作られるものはホントに正しい情報なのか?
2万人を投入する中国政府
中国は言うまでもなく共産主義国家であり、残念ながら自由に国民がインターネットを活用する事ができないとされている国である。
しかし、そうは言っても14億人とも言われる総人口の中、インターネット人口は7億人を超えていると言われていて、そうした人々の知識の根源としてWikipediaのようなサイトが本格的に存在しないというのは、どうにもバランスが悪い。
何故Wikipediaのような本格的な百科辞典サイトが存在しないのか?
存在しないのではなく、百度(バイドゥ)などで、独自にそうしたサイトは運用されているのだが、残念ながら中国政府の検閲によって制限を受けていて、大幅にエントリーが間引かれているという事情があるらしい。
中国政府からすると、そうした自由意志によって作られる百科辞典サイトは都合が悪い、という事なのかもしれない。
…都合が悪い、という時点で、中国政府が何らかの関与によって国民に影響を与えているという事を自ら暴露しているようなものなのだが、中国ではそれが普通、という事である。
その中国政府が、今度は人海戦術で新しいオンライン百科辞典サイトを作ろうとしている。
何でも、100以上の細かい分野を網羅するために、2万人の執筆者と数千人の学者を起用しているというのである。
そのサイトの名は「Chinese Encyclopedia」…というかどうかは知らないが、まさしくこの名が付いても不思議ではない、本格的な百科辞典サイトである。
追い越す事が最終目的
中国政府がこのような大規模な雇用を行ってでも作ろうとしている百科辞典サイトの目的は、何よりもWikipediaに肩を並べる事ではなく、追い越す事が最終目的だと言う。
こうした百科辞典サイトによって、中国の科学技術開発促進と歴史遺産などの記録が社会主義のコアな価値促進に寄与すると考えているらしい。
だが、中国政府は未だ自由なインターネットアクセスを制限しており、2015年に開催された世界インターネット会議で、中国が世界最先端の検閲技術を駆使している事を公言し、国家主席は政府による検閲を正当化するスピーチをしている。
こんな個々の自由のないオンライン百科辞典に2万人もの人員を投入したとして、果たして本当の意味で正しいオンライン百科辞典は作られるのだろうか?
結局は中国という国家にとって都合の良い解釈ばかりで作られる記事ばかりでは、世界規模での共有知識と成り得ない。
歴史とは、たしかに視点が変わると解釈が変わるが、それでも事実に基づく状況証拠は一つの真実しか存在しない。だが、残念な事にいくつかの国は過去そうした事実すらねじ曲げてきている歴史がある。
もちろん、米国や日本がすべて正しいとは言わない。それでも個々の自由発言がオープン化されているだけマシというもので、それすらない国家の作るオンライン百科辞典の信憑性は、果たしてどこまで信用に足るものなのか?
何はともあれ、中国政府は2018年公開に向け、30万以上の項目を掲載する中国版Wikipediaを構築しようとしている。
出来上がるモノが、国民を洗脳する事のないような、意味のある知識の泉である事を祈りたい。
参考サイト:
South China Morning Post