導入直前だからこそ考える。
8700Kとは
IntelのCoffee Lake-Sの最上位である、Core i7-8700Kは、言うまでもなく現行Intel製メインストリームCPUのフラッグシップCPUである。
上位にCore i9がある関係でIntel製CPUの頂点ではないが、メインストリームで提供されるCPUとしては初の6コア12スレッドCPUであり、その性能もライバルのAMD Ryzen7 1800Xに迫るCPUである。
このCPUが359ドルという価格で提供された事に本当の意味があり、AMDのRyzen7 1800Xより安い価格でそれ相応の性能を提供しているという事実が、Intelとしてライバルに追いつく…いや追い抜いたという自負を与えているのかもしれない。
だが、一方でその中身を見ていくと、確かにシングルコア性能はAMDのRyzenシリーズよりは高性能であり、それ故に最大12スレッド動作する事によってRyzen7 1800Xに迫る性能を獲得する事ができたが、その結果消費電力や発熱量は7700Kよりもずっと高く、それ故ベースクロックを前世代の7700Kより低く設定せざるを得ないコアになった。
実際、動作させるプログラムによもよるが、8700Kは時にRyzen7 1800Xよりも消費電力が上がるケースがある。
相対的に見て、性能を上げるために消費電力のリミットを引き上げた…8700Kはまさにそんな感じのコアである。
なので、常用する場合は少なくとも7700Kの時よりは消費電力は上がると見て間違いない。Ryzen7 1800Xと比較すると、動作させるプログラムによって変わるが、ほぼ同等といった所か。
それ故に、組み合わせるビデオカードによっては、結構大がかりな電源を搭載しないといけなくなるかもしれない。
Ryzen7 1800X
2017年3月に登場したAMDのメインストリーム最上位CPUがRyzenQ 1800Xだが、基本的にRyzen7はそのクロック周波数とオーバークロック耐性のみが異なっているシリーズで、1800X以外に1700Xと1700が存在するが、これらは全て8コア16スレッドのCPUになる。
この上位に、Ryzen Threadripperが存在するが、こちらは最上位が16コア32スレッドとさらに搭載コア数が多く、TDPも180Wとメインストリームとは言えない仕様であるため、今回私は検討対象に入れていない。
Ryzen7 1800Xの現在の流通価格は48,873円が最安値(価格.com調べ)とCore i7-8700Kの流通最安値44,380円とあまり差がない状態になっており、現時点では価格的にどちらを選んでもあまり違いがないと私は考えていて、機能的に最適なものであれば、どちらを選んでも問題はないと見ている。
Ryzen7 1800Xの最大の強みは、何と言ってもその8コア16スレッドというマルチスレッド性能で、動画などのデコードの速さは従来のメインストリームCPUとはかけ離れた性能を持つ。しかしながら、エンコードに関しては命令セットによって速度が変わってくるため、圧倒的にIntel製CPUが強く、その中でも物理6コアを持つ8700Kは圧倒的強さを持つ。
他、ゲームなどはかなりの比率でIntel製CPUに最適化されている事もあり、有利不利で言えば8700Kの方が上位に立つ。
しかしながら、Ryzen7はシリーズとして1700Xであろうが1700であろうが、同じ8コア16スレッドであるため、オーバークロック前提であればあえて1800Xを導入する必要も無い。
価格を抑えようと思えば1700を導入してオーバークロックで性能の底上げをしても問題はない。
そうなると、コストで考えればRyzen7の方が有利かもしれない。
チップセット
8700Kと1800Xでは当然ながら組み合わさるチップセットが異なる。
Intelコアである8700KはZ370、AMDコアであるRyzen7はX370が候補になるが、基本的にこの両者に大きな違いはないと見ているが、僅かながらIntelの方がインターフェースが充実している感じでもある。
しかし、一番の違いは、PCI Express3.0×4が、CPUに直結しているAMDチップセットと、あくまでもチップセット経由であるIntelチップセットとの違いである。
IntelコアはGPU接続用のPCI Express3.0はCPUに直結して接続しているが、その他は全てチップセットであるZ370を経由して接続される。だからNVMeを接続する場合は、CPUとチップセットのデータのやり取りにおいてNVMeが干渉する事になる。しかし、AMDコアはNVMeストレージを1つだけ使う分にはCPUに直結しているので、チップセットとのデータのやり取りにNVMeストレージは一切関与しない。だからデータアクセスの面でAMDは僅かながらに有利かもしれない。
また、Intel製であるZ370はUSB周りは当然Intel製のUSBコントローラーという事になるが、AMDはAsMedia製という事になる。
私見かもしれないが、USBコントローラーとしてはIntel製、NEC製、Renesas製といったものの方が安定としている、という気持ちが強く、AsMedia製は今一つ…と考えているので、この面で言えばIntel製のZ370の方が有利に感じる。しかし、AsMedia製であるAMD製X370には一つ利点があって、USB3.1 Gen2.0がコントローラー内に実装されているという事。IntelはまだGen1.0であるため、統合化されていないという弱点がある。但し、マザーボードメーカーが別部品でコントローラーを実装してしまえば、この問題はそもそも問題にすらならないのだが。
こうして総合的に考えて見ると、一長一短でどちらを選んでも大差ない、という所なのだが、あえて言えば安定のIntel製が自分的にお薦めと言えるかも知れない。
やはり8700Kか?
CPUとチップセットで考えると、やはり自分的には8700Kを選ぶ意味の方が大きいかも知れない。
おそらく今後数年の間に、いろんなアプリケーションがよりマルチスレッドによって処理効率を向上させてくる可能性があるが、現時点ではシングルスレッド性能に頼っているプログラムが多いのも事実だ。
近い未来を見据えてマルチスレッドに強い環境を手に入れるか?
それとも現時点を基準にしてより性能を引き出しやすい環境を手に入れるか?
おそらくこの二択で、選ぶCPUとチップセットが期待ってくるように思う。
では私はどうなのか?
悩む部分ではあるのだが、5年くらいでPCを更新する事を前提に考えるなら、やはり現時点を基準にした方が良いように思える。
マルチスレッドにプログラムを最適化させていくには、それなりの開発基盤が必要になるだろうし、ここ数年もずっと同じ事を続けている。
しかし結局はそれが思うように進んでこなくて、AMDもBulldozer系アーキテクチャが想定していた能力を発揮しなかったように思う(Bulldozer系はシングルスレッド性能が極端に弱かった)。そしてそのAMDも結局はシングルスレッドをBulldozer系から一気に引き上げてZenアーキテクチャを作ってきて今に至っている事を考えると、今後マルチスレッド化が進むとしても、その速度は緩慢だろうし、全てに浸透するには時間がかかりそうな気がする。5年というサイクルで考えれば、マルチスレッド性能を最上位に考える時期は次のサイクルかその後になるようにも思える。
と言うわけで、とりあえず今回も私はIntel系コアで行く事が妥当のように思えている。
以前も比較してみたが、改めて考えて見てもその結論は変わらないようである。
当初はZenコアの登場を待ちわびていたが、結局導入が遅れたことでIntelの底力を見る事になり、結局はまたIntel系へと向かう事になったのだが、ただ、ビデオカードだけは今回NVIDIAからAMDへと切り替えた。
性能的に言えば絶対的にNVIDIAを選択すべきところ、Fluid Motionの導入の為だけにAMDをチョイスしたワケだが、結果、同価格のNVIDIA製品を導入した場合と比較して消費電力の増大と最大性能の低下を招くこととなった。
それでも自分的には使える機能が増えた事の恩恵の方が大きいと感じているし、性能的には満足以上の領域にあるビデオカードの投入となったので公開はしていない。
なのであとはCPUとチップセット含めたPCのメイン構成である。ココを決めてしまって固めてしまえば、メインPCの移行は完結する。
しかし…こうやってメーカーを迷えるようになったというのは、ある意味幸せな事だなと久々に実感した。
AMDの復権なくば、こんな事もできなかったワケで、今は素直にAMDに感謝である。