iPhoneからヘッドフォンジャックが消えて以降、随分と普及したが…。
コードレスの便利さ
iPhone7発売以降、ヘッドフォンジャックがなくなり、iPhoneでヘッドフォンを利用するには2つの選択肢から選択しなければならなくなった。
一つはLightning端子からヘッドフォンを繋ぐ方法。
これは充電しながらヘッドフォンを利用出来ないという問題があり、それを克服した製品も登場するも、そのユニットが邪魔という新たな問題が発生し、コードもある関係からかなり微妙な使い方と言えるように思う。
そしてもう一つがBluetoothを利用したコードレスヘッドフォンを使う方法。
AirPodsというApple純正のBluetoothイヤフォンもあるが、この手の製品が爆発的に増えたのは、明らかにiPhoneからヘッドフォンジャックがなくなったからではないかと思う。
実際、通話も出来てしまう事から、今では手放せないという人も多いと思うが、このコードレスヘッドフォンは大別すると3つの系統に分類する事ができる。
1つ目はAirPodsと同様の左右独立型Bluetoothイヤフォンで、これは左右のユニットすらコードレスなのが特徴。長所は完全コードレスという事だが短所はバッテリーの持続時間が短いので、充電器を兼ねているケースが手放せないという事。
2つ目はネックバンド型Bluetoothイヤフォンで、首にかける本体から左右にちょっと短めのコードで左右のユニットが接続されているもので、本体とはコードレスであるものの、左右のユニットは一体化しているのが通例。ネックバンドにバッテリーを内蔵する事から、8~10時間程度は駆動させられるため、通常の使い方であれば常に充電できなけばならないという程でもないのが特徴。
そして3つ目がオーバーヘッド型で、イヤフォンではなくヘッドフォンと言えるタイプの形状で、それ故バッテリーも比較的大きめのものを搭載できる事から、他2種よりも長時間使用が可能なのが特徴である。
とまぁ、こんな特徴のある3タイプから自分が欲しいと思うものをピックアップすると、まず最初にほとんどの人が夢を見るのが1つ目の完全左右独立型である。完全独立型は最近出てきた新しいタイプで、小さなユニットを耳に挿入する関係から、落としかねないという心配はあるものの、一番近未来感があるというのがその理由だが、メリットとデメリットをちゃんと考えた方がいい。
当初、私もこの完全独立型が欲しいなと思ったのだが、バッテリーの充電を気にしなければならないという問題や、もともとBluetoothヘッドフォン独特の問題がある関係から、現時点で完全に自分の希望に届く製品はない、と判断して現在は購入検討候補から外してしまっている。
2つ目、3つ目の違いはネックバンド式なのかオーバーヘッド型なのかという違いで、バッテリーの持ち時間こそ多少違いがあれ、あとはコンパクトさ重視かどうかと、前述したBluetoothヘッドフォン特有の問題次第で、選択する製品が異なってくるのでないかと思う。
Bluetoothヘッドフォン特有の問題
一応、今回比較対象にしているのは、ノイズキャンセリング機能を搭載したモデルに限定している。
理由は音漏れの心配をしなくていいから、という事と、時代はもうノイズキャンセルに突入していると思っているから。
それを前提にBluetoothヘッドフォン特有の問題を考えてみる。
そもそも、その問題というのは何か? というと、それはズバリ音質の問題である。
私も最近調べて理解しつつある事なのだが、通常のワイヤード(有線)ヘッドフォンは、そのドライバーユニットの作りだけで音質を語る事ができるのだが、Bluetoothヘッドフォンは、このドライバーの作り茸で音質を語る事ができない。これは無線故の問題である。
まず、Bluetoothという通信形態で、データのやり取りをしている方式(コーデック)を考える必要がある。
私が今の所理解しているのは、5つのコーデックである。
一つ目はSBC(SubBand Codec)と呼ばれる通信コーデックで、全ての基本とも言えるものだが、問題があまりにも多い。伝送に遅延があり、高音域を削ってデータサイズを圧縮しているため音質も良くなく、無音時にはホワイトノイズが目立つと悪い所だらけなのだが、Bluetoothの音楽プロファイルであるA2DP(Advanced Audio Distribution Profile)の標準コーデックなので対応している機器が非常に多いという特徴がある。
まぁ…イマドキのBluetoothヘッドフォンを考えるとき、このSBCを基準において検討している人はいないとおもうので、まずそういうコーデックがあるという事さえわかっていれば良いだろう。
問題はこれ以外の4つである。
AACとaptX
5つあるコーデックの残り4つのウチ、ほとんどがこの2つのどちらかに対応している。
それがAAC(Advanced Audio Codec)とaptX(アプトエックスと読む)である。
AACはApple製品で使われる事の多いコーデックで、高圧縮だが送信遅延がほとんどなく、音質的にもSBCよりずっと上、比較的高品位と言われているコーデックである。
そしてaptXは、SBCほど圧縮しない為に音域が消えることもなく、それ故に高音質かつ低遅延という特徴があり、またAACと違って一定の音域データを削除しているわけではない(だから圧縮率が高くない)という特徴がある。なので個人的にはAACよりはaptXの方が高音質なのではないかと考えている。
この2つをそのまま比較すると、どちらも高音質なのでそんなに差はないと思われるが、時々ヘッドフォン側でハイレゾにアップスケーリングする機能があったりすると、多分aptXの方が元データが存在する関係からより正確に高音質化できそうな感じがする(実際はわからんけど…)。
スマホで言えば、iPhoneはAAC、AndroidはaptXが主流のようなので、対応ヘッドフォンを検討する場合は、これら対応コーデックを確認すると良いだろう。
ハイレゾ対応コーデック
そして残り2つのコーデックだが、それがaptX HDとLDACである。
aptX HDは見ての通りaptXの上位コーデックで、ビットレート固定式の圧縮方式を採ったハイレゾコーデックである。
LDACはSonyが提唱しているハイレゾコーデックだが、これは動的にビットレートを変更して全体のデータ圧縮を行う方式であるため、ビットレートの最大値がaptX HDの576kbpsより上の990kbpsになる。なので、LDACは通信状態によっては再生が途切れる可能性があるようだが、LDACを採用する製品ともなればハードウェア性能もそれなりのものを搭載しているので、聴く側としてはあまり気にしなくても良いだろう。
個人的にはaptX HDのビットレート固定に惹かれる部分はあるが、そもそも採用している製品もそう多くはない。ワイヤード(有線)の世界ではもうハイレゾは当たり前の広まり方をしているが、ワイヤレスではまだこれからの対応と考えるべきかもしれない。
コーデックと音質の良さ
さて、今までコーデックを説明してきたが、基本的にほとんどの製品はSBCとAAC、もしくはSBCとaptXには対応していると考えられる。なので自分が使用する機器と合わせて製品を選べば問題ないのだが、音質を気にするとなると、ヘッドフォン特有の問題がついて回る。
本来の音質の良さであるドライバーユニットの性能と、コーデックとの組合せによっては、ハイレゾコーデック対応でそのコーデックで聴いているのにハイレゾコーデックに対応していない製品の方が音が良く聞えたりする事がある、という事である。
ましてそれがノイズキャンセリング機能を持っていれば、そのノイズキャンセリング機能のチューニングによっても、この音の善し悪しが変わってくる。
だから、一概にハイレゾコーデックに対応しているから高音質、と断言できないのところが、Bluetoothヘッドフォンを選ぶ難しさであり、判断の難しさである。
先日、私が注目していると言ったSonyの「WH-1000XM2」は、今日紹介した5つのコーデック全てに対応しているオーバーヘッド型のBluetoothヘッドフォンだが、音の良さの比較をすると、これも先日紹介したBOSEの「QuietControl 30」はSBCとAACしかコーデックの対応はしていないが、音は非常に良い音に聞こえるという評判がある。どうも「WH-1000XM2」は音が籠もって聞こえるというのである。
オーバーヘッド型とネックバンド型という違いがあるにしても、このユーザーレビューの差には歴然とした差があり、対応コーデックの多さを魅力として「WH-1000XM2」をチョイスするか、それともレビューの評判で「QuietControl 30」をチョイスするか、これは非常に難しい判断を要する。
つまり、コーデックと音質の良さは、関連性があまりない、という事である。
実はワリと真剣に悩む
「WH-1000XM2」も「QuietControl 30」の双方のBluetoothヘッドフォンを視聴してきたのだが、それでもなお、どちらを選択すべきか悩んでいる。
コーデックの多さはそれだけで製品的魅力があると実は思っていて、特にオーバーヘッドタイプはエージングによって音が後々化ける可能性がある事から、今の評価だけで判断ができないところがある。
また、モバイル目的ならネックバンド型の「QuietControl 30」はそれだけで魅力的である。連続再生時間も最大10時間とワリと長めであり、音質そのものの評判も良い。
実際「WH-1000XM2」を聴いたとき、多少音が籠もっている感じがしたのは間違いないが、それはダイナミック型というヘッドフォンの特性と音のチューニングで若干低音が強調されているから、という差であるようにも思えた。…まぁ、人によっては「WH-1000XM2」の音は全然ダメだという人もいるが、私としては断言できるほど私の耳も良いわけではないのだろう、そんな毛嫌いするほどではなかった。
なので、今ホントにこの両者で迷っていたりする。
室内で「QuietControl 30」を使う事の抵抗はないが、外で「WH-1000XM2」を使用する抵抗はあるので、使い方の広さという意味では「QuietControl 30」が頭一つ飛び抜けているかな、とも思うが、室内での使い勝手はオーバーヘッド型の方が扱いやすいし、バッテリーが30時間持つという強みもある。
コレ、選ぶの無理じゃない?(爆)
ある人は言う
選べないなら…両方買えばいいじゃない!
もうね、あんたマリーアントワネットかよ、というツッコミもあるかもしれないが、まぁ、確かに両方買えば迷う必要はないわけですよ。
自宅では「WH-1000XM2」を使い、外では「QuietControl 30」を使えば…という事だと思うが、これ、真面目に両方買うとそれだけで8万円弱コース。
あり得ないし(爆)
ただ、今年iPhoneの刷新を考えている身としては、そこも視野に入れて製品検討しないとダメなのかな、とか思ったりする時もある。
もうしばらく迷う事にはなると思うが、良い製品があるようなら、ぜひ紹介してもらいたい所である。