Ryzenの最適化が一歩進んだ。
AMD公式電源プラン
以前より、RyzenはWindows10でそのまま使用すると、Ryzenの性能が活かされないと言われてきた。
それはWindows10の標準となっている電源プラン「バランス」において、このプランではRyzenの細やかな制御が行えず、いざパフォーマンスが必要になったときにRyzenのコアを活動させられないという問題がついて回ったからだ。
細かく言うと、Windows10の標準である「バランス」ではPステート下のプロセッサに対するパフォーマンス制御のしきい値が高く、Ryzenでは細かくクロックを上げられないという問題が発生しており、またこの標準プランでは可能な限り全ての論理コアを低速な状態にしようとするため、前述のような細かいクロック制御ができない故にアクティブ状態に遷移するまでのレイテンシによって高負荷アプリケーションの性能が低下するのである。
こうした問題は、いくらRyzenが頑張ってもIPCが上がらないという問題に直結するため、AMD側は今までWindows標準プランの「バランス」を使わず「高パフォーマンス」設定で使用する事を推奨していた。
ワットパフォーマンスにおいて、Intelコアとマトモに張り合えるだけのハードウェアアーキテクチャを持っていたとしても、ソフトウェアでその性能を発揮できない…そういう状態だったわけである。
この状態から、AMD側からは近いうちにRyzenに最適化した電源プランを発表するという話がアナウンスされていたのだが、ここにきてようやくその電源プランパッチが公開された。
AMD Ryzen Community Update #3
http://j.mp/2pfVvlP
今回配布された電源プランについて、AMDからは「ベンチマーク上でも複数のゲームで性能向上が確認された」というコメントが出ており、その比較資料が公開されている。
資料、おかしくない?
このRyzen用の電源プランを導入する事で、ようやくRyzenも省電力&ハイパフォーマンスが可能になる、と言いたい所なのだが、今回発表された資料を見ていて、今一つ納得できない部分がある。
というか、資料そのものは正しい値を示しているのだろうが、受け取る側の心理としてこの資料の見せ方は正しかったのか? と感じるのである。資料では、電源プランの「ハイパフォーマンス」状態と「Ryzen用バランス」の比較グラフで公開されている。この比較対象、本来なら標準プランの「バランス」と「Ryzen用バランス」での比較じゃないと意味ないのでは?
このグラフでは、グレーの帯が「ハイパフォーマンス」設定で、オレンジの帯が「Ryzen用バランス」となっている。
グラフをパッと見ると、オレンジの帯の方が低い数値が多く、性能低下してるじゃないか、という印象が強くなる。
グラフの縦軸は「平均FPSの差(Difference)」となっているので、おそらくWindows標準プランの「バランス」の時と比べてWindows標準の「ハイパフォーマンス」と「Ryzenバランス」の平均FPSがどれだけ向上しているのか、という事を表すグラフだと考えられる。
パッと見た感じ、オレンジの帯の方が低いという印象を受けないだろうか?
考えれば当たり前の事なのだが「バランス」同士を比較すればわかりやすいのに、「ハイパフォーマンス」と比較するから、結果スコアが悪いという印象を受けかねない。
実際には標準プランの「バランス」よりもパフォーマンスは出ている、という事に違いはないのだが…。
で、省電力比較は?
先程のグラフの他には、最近ゲーム側のUpdateでRyzenに最適化した事で性能向上したWARHAMMERの例を紹介しているだけ。
なので基本的には先程のグラフとその説明だけが今回の最適化パッチの話題になるのだが、結局、Windows標準プランの「バランス」と「Ryzenバランス」の省電力性能の比較、もしくは「ハイパフォーマンス」と「Ryzenバランス」の省電力性能の比較が掲載されていない。
なので「Ryzenバランス」が、具体的にどれぐらいの省電力性能を持った上で前述の性能を達成しているのかが資料として提示されていない。
AMDはRyzenの性能を絶対的に信頼しているのなら、その手のデータは出せるハズだと思うんだが、これは単に手抜きか、それともユーザー側でやってね、という事なのか?
それとも、そもそもAMD側が出すには不都合な結果しか招かないという事なのか?
私としては、RyzenがIntelコアとマトモ以上に勝負できるコアだと言いたいのなら、全てをぶつけて真っ向勝負してホシイと思う。
仮に今回のパッチで、結果的にWindows標準の「バランス」よりもちょっと電力を多めに使うようになっちゃいました~というのなら、それでもいいと思う。少なくとも「ハイパフォーマンス」時よりも省電力なハズだから。
細かい電力制御をした事でよりハイパワーを経済的に使える様になった、という解釈でいいじゃないか、と思うのである。
今回のAMD公式の省電力パッチは、有り難いと思うと同時に、AMDの詰めの甘さを感じずにはいられない、というのが私の見解である。
ま、そう遠くない内にもっと細かい実証データがユーザー側から出てくる事になるだろうと思う。
とにかく今はRyzenユーザーはこのパッチを導入し、より最適化された環境を構築してホシイところである。
いよいよRyzen 5シリーズの発売も間近に迫ってきている。
今度は電力側でなく性能側の最適化パッチが多数出てきてくれる事を祈ろう。