Ryzen熱でAMD寄りになった頭をちょっと冷却。
Ryzenで良いのか?
3月頭にRyzenが発表、発売された事により、私の頭もRyzen一色と言っていいほど、新PCの中核はRyzenを中心にした構成ばかりを考えてきた。
何故なら、Ryzenは高額になりがちな8コア16スレッドという処理を比較的安価に実現できるからであり、しかもIPCもIntelにかなり近づいたと言える出来映えだったからである。
しかも、必要な構成で考えた時のマザーボード価格も、Intelコアを中核に据えた構成から比べてずっと安くできるため、相対的なコストパフォーマンスは比較にならないぐらいのものになった。
正直言えば、Intel関連製品の価格が高すぎただけ、という言い方もできるが、今まで他に選択肢がなかった故の高騰だった事を考えると、このRyzenの登場により市場は適正価格へと戻るきっかけにはなったのかもしれない。
だが、Intel製品=AMD製品ではないのも事実で、確かに同じOSが動作する環境ではあるものの、そこには性能的に絶対に同じにならない差が存在する。単に処理速度が異なるだけでなく、何ができて何ができないのか、というもっと根底にある部分でも違いは存在する。
そういう面で、もう一度Ryzenを考え直してみようという気になった。
安定のKaby Lake
まず最初に考えておかねばならないのは、Ryzen 7シリーズという、8コア16スレッドCPUをもってしても、ベンチマーク上でその性能を見た時、4コア8スレッドのKaby Lakeと大きな性能差にはなっていない、という事である。
もちろん、一部の性能はかなり向上している。それはマルチコアであればあるほど性能が上がるタイプの処理である。これは純粋に複数の演算器による合算が結果に反映する結果から、4コア8スレッドでは8コア16スレッドには太刀打ちできない。具体的にはエンコード関係などがこれに当たる。
だが、その他の性能で言えば驚く程性能差が出ていないのも事実。特にシングルスレッド性能では未だIntelコアの方が優位で、IPCもクロックが高い分Intelコアの方が有利という結果が出てしまっている。
この結果に対してのAMDサイドの答えは誰もが同じ回答で「ベンチマークテストがRyzenに最適化されれば差は無くなる、或いはAMDの方が性能が上になる、というものである。
確かにそうかもしれないが、結果として考えれば、今はまだIntelコアの方が有利であり、AMD側の主張は机上の空論でしかない。
さらに、インターフェース類の安定性に関しても同じである。
Intelは総合メーカーでもあるため、USBのコントローラーチップやLANの通信チップも製造を手がけている。これによって周辺機器のインターフェースとしてIntel製チップに最適化しているものも多く、AsMedia製チップだと今一つ不安定という機器もあったりする。
そしてAMDのCPUが持つUSBコントローラーはAsMediaとの共同開発製という話もあり、またマザーボードに搭載されているコントローラーはAsMedia製であると言われている。
USBなどの周辺機器のコントローラーはチップによってドライバも異なり、そのドライバのデキの良さなども関係してくるため、できれば信頼性の高いメーカーのドライバと周辺機器を使いたいところ。
こういう側面でもAMDは残念ながらIntelほどの安定性は得られていないという事実がある。
これは今までIntelが圧倒的シェアを持っていた名残でもある。周辺にもっと対応状況を広めていくには、もっとAMD製の環境を普及させない事には、メーカー側としても動けないという事情があるように思える。
どこで判断するか
このように、CPU単独の性能だけでみれば、確かにマルチスレッド性能で差を付ける事ができたRyzenではあるが、それでも絶対的性能と言うにはまだ遠いという現状がある。
最適化が進めば…という今後の希望的観測は、確かに今後の希望ではあるものの、事実ではない。
また、CPU以外の部分についてはさらに難しい話で、チップセットの安定性や性能に左右される問題。普段、ベンチマークなどで明確に性能差を推し量る事がない部分でもあり、あまり問題視されないが、PCはCPUだけで動作するわけではなく、総合的に判断するならチップセットを含めたマザーボードも判断基準に入れるべきである。
もちろん、BIOS/UEFIやソフトウェアの対応によって劇的に安定するケースも考えられるが、それも行われて初めて対応できる事であって、それが実現しない事には机上の空論になってしまう。
そうした事を考えると、Intel製の安定感は恐るべきものがあり、十数年にわたってシェアを取ってきた事の重大さがこうした所に出てくるという事がよくわかる。AMDはそうしたシェア故の安定感という側面を決して忘れてはならないと私は思う。
こうした総合的な面を見た上で、ではどちらを選ぶべきか? という事を考えると、ここ最近加熱していたRyzen熱も多少は冷めてくる。
たしかに低コストは魅力的ではあるが、総合的に安定性に欠けてくるようであればそれは避けるべき事であり、明確に行われるとは限らない最適化を待つ事ができなければ、Intel構成を選んだ方がよいという判断も出てくる。
やはり待つべきか
3月頭に登場したRyzenとその周辺関係は、まだ登場して1ヶ月程度のものである。
たったそれだけの期間でIntelと同等の安定性を求めるというのは酷な話なのかもしれない。だとするならば、今はまだ待つべきという事であり、今後の安定化を待つしかない。
今、飛ぶように売れているRyzenを購入した人は、いわば人柱的なところが多分にあり、Ryzen含めたPC環境は総合環境を推し量る為に人柱となった人達が調査している段階と言える。
絶対に失敗したくない、という人は、その人達のレビューを待つ必要があり、そのレビュー結果が大凡にして反映してくるのは、おそらく今年の夏以降になるのではないかと思う。
今後、Ryzen 5シリーズが発売されれば、さらにRyzen使用者が増えるだろうし、そういったところでさらにフィードバックされれば、年内には万全の体制になるのではないかと思う。
ただ、その中にあってアーキテクチャ的な違いでIntelと差の付く部分に関してはどうすることもできない。例を挙げるとAVX命令に関しては、そもそも考え方が異なる事から、実装しているメカニズムそのものが異なっている。だからここに差があるとなると、別路線で対策を講じるしか方法がない。
そういう部分はやむを得ないので、AVX命令を意識する人は現時点で要注意である(RyzenはAVX命令が弱いという事は既に分っている)。
ただ、そうした情報も含めまだまだこの先が気になるという人は、今はひたすら待つしかない。そういう時期なのだから。