第9世代のKモデルで戻るという話。
STIM
リーク情報ではあるが、Core i 9000シリーズのKモデルには、CPUとヒートスプレッダの間に使われる熱伝導体としてハンダが使われるという話が出ている。
遙か昔…Intelでも、この熱伝導体にはハンダ(ソルダーペースト)が使われていたが、Ivy Bridgeの頃からペースト状のサーマルインターフェースマテリアル(グリス系のもの)が使われ、CPUクーラーへの熱伝導率が悪くなったと言われてきた。
グリスが使われたのは、純粋に原価低減を目的としたものと言えるが、Intel側としては十分な性能が見込める製品である事から、あえて原価の高いハンダを使うよりはグリスで原価を抑える方が良いだろうという判断だったのかもしれない。
だが、当然のことながら一部のオーバークロッカー達からは苦言が呈されており、その結果、殻割りなどという、一度ヒートスプレッダを強制的に剥がし、その上で高性能なグリスや簡易的なハンダを盛り付け、元に戻して使用するという、メーカー保証外の行為が横行し始めた。
このサーマルペーストグリスは、Coffee Lakeまでずっと使われ続けていて、私が持つCore i7-8700Kもグリス系が使われている。
なので8700Kを使用している人の中には、殻割りをしてオーバークロックを実施している人も当然いて、YouTubeなどでもそうした動画が公開されているケースもある。
ところが、前述したようにIntelの次の世代である第9世代Coffee Lake RefreshのKモデルに関しては、再びハンダ(Solder Thermal Interface Material、略してSTIM)が使われるというリーク情報が出たため、当然一部のマニアからは賞賛されているのだが、こうしたハンダを使う事になった背景を考えると、そこには多少なり複雑な思いも生まれてくる。
ターボブースト5GHz
Coffee Lake Refreshの最上位版であるCore i9-9900Kは、現時点では8コア16スレッドで、そのベースクロックは3.6GHz、ターボブースト時には5GHzで駆動するモデルと言われている。
TDPは95Wで、この値こそ変わらないものの、Core数が8コアと多くなる事を考えると、おそらく相当な発熱量になるだろうし、また消費電力も最大時では相当に上がる事になると思われる。
その相当に上がってくる熱の処理を考えた時、Intelは現状のグリス系では不都合が出た、と判断した可能性がある。ハンダ系にする事でより熱を外に逃がす必要が生まれた為、オーバークロックを許容するKモデルでSTIM採用という判断をしたのではないだろうか。
実際、ライバルのAMDのRyzen 2700Xでは、ハンダが使われていると言われており、オーバークロックした時の安定性などは格段に良いと言われている。
そうしたライバルの動向を考えると、IntelもKモデルはよりオーバークロックに適した形で提供しないと、ユーザーの反応によってAMD人気を危惧しないといけない状況になってきた、という事なのかもしれない。
Z390との組合せ
今回、Coffee Lake Refreshが登場するにあたり、チップセットとしてZ390が登場すると言われている。
その組合せの中で言われているCore i9-9900Kのスペックとしては、以下のようなものになる。
・Z390チップセットをサポート
・2ch DDR4-2666に対応
・Solder Thermal Interface Material(STIM)を採用
・USB3.1 Gen.2とWireless-ACを内蔵
・PCI Expressのレーン数はプラットフォーム合計で40レーン
・Optane Memory及びOptane SSDをサポート
・Thunderbolt 3をサポート
他にも300シリーズ全てのチップセットに対応するというのもあるが、これはCPU側のスペックと言える。
また、PCI Expressのレーン数だが、おそらくCPU側で16レーン、チップセット側で24レーンという組合せとなり、CPU側のレーン数はCoffee Lakeと変わらないままではないかと予想される。
また、気になるのは対応メモリとして2666MHzまでの対応に留まる可能性があるという事である。第2世代Ryzenは2999MHzまでの対応だったので、メモリ対応に関してはAMDに遅れをとる事になる。
個人的には3200MHzに対応して欲しいところではあるが、何かIntel側で制約でもあったのだろうか? それとも10nmへとステップアップするまでは現行のままで行くつもりなのだろうか?
秋頃には登場すると言われているCoffee Lake Refreshだが、依然としてまだこのあたりがリーク情報に頼らざるを得ないというのも、残念な話である。
とりあえず、Core i9-9900Kは米国ドルで450ドル程度という話もあるので、それなら何とか手の届く価格帯かな、と思う。
ただ、じゃあRyzen7よりも選ぶだけの価値があるのか? という話になったとき、判断に迷えるようなら、市場として正しい状況になったと言えるのではないだろうか?