっていないようで、搭載しているSoCは以前と同じA8とM8が搭載されているとみられる。これは非常に残念な話で、表示する解像度がiPadと同様なのでできれば同じA9系を搭載してほしかったところである。
もしA9が搭載できないとするならば、せめてA8XというLPDDR3(メモリ)が1GBから2GB搭載のモデルに変更してほしかったところである。
ここらへん、AppleはiPhoneには力を入れているがiPadは結構おざなりにしているように見えて、非常に残念である。
iPad miniは今後終息するかもしれない、という話が出てきていた事を考えれば、続投された事は評価できるが、同時に現在のアプリケーション状況を考慮して弱点を克服したモデルにして欲しかった、と言うのは贅沢な話だろうか?
iPhone SEも続く
今回の発表でもう一つ、iPhone SEにも言及があった。
それは、スペック据え置きで、容量を倍加した上で継続販売する、というものである(価格は多少上がるという話らしい)。
以前は16GB版と64GB版の2モデル展開だったが、今回の発表で価格はそのままに容量は32GBと128GBとなる。
その他の仕様は以前と全く同じであるため、搭載しているSoCはA9だし、コプロセッサもM9が搭載されている。
今回新型が発表されたiPadとSoCを同じにした事で、より製造メーカーの購買価格を安くして、相対的に販売価格を低価格化したのかもしれない。
だが、同時にA9には過去にあった問題をどう処理しているのか、という事がついて回る。
A9問題
さて、A9と言えばiPhone6SやiPhone SEに搭載されたSoCだが、コイツはAppleが製造してきた個体の中で特に問題が多い個体だという認識が私にはある。
というのは、たしかA9製造メーカーがSamsungとTSMCの2社購買となり、TSMC製造のコアを搭載したモデルの方が僅かながらバッテリー持続時間が長いと言われたからだ。実際測定した人もいて、実験結果でそれが明らかになっているのだが、公式にはAppleはその持続時間の差は2~3%と誤差範囲にある、としている。
これはそもそも製造プロセスの違いがあるからであり、Samsungは“14nm LPEプロセス”でA9を製造し、TSMCは“16FFプロセス”でA9を製造している違いからきている。製造プロセスが異なるため、出来上がってきたSoCのサイズも僅かながらに違っていて、Samsung版は96平方mm、TSMC版は104.5平方mmと僅かだがTSMC版のほうがダイサイズが大きいという違いがある。
今回発表のあった、iPad Air2の後継機である新型iPadとiPhone SEは、おそらくその生産数から考えて、2社購買はしない可能性がある。どちらかからの購入になると思うが、その場合、どちらになるのだろうか?
個人的には、TSMC版が生産され、それを採用するのではないかと思っている。理由は、iPhoneの直接のライバルであるGalaxyを製造しているのがSamsungであるためだからだが、もう一つの考え方をすれば、Samsung版の製造を継続する可能性もある。それが次期iPhoneの有機ELパネル製造に関する問題で、少しでもAppleの生産を有利に持っていくための政治的商材として利用する可能性がある。
ただ、現在有機ELパネルの生産に関して、Appleが別の対策を打ち出しているようであれば、Samsungに頼る必要は無くなるので、TSMC版を継続する可能性もある。
ここらへんは、Appleの調達に有利に働くように動くか、或いはライバルとの関係によって変化していくのではないだろうか。
変化のないApple
今の状況をスティーブ・ジョブズが見たら、何と言うだろうか?
確かにAppleの新製品開発サイクルで見れば、今のタイミングは新製品タイミングではないのかもしれないが、発表に驚きが何もないというAppleの製品発表は、少なくともジョブズのいた頃にはあまり考えられない事ではないかと思う。
たとえハードウェアに劇的な進化や変化がなかったとしても、それを補って余りあるソフトウェアの変化がそこにはあったように思う。
スマホやタブレットは、もう製品としては煮詰まってしまっていて、これ以上の進化はない、という事なのか、それとも今のAppleにはそうしたイノベーションは起こせないという事なのか?
もっとも、今回は記者を多数呼んでのイベント発表というものではなく、あくまでも赤いiPhone7の特別モデル発表と合わせた製品発表だったのかもしれないが、赤いiPhone7すらも驚きがないというのは、Appleの発表としては異例のように思える。
果たして今年iPhoneの10周年記念に対し、新型は革命を起こすような機種を出す事ができるのか?
最近のAppleを見ていると、そういう心配をついしてしまう。