今だからこその無電源ゲーム。
ゲームブック
このBlogでも何度か話題にして取り上げた事があるが、私は電源を使用しないゲームが好きだったりする。
カードゲームやボードゲームなど、複数人でワイワイ楽しむものから、参加者が演者と創作者に別れて物語を紡いでいくTRPG(テーブルトークRPG)など、電源を使わないゲームにもいろいろとあるが、これら全て私の好きなゲームの範疇である。
しかし、最大の弱点はこれらのゲームはほぼ単独では楽しむ事ができない。最低でも2人は必要であり、本当に面白く遊ぶとなると4人は欲しくなるものばかりである。
そんな中、電源を使わなくても1人で楽しむ事のできるゲームというものが存在する。それが「ゲームブック」と呼ばれる存在で、1980年代にはそうした1人で遊ぶ事を可能にした文庫本が存在していたのである。
ゲームブックの歴史についてはWikipediaを読むのが一番良い選択ではないかと思う。人によって歴史となる最初の作品が結構バラついたりするので、あえてスタンダードなものをとなるとWikipediaの情報が納得できるラインになるのではないかと考える。
私にとっての最初の出会いは、スティーブ・ジャクソン、イアン・リビングストン共著の「火吹山の魔法使い」であり、その後ソーサリー4部作と言われる「魔法使いの丘」「城砦都市カーレ」「七匹の大蛇」「王たちの冠」を遊んだ記憶がある。
どれもゲームブックとしてある種確立した本格派ゲームブックであり、ココから国内のゲームブックが発展していく事になる名作である。
幻想迷宮書店
ゲームブックはその後、国内の作家からも生まれ、東京創元社や社会思想社、朝日ソノラマなどからいろいろ発売され、1980年代後半くらいまではそれなりに出版された。が、前述したソーサリー4部作を決定的に超える作品が出てこなかった事や、システムばかりが複雑化しても仕組みそのものが単純といったマンネリから、1990年代前半にはブームは終了していた。
元々、一般小説のように大ヒットするという事のないジャンルでもあるため、出版部数は少なく、非常にニッチな市場向けの文庫だった事は間違いない。
発行部数だけを念頭に置くような出版社であったなら、即刻廃刊になるようなジャンルと言ってもいい。少数部数でこそ活きるジャンル…文庫としてはある意味致命的な宿命を背負ったジャンルである。
であるなら、電子書籍であれば随分と相性の良い話になるのではないか?
以前私はそう思った事があったのだが、どうも同じ事を考えていた人達がいたようである。
それが「幻想迷宮書店」であり、Kindle版としてゲームブックを復刻している。
電子書籍なので発行部数による廃刊の心配はなく、Kindleの環境が作れればスマートフォンでも読む事は可能。専用端末があればそれもよし、と言った手軽さのあるゲームブックである。
幻想迷宮書店
http://gensoumeikyuu.com/
オススメはドルアーガ3部作
幻想迷宮書店で扱っているゲームブックの中には、前述の「火吹山の魔法使い」やソーサリー4部作は存在しないが、国内で発売されたゲームブックがラインナップとして刊行している。
特にオススメは鈴木直人氏のドルアーガ3部作で、これはナムコ(現在のバンダイナムコ)のアーケードゲームの名作「ドルアーガの塔」を原作に持つゲームブックである。
実際に10×10まマスにマッピングする事ができ、3部作でちゃんと原作通り60階まで上っていくという、実に良く出来た作品で、作者が日本人という事もあって感性も日本人として解釈できる内容である。海外のゲームブックの場合、一般常識部分に外国人でないと馴染めないような部分があったりするのだが、コレにはそれが一切ない。そういう意味でもオススメできるタイトルである。
そのドルアーガ3部作が終わったなら、次に薦めたいのが「バンタクル」シリーズである。同じ鈴木直人氏の著作で、ドルアーガ3部作にも出てくるメスロンという魔術師を主人公にしたシリーズである。コレには原作は存在しないが、ドルアーガ3部作で鈴木直人氏の作風に慣れたなら、このシリーズも違和感なくプレイできると思う。
また「ブラックオニキス・リビルド」もオススメできる作品。私自身は未プレイなのだが、国内最高のゲームブックとさえ言われる作品である。これは今でいうPCゲーム「ザ・ブラックオニキス」を原作とする作品で、紙媒体の頃は「スーパー・ブラックオニキス」というタイトルで発売されていた。作者はドルアーガ3部作と同じく鈴木直人氏。何だか、私は鈴木直人氏の作品ばかりを推しているが、別に意図はない。
他にもオススメしたい作品があるのだが、残念ながら私が本当にオススメしたい作品はまだ幻想迷宮書店では刊行されていない。
いつか発売される日がくるのだろうか?
門倉直人
私がゲームブックとして本当にオススメしたいタイトルは、実は門倉直人氏著作の「魔法使いディノン」シリーズである。
シリーズと言っても2作しか存在しないのだが、氏のあまりにも美しい世界観は、他作品とは一線を画する。
門倉直人氏はTRPG「ローズ・トゥ・ロード」のデザイナーであり、別名義として、思緒 雄二という名でも活動されているが、とにかく氏の紡ぐ文章は尋常な出来映えではない。
前述の門倉直人氏はゲームブックで分岐点を500、つまりゲーム分岐番号を500でまとめ上げる書き方をする人であるが、門倉氏は300弱しか分岐数がない。本の厚みはほぼ同じであるにも関わらず、である。これは、門倉直人氏の文章がある程度長いから、という事でもあるが、とにかく説明する文章の情景がことごとく美しい。
私はオリジナルのハヤカワ文庫から発売されている2冊を所有しているが(そういえばドコにしまったか忘れた…)、ある意味この2冊は貴重な文庫だと思っている。
これを幻想迷宮書店で扱ってくれたなら…と心から願うばかりだが、もし手に取る事があるようなら、ぜひプレイしてみて欲しい作品である。
話の主旨がちょっとズレたが、今は幻想迷宮書店という電子書籍でゲームブックが楽しめる時代である。
Kindle専用端末はなくてもアプリでプレイは可能なので、ゲームブックとはなんぞや? という人も、一度触れてみる事をお薦めしたい。
それにしても…幻想迷宮書店で門倉氏の作品を取り扱ってくれないかなぁ…。