富士フィルムのX-T3がイイ感じ。
3倍の処理能力
富士フィルムが9月6日にミラーレスカメラ「FUJIFILM X-T3」の発売を発表した。今回はイキナリのブラックとシルバーの2色構成で発売されるようで、価格はオープンプライスだが、店頭予想価格はボディで18万5,000円前後となる。レンズキットも同時発売で23万5,000円前後になり、キットとなるレンズはXF18-55mm F2.8-4 R LM OISとなる。搭載する撮像素子はAPS-Cサイズの有効2,610万画素のX-Trans CMOS 4センサーで、裏面照射型が採用された。従来ISO200からとなっていた常用最低感度が引き下げられ、ISO160からとなり、上限は12800になる。拡張時には80~51200となるので、最近出回っている高感度モデルよりは感度は低いものの、困るという程ではない。
画像処理エンジンもX-Processor 4に進化し、クァッドCPUを搭載した事で処理速度が3倍と大幅に向上した。
この処理速度の向上により、静止画撮影時のAF速度や精度も向上し、像面位相差AFにおける低輝度限界が-1EVから-3EVまで拡張された。
この他、動体を捉えやすくする機能として「スポーツファインダーモード」を搭載し、画面内に1,660万画素(1.25倍クロップ)相当のフレームが表示され、被写体がフレームに入る前から対象を視認できるという機能で、通常より短いブラックアウトタイムで撮影できるようになる。
また顔AFも前機種と比較して約2倍に向上し、AF-Cにも対応する事で動きのあるポートレート撮影や正面から横顔まで、顔検出や瞳AFが難しかったシーンでもピント合わせを行う様になった。
あらゆる撮影が向上
動画撮影も、4Kの他、DCI 4Kでの記録にも対応し、連続記録時間は4K、DCI 4Kともに29.97pで約20分記録できる。
また4K/60Pの10bit出力も実現しており、APS-Cサイズ以上のセンサーを搭載したミラーレスカメラとしては世界初となる。
ノイズリダクション処理も強化され、直前のフレームとの差分情報を元にノイズ低減を行う「4Kフレーム間NR」という機能を搭載する。ISO12800でのノイズを約2段分改善したという。
また、静止画の連写枚数は、メカシャッターで最大約11コア/秒、電子シャッターで最大約30コマ/秒となる。電子シャッター使用時のローリング歪みについては、前機種比で約半分となり、新たに「プリ撮影」という、シャッターボタン半押し時点からの記録を開始し、レリーズタイムラグを擬似的に無くす機能も搭載された。
こうした撮影モードを多数持ちながら、撮影枚数はというと、通常バッテリーでの静止画撮影枚数は390枚(ノーマルモード、XF35mmF1.4 R使用時)になり、4K動画撮影では約40分(29.97p時)になる。
これに、専用の縦位置バッテリーグリップを搭載すると、バッテリーグリップ内にバッテリーを2個搭載できる事から、合計3個での撮影となり、最大時やく1,100枚の撮影が可能になる。
バッテリーグリップは防塵・防滴・耐低温-10度に対応するため、過酷な環境下での使用も可能。また、各バッテリーが撮影途中で切り替わったとしても途中停止しなくなったため、連続撮影で困ることもない。
クラシカルなスタイルがイイ
富士フィルムのX-Tシリーズは、そのスタイルが実にクラシカルなのがいい。
私がオリンパスのカメラを使用するのも同じ理由だが、そのスタイルが実にカメラらしいスタイルだからという点が大きい。まぁ、これは個人の好みの問題ではある。
X-T3は、最近流行りのフルサイズセンサー搭載機ではなく、APS-Cサイズのセンサーを搭載した機種だが、上手いなと思ったのがその価格設定である。
というのは、NikonのZ6がボディで25万円前後で、有効画素数がX-T3と同等である事を考えると、X-T3のボディが18万5,000円前後という価格は実に絶妙な価格帯だと思う。
おそらく、この価格設定は各社のフルサイズミラーレスの価格がある程度見えてきた段階で決定したのではないかと思うが、価格的にフルサイズに届かない客層を上手く捉えた設定だと私は思う。
実際、フルサイズセンサーの利点をユーザー側がドコまで享受できるかというのはかなり難しい話ではないかと思っている。
本体は買えたとしても、フルサイズとなればレンズは高いし、そこから得られるボケ味と、APS-C等のフルサイズ以下のレンズで得られるボケ味の違いに拘るユーザーが、ドコまでいるのか? と考えれば、価格相応で良いと判断するユーザーだっているのである。
マイクロフォーサーズも同じ事が言えるが、フルサイズセンサーという価値感を得られない機種は、小型軽量だからという利点でフルサイズと同価格にするのは、今の時代として結構厳しい評価を受けるように思えてならない。フルサイズセンサーでエントリー機が出てきてしまった以上、そのセンサーサイズの価値感を超える価値感を与えられない限り、価格は一つランクを下げるぐらいでないと、ユーザーへの訴求力に欠ける時代になったと見るべきではなかろうか?
オリンパスに望むモノ
来年初め、オリンパスは今までのフラッグシップのE-M1 MarkIIよりも更なる上位機種を発表するという噂が出ている事はこのBlogでも書いたことがある。
この噂はかなり確度の高い情報と言われているが、もしそうした上位機種を発売するのであれば、ぜひ現行機種の価格見直しを実施して欲しいと思う。
一番理想なのは、モデルチェンジではなくマイナーチェンジを実施した上での価格改定だが、マイナーチェンジが出来ないのであれば、既存品のテコ入れという意味も含めて、価格の見直しを実施してほしいところである。
マイクロフォーサーズは、その小型軽量であるという利点を活かすという意味で存在価値のあるものだとは思うが、フルサイズセンサー搭載機でのエントリー機の価格がバッティングしている以上、世間はどうしてもソコに価格の妥当性を見てしまう。
であるのなら、普及させる意味でも価格の見直しをして、ユーザー満足度を再度考え直す必要はあるように思う。
メーカーにとっては同じ開発費を投入しているのにと思うかも知れないが、ユーザーが価格的差異を見るとき、結局は何かを基準にする。その基準が、今はセンサーサイズに向いていて、そこが絶対的価値だという感覚でいるように私は思う。
もちろん、それ以外の付加価値を見る人もいないわけではないが、それは極々限られた人、という感じではなかろうか。
というわけで、今デジカメは高級機が主戦場になっていて、しかもトレンドがフルサイズセンサーという所にある。
富士フィルムのX-T3はそうした市場のニーズを考えた絶妙な価格設定を持ってきた事で、私的にはユーザーの目もいきやすい製品ではないかと思う。
私もオリンパスに思い入れがなければコイツを…と考えたくなる逸品である。フジノンレンズが好きな人は…もう言うまでもなく注目製品ですな。