まだ決定したわけではないが今の時点で考える。
検討するのはRyzen7
Ryzen7シリーズが市場に投入されて、既に2ヶ月が経過した。
既にマザーボードの品切れ状態も解消され、未だに人気なRyzen7 1700はタイミングによるが、その他の製品であれば入手できないという事はなくなった感じである。Intelコアよりも多数のコアを内蔵し、それでいて価格がIntelコアの同等品の半額というコストパフォーマンスもあってか、Ryzenの人気はある種加熱したものがあり、私自身が予想していたよりも随分とヒートアップしていたように思う。
そんな人気コアであるRyzen7だが、Intelコアよりも多数のコアを搭載しているからといって、全てが高性能というわけではない。
そこには、得手不得手というものがあり、これはRyzen以前のCPUでも存在していた性能比である。
そこで、発売して2ヶ月が経過した今、その得手不得手を考えた上で、どちらが選ぶべきCPUたり得るのか? という事を再検証してみたい。
先に言っておくと、ここにコストというものが繋がってくるので、それも踏まえると判断は結構揺らいでくる。あくまでも用途とコストの総合的なところで考えたい。
世間ではRyzen7を絶賛
CINEBENCH R15というベンチマークがある。
コイツはCPU性能比較に使われるベンチマークだが、コイツでRyzen7とIntelコアを比較すると、軒並みRyzen7が高スコアを残す結果を出す。
Ryzen7 1800Xと同等の8コア16スレッドのIntel Core i7-6900Kと比較しても、Ryzen7 1800Xが6%弱、高スコアを出してくる。
片や6万円台、片や12万円台というコスト差で考えれば、確かにRyzen7 1800Xのコストパフォーマンスは素晴らしいものがあるが、実は性能だけで見ると1800Xは6900Kに対してクロック周波数で12%ほど上回っている。だから同じクロック数で勝負させると、本当に1800Xが勝利するかはわからない。
シングルコア性能で6%弱、マルチコア性能で4%弱の性能比なので、クロック周波数の差を埋めてしまうと6900Kの方が高性能になる可能性があると言える。
もっとも、前述した通り、この性能を約半額で手に入れられるという事を考えれば、Ryzen7を選択する人が多くなるのはうなずける話である。
ゲーム系ベンチマーク
次はゲーム系の話だが…これはもう今までいろんなサイトで検証されている事なので、ザックリと書くに止める。
結論からすると、Intel圧勝といってもいい。もちろん理由があって、これは最適化されている事が一番の理由である。
残念ながら、CPUとGPUがIntel&NVIDIAの構成という形が最も性能を出せる環境にあるゲームが多いのである。
中には、AMD系GPUに最適化されているゲームもあるが、現時点ではNVIDIA系GPUが圧倒的に強く、またそれに合わせてIntelコアの命令セットに最適化されている処理が多いのが現実である。
Ryzen7がその性能を光らせるのは、概ね高負荷状態の時で、4K解像度にしたときや、描画品質を最高性能にした時、また高フレームレートにした時などである。高負荷状態であれば、多数のコアを持っている方が重い処理を分散して処理できる分有利になる、という事である。
なので、基本的にゲームを想定している場合は、高負荷になる前提で考える必要はあるかも知れない。
エンコードテスト
さて…一番厄介なのがこのエンコードテストである。
動画は生データで扱う事はほとんどなく、全て生データを編集してエンコードして動画を作成する。このエンコードは昔から重い処理の代名詞みたいなところがあり、エンコードを早く処理できるかどうかが性能指標の一つと言えた。
現在はGPUでこういった処理のサポートが行われるようになり、随分とCPU負荷は小さくなってきているが、これをもしCPUだけで行ったらどうなるか? というテストをすれば、CPUの性能指標になると言える。
実際、これでIntelコアとRyzen7を比較すると、Ryzen7 1800XはCore i7-6900Kをも上回る結果を出してくる。これはCINEBENCH R15の時と同じで、クロック周波数がRyzen7 1800Xの方が高いという理由も手伝って1800Xが最速という結果である。
ただ、実はこのエンコードテストだけは、使用するコーデックによっても結果が異なってくるという問題がある。
というのは、CPUにはそれぞれ命令セットと呼ばれるものが組み込まれていて、時にAVX2.0を使用するコーデックなどがあると、Intel製のAVX2.0に向いているのか、それともAMD製のAVX2.0に向いているのかで性能が変わってくる。
アマレコTVなどで使用される「AMV4」は実はAMD製AVX2.0では性能が出せないと言われている。これはAMV4の公式サイトを見ればわかるが、RyzenなどはAVX2.0ではなくMME4.1を使用するよう推奨している。
命令セットはセットとしては共通だが、その処理方法はCPUメーカーによって異なっているため、性能が伸び悩んだりする事がある。
だからエンコードは負荷テストとしては確かに指標にはなるが、その結果はCPUトータルの性能という事になる。この点だけは注意である。
どちらが良いのか?
さて…ここからは私がIntel製コアを買う方がよいのか、それともRyzen7を選択する方がよいのか? という事を考えて見る。
まだメインPCの入れ替え時期にはならないため、具体的には夏以降の話になるのだが、その時期になると、IntelからはCoffee Lakeが登場すると言われていて、しかもCoffee LakeのCore i7系は全て6コア12スレッドになると言われている。
現時点でも、IntelコアはIPCだけを見ると高いクロック周波数からRyzenと比較して高い数値が出ているので、これに6コア12スレッドというマルチスレッド処理が期待できるようになると、その性能差はほぼ無くなってしまう可能性がある。
また、現時点であっても、ゲーム系では圧倒的にIntel優位にある事などを考えると、案外私などはIntel製にしておいた方が無難な結果だったりする可能性がある。
ただ、問題はコストで、Intel製がAMD製に並ぶくらいの価格設定になるようであれば、今度はAMD製を選ぶ理由がなくなってしまう。
しかもIntel製はマザーボードなども含めた総合的性能ではやはり有利で、AMDのように相性問題に苦しむ事もない。
つまり、現時点でIntelかAMDかという話になると、コストの問題ぐらいしか差が付かないのである。
しかもRyzen発売2ヶ月後の今となると、Intelも価格を下げているため、それこそ差がない形になってきている。
なので、現時点でIntelコアが良いのか、それともAMDコアが良いのかという話になると、答えは使い方次第、という答えしか出せない。
それが結論であり、残念だが現時点での限界だったりする。
私からすると、Ryzenへの最適化対応がもっと活発に行われ、いろいろなプログラムでRyzenに最適化してくれるだろうという予測をしていたのだが、AMDは電源パッチを出したその後、表立って最適化パッチを出すこともなく、今まで来ている。
今後、そうした最適化パッチが登場するのかどうかは分らないが、もし出ないのであれば、思った程のパフォーマンスは出ていない、と結論づけても致し方ないかも知れない。
夏までの動向に大きな変化はないだろうから、もし私のように今年の夏にメインPCを更新、もしくは入れ替えを考えるのであれば、もう少し、今度はIntelの情報を待ってから考えた方がいいかもしれない。
腐ってもIntel…とは言い過ぎかも知れないが、今まで積み上げてきたものがあるので、総合的に考えれば、そうした作り込みの確実さは、やはりIntelに分があると言えるのだから。