Adobe RGBカバー率99%の6万円以下モニタ。
LCD-PHQ321XQB
I-O DATAから、Adobe RGBカバー率99%の31.5型液晶ディスプレイ「LCD-PHQ321XQB」が2月下旬に発売される。価格はオープンプライスとなっているが、税別店頭予想価格は54,800円前後と、6万円を下回る。「LCD-PHQ321XQB」は何が特徴的かというと、Adobe RGBカバー率99%を達成するため、量子ドット(Quantum dot)技術を使用しているというところ。これにより、より広色域に対応するパネルが実現可能になった。
スペックとしては、パネルはADSで、解像度は2,560×1,440(WQHD)ドットで、表示色数は10億7,374万色、輝度は250cd/平方m、コントラスト比1,200:1、中間色応答速度は8ms(最短3ms)、インターフェースとしてHDMI×3、DisplayPortを1基持っている。
コンテンツに応じた自動輝度制御機能を持っていたり、ブルーリダクション2技術などを持ち、他にもフリッカーレス、エンハンストコントラスト、超解像技術などを搭載しているが、やはり注目は量子ドット技術を組み込んだパネルになるのではないかと思う。
量子ドットとは
そもそも量子ドットは何ぞや? という人も多いのかも知れない。
量子ドットは、自在な発光波長を持っているのが特徴で、この発光波長を制御する事であらゆる色の再現が可能。つまり粒径だけ制御できれば、全ての色を生成できるといった技術である。
また、発光効率が高く、スペクトル半値幅が狭いため、色純度が高いのも特徴。とても綺麗に見えるのは、そうした特性によるところが大きい。
こうした量子ドットを利用する方法は3つほど考えられ、LCDのカラーフィルターとして量子ドットを利用する、量子ドットを採用したLEDバックライト、マイクロLEDの上に量子ドットを搭載する、という3つのアプローチがあるのだが、今回のI-O DATAの「LCD-PHQ321XQB」は具体的にどのような活用方法なのかは不明である。
2015年あたりにしきりに隣国が研究していたのは、量子ドット光学素材をフィルムシート状にしたものを白色LEDモジュールに貼り合わせて利用する方法だったので、今回の「LCD-PHQ321XQB」はひょっとしたら量子ドットを採用したLEDバックライトという使い方なのかもしれない。
ただ、何に使われていたとしても、従来品よりは広色域を実現しやすいので、隣国の液晶パネルメーカーは以前よりこの量子ドットを製品に活かす研究を重ねている。
日本メーカーは意外と…
ところがこの量子ドット技術だが、日本メーカーは少なくとも2015年時点ではあまり注力していたという程ではなかった。というか、日本メーカーは既に研究を終えていた感じがある技術だったのである。
この量子ドットを利用した光学フィルムシートなどが非常に高価で、コスト的に見合わない、と考えるメーカーが多かったのである。光の制御という面で言えば、改良を重ねたLEDバックライトシステムで同等の結果を実現可能だと考えていた節がある。
この話が2015年の話なので、それから4年たった今、ようやく光学フィルムシートの価格が下がってきたか、或いはもっと効率的に利用出来るようになったかして、今民生品として量子ドット採用モニタが発売された事になる。
ただ、この量子ドットは前述したように、いろいろな使い方があるため、マイクロLEDの上に量子ドットを搭載するQD-LED等の技術がもっと安価で実現できれば、更なる広色域かつ高コントラストの液晶パネルの製造が可能になるかもしれない。
ただ、光学フィルムシートの時もそうだが、量子ドットにまつわる課題は常にコストとの戦いでもあり、特性の良い量子ドットを得るための素材開発が課題だという。
素材分野では日本は世界的にも進んでいるメーカーが多いので、ひょっとしたら新たなパネルが生み出されるのも時間の問題なのかもしれない。
広色域なモニタが欲しければ
今回のI-O DATAの「LCD-PHQ321XQB」は、価格的に6万円以下と格安なWQHD液晶モニタの価格と比較すると倍近い価格のモニタになる。
しかしながら、広色域なモニタが欲しいと考えている人からすれば、今までのモニタ価格よりは安いはずである。
そう考えれば、写真やグラフィックデザインなどを手がけている人からすると結構オススメなモニタになる可能性がある。
フレームも3mmと狭額縁設計であり、パネル部厚みも7mmとクリエイター向けモニタとしては薄型でもある。価格が許せばこのモニタを2枚並べて使う方法もアリかも知れない。
広色域モニタが欲しいという人は、検討してみても良いモニタと言えるだろう。